表紙 目次 | ↑ (C) 素材ギャラリー i-caffe ■■■ 2018年1月12日 ■■■ きくいむし …"木食い虫"と言えば、普通は森に棲む甲虫Bark beetle。樹木がやられてしまうので、害虫として知られている。ところが、甲殻類にも同名の一族が存在している。こちらは、主として、海中あるいは海漂流中の材木に棲んでいる。世界中にいるようで、木造桟橋や木造船は大好物とくるから嫌われ者。 円筒形の体つきだが、団子虫同様に丸くなれるらしいし、よく泳ぐようだ。なかなかにユニークな輩である。 材木に穴を開けて棲むということであれば、鋏は鎌はたまたスコップを装備可能な甲殻類ならどうということはない。実際、【穿孔性】ということでは、砂岩の穴掘屋の岩掘小粒虫もいるし、木喰擬[端脚]等も似て行為をしている訳だ。マングローブのような堅木でも穴を開ける種がいてもおかしくないのである。 (参照) 青木優和:「コメント: 海藻に潜る甲殻類」Cancer 22, 2013 しかし、その穴掘り作業のお蔭で餌が自動的に得られる可能性は低い。普通は特別な条件が必要である。それを考えれば、木喰は極めてユニークな存在であるのは間違いない。なんといっても、木が主食なのだ。 ソリャ、冒頭に触れたように、甲中も可能なのだから珍しくもないと考えてしまうかも知れぬが、それは間違い。甲虫は体内に木材分解菌を飼っているから、栄養にできるのである。 甲殻類の木喰虫には、そんな菌は棲んでいないから、ご自分で特別な酵素を分泌していることになる。そんな動物いるのかいナというレベルの希少性。 どうやってそんな技を手に入れたのだろうか。 木喰虫の仲間でも、海藻食に拘る種もいるようだから、腐食材木に付着する褐藻食から、木材腐食菌食へと進み、その遺伝子を取り込んでしまった、とでも考えるしかないかナ。 ちなみに、材木の穴好きの類縁種は色々いそうだが、対象とする餌はおそらく朽ち果てた材木で育っている菌類か、それを狙ってやってくる動物だと思う。 ◆等脚Isopoda □木喰虫Limnoriidea -Limnoriidae ○Limnoria・・・キクイムシ 木喰虫Gribble(lignorum) 平戸木喰虫(hiradoensis) 長田木喰虫(nagatai) 日本木喰虫(japonica) ○Paralimnoria・・・カギオキクイムシ アンドリュース木喰虫(andrewsi)@太平洋 ○Lynseia (annae)…アマモ棲 ○Phycolimnoria -Hadromastacidae ○Hadromastax・・・ハドロマスタックス (polynesica)@ポリネシア棲 -Keuphyliidae ○Keuphylia・・・ケウピリア (nodosa)@珊瑚礁(豪州) 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |