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節足動物
  
■■■ 2018年1月2日 ■■■

蝦蝦蛄合戦 …

蝦蛄は、始終見渡していて、餌を発見するや否や跳びついて鎌で抱え込んでしまい、動けなくなった相手をじっくり食すタイプ。飾りモノの目のような視力で、いかにも周囲に鈍感そうな蝦は、おそらく大好物とされていることだろう。
しかし、至るところに展開したのは蝦の方だった。

それはともかく、この両者、見たところ大した差はなさそうに思える。長尾(蝦)-異尾(宿借)-短尾(蟹)と見ていくと、肢の形状がかなり違うとはいえ、どう見てもオマケ的一派に映る。
そういうこともあるのか、蝦蛄と蝦の解説には、必ず近縁ではないとの注意書きが記載されている。ココ、どうもしっくりこない。海に棲む甲殻類のうち軟甲類はエビ体形の仲間というこでえらくわかりやすい群と思っているからでもあるが。

分類を再掲しておこう。[→]
節足動物甲殻類 軟甲Malacostraca
┌─《木葉蝦Phyllocarida
┤┌《棘蝦Hoplocarida蝦蛄
└┤
┼┼《真軟甲Eumalacostraca
┼┼┼┼{厚蝦Syncarida}
┼┼┼┼昔蝦Bathynellacea
┼┼┼┼
┼┼┼┼{嚢蝦Peracarida}
┼┼┼┼醤蝦[アミ]Mysida
┼┼┼┼
┼┼┼┼{本蝦Eucarida}
┼┼┼┼沖醤蝦[オキアミ]Euphausiacea
┼┼┼┼等脚Isopoda・・・船虫,etc.
┼┼┼┼端脚Amphipoda・・・横蝦,etc.
┼┼┼┼アンフィオニデスAmphionidacea
┼┼┼┼十脚Decapoda蝦蟹
(省略したグループは上記の他に10程度ある。こう色々あると、軽く泳ぎ回れずに、難航してしまう。ボディプランにおける多彩さの視点や、そうなる遠因が素人にはさっぱり見えてこないのである。尚、種の数は25,000〜30,000のレベル。)

何がこの辺りの分類の常識なのか勉強したこともないが、こうした分岐が生まれた根拠を示唆する記載をみかけない。眺めると、感覚的になんとなくわかってくるならよいが、どうも錯綜感に襲われる。
と言うことで、一寸、検討してみたくなった。
(種の同定に関心はない。分岐のシナリオを想いうかべるために、勝手な解釈をしてみたいだけ。)

まず、体躯全体だが、そこが要石である。
甲殻類軟甲系の基本形を設定し、その視点からこの系列を一括りにしているのは歴然。当たり前のこと。
こんな感じだ。

○先端から後端まで、
  体節が繰り返し連なる構造。
○ほとんどの体節から、
  一対の間接がある"肢"がとび出す。
マ、これが節足類ということでしょうな。

その体節の並びがどうなっているかが、節足動物におけるボディプランの肝なのであろう。軟甲系はこんな風。
○見た目、
  前部(頭部+胸部)と後部(腹部+尾)に別れている。
  蟹は後部がよくわからないが、
  折りたたまれている。
○前部には、甲板的カバーがある。
  胸部をどこまで被うかで違いがある。
○頭部+胸部+腹部+尾(肢)の体節数は同じ。
この数字が、"軟甲"系が到達した脱皮のし易さが加味されている絶妙なバランス感を意味するのであろう。硬甲たる貝殻生物とは違う訳で。

--頭部--
<5(+1)体節>。
目視では5節だが、構造的に6節と見たい。
 [頭#0節]
<複眼>1対。目立つ。
眼玉柄を持つことが多いが、視野拡大を図っているのだろう。
(柄には節が無いので、"肢"ではないが、相当としたい。)
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        どうしてかわからぬが視力的に鈍。
        目は触角の補助器官化したか。

 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        複眼360°対応。キョロキョロ動く。
        最高、近紫外・赤外含め12種の色覚認識。
         偏向サングラス能力有。
         瞬時に光学的刺激に対応。
         (総合的判断処理をしないということ。)
        視覚神経は事実上の脳ともいえよう。

True Facts About The Mantis Shrimp by zefrank1@YouTube 2013/06/26
[頭#1節]
<先頭触角>1対。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        短いから餌の確認用か。
         化学的検知器官内臓だろう。

 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        長く先頭の方向に伸びる。
[頭#2節]
<手元触角>1対。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        太くて長く立派。
         始終サーチ活動。周囲状況観察器官。

 ⇒棘蝦:蝦蛄】
        小さいから探り杖ではないか。
大触角だが、先端は細い糸状("鞭")。節があるらしいから、脚の一変形である。
[頭#3, 4. 5節]
<顎脚:口器的肢…本来的には餌の口への移動器>各1対
 ⇒【軟甲:蝦蟹】
        脚の先は2本
 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        脚の先は2本+1本
 ⇒【十脚:蝦蟹】
         3っ目(頭#5節)の脚が一番長い
 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
         1っ目(頭#3節)は大きく餌の粉砕器
         2,3っ目(頭#4,5節)は小型

餌が違うということであろう。

--胸部--
<8体節>。
<甲殻板:頭部と一体化したカバー>が被さるので、上部から見れば、頭と胸が一体化しているように見える。
軟甲系を眺め渡すと、頭と胸に一線が引かれていることがはっきりする。棲息条件に応じて、甲殻板を完璧に被せるか、頭だけにするか、という違いがでているように思える。
体節の数は変らないのだから、口器域が拡大してきたということか、はたまた防衛能力向上が必須ということで、究極的には全身一枚板で覆われているかのような蟹タイプに至るということか。
もっとも、そこまでしても、鎌脚がハンマー脚となっているタイプの蝦蛄に出会えば、そのパンチの威力にはどうにもならない訳だが。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        頭胸部全域
 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        頭〜胸#4節迄
 ⇒【嚢蝦:醤蝦[アミ]】
        頭〜胸#3節迄
 ⇒【等脚-船虫】
        頭〜胸#1節迄
 ⇒【木葉蝦】
        頭のみ
口器としての顎脚は本来的には頭脚で、歩行遊泳用が胸脚ということだと思われるが大型の餌を捕獲するとなると、頭脚だけでは不足すると胸脚の転用も必要になるというだけのことだろう。そうなれば、甲殻カバーも胸の方まで伸ばすことになる。
[胸#1節]
<脚>1対。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        鋏の顎脚(餌の口移動器)兼歩行脚
 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        特殊機能脚(清掃,生殖)
[胸#2節]
<武器化顎脚>1対。
この足が目立つ訳だ。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        最大の鋏脚(外側に向け切断。
        (他の節の場合も)

 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        餌捕捉力抜群の鎌脚(棘で内側抱え込み)
胸脚の全体状況から見て、"鋏⇔鎌"との対応で考えない方がよさそう。
[胸#3節]
<顎脚>1対
[胸#4, 5節]
<脚>1対。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        歩行脚化
        脚は節が連続した構造。・・・
(名称は変えた。)
        先(指+掌)+寸腕+長腕+座+取付(基底+体躯台)
        先部が必要に応じ鋏化する。
         (指が動いて掌の出っ張りとの間で挟む。)
 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        鎌脚。
[胸#6, 7, 8節]
<歩行脚>1対
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        8節欠落の場合も。

--腹部--
<6(+1)体節>。
蟹が使わなくなり、格納してしまった部位であるところを見れば、歩行というよりは遊泳に必要なのであろう。
しかし、蟹も消滅させた訳ではないから、大量の卵を抱えるためには必須の部位という気がしないでもないが、蝦蛄は腹部では卵を抱えない。車海老になると、そもそも卵を抱えない。
[腹#1〜5節]
<遊泳歩行肢>各1対。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        外と内の二又。基部にも小突起肢。
        #3-4無肢・5節以降欠落種もあるようだ。

 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        鰓への水流送り込み器も兼ねるか。
        各脚に綿のような鰓が付いている。
        全体は葉状であるから遊泳用である。

[腹#6節]
<分岐尾肢>が最後端。
 ⇒【木葉蝦】
        1対の腹肢だが、棒のよう。
[腹#7節]
欠落と見るべきか。
1体節の無肢尾部と考えたいが。
 ⇒【十脚:蝦蟹】
        扇型でわかりにくいが小尾あり。
 ⇒【棘蝦:蝦蛄】
        小尾あり。
        巣穴掘削用シャベル器官と見て間違いない。

 ⇒【木葉蝦】
        どう見ても体節状。
        無腹肢で"尾筋"。
(尾肢とは形状が異なる。)


う〜む。わかったような、わからないような。

(参考) 浜野龍夫:「シャコ類の生態学的研究」日本水産学会誌60 1994

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