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水母の話  2018年3月1日

いらも の話


 毒回り 病膏肓 磯遊び
 聞けば気の毒
 過ぐればお笑い

↑(C) 伊豆の海中壁紙

干潮線線際の岩に付着して棲息する藻状態の生物あり。誰が見ても、それは藻であるが、触ると刺されるのである。
  苛藻

エビ発見と、無造作に岩に手をつっこむとそこには苛藻。その場ではチクリ程度だが、その後にえらい目に合う。その毒は脳味噌も襲うようで、以後、益々南の海の虜になるものらしい。
沖縄では珍しくないというか、そこらじゅうに居る。クラゲ体になる前のヒドロ茎の姿だが、すでに刺胞細胞ができあがっており、その毒が強烈なのである。

誤解を生みがちな名称であり、苛藻水母とでもしてくれると有り難いが、現実の生活実感からすれば至極妥当な命名と言えよう。

クラゲの一生における変態は、種によって様々なパターンがあるので、わかりにくいが、下に示すようなプロセスが典型と言えそう。
  →[Video]「不思議な変身 クラゲの一生」 (C)NHK for School

つまり、プラヌラ幼生が岩に着床し根を張り、その根元から枝分れが発生し、ヒドロ茎の群体が形成されたのが「苛藻」ということ。おそらく、時間軸ではこの状態が一番長いのだろうが、最終的にはクラゲ体になるのである。
ただ、そうなっても、せいぜいが2mm程度でありほとんど注目されない。

ただ、クラゲ体化といっても、固着から遊泳状態に入る際のエフィラは触手等が揃っておらず、花弁が連なった放射相称の平板である。もちろん、体色は透明。
ところが、その状態でありながら成体となってしまう場合も。幼熟するようなものだ。そんな類の水母の名称は自明である。
  エフィラ水母

従って、エフィラ水母の前駆が苛藻と考える発想もでておかしくなさそうだが、その辺りはどうなっているのかよくわからない。
エフィラとされながら、写真を見ると、直径1cmの円盤状だし、触手が8本揃っており紛れもなきクラゲ体である。傘の縁には8x2の弁があり口周にも4つの弁。詳細がわかるのは、"alien-looking"ということで注目を浴びているから。
ここでは、両者は仲間扱いで記載したが、別なグループとして扱わう分類もあり、素人にはその方が納得性が高い。

---クラゲの一生---
 卵
 ↓孵化
プラヌラ
 ↓孵卵海底付着
プラヌラ幼生
 │「根」の発生
 ↓真っ直ぐ上に「茎」を伸長
ポリプ…磯巾着型形状
 ↓分裂あるいはヒコバエ
ポリプ群体…無性生殖(クローン)
 │変態開始=縊れ発生
 │「花弁」形成
 ↓花弁重層化
ストロビラ
 ↓一体化花弁状部分が一枚ずつバラバラに離脱
エフィラ…葉状形態
 ↓成長透明化
メテフィラ…傘形成するも器官形成不十分
 ↓
稚クラゲ
 ↓
成体クラゲ…生殖能力保持
 ↓♂♀による有性受精

尚、このプロセスがクラゲの標準的な一生という訳ではない。解説にはこれが基本パターンと記載されていることが多いが、下記に示すように、特殊例と見なす方が自然では。
  プラヌラ → エフィラ + ポリプ
  プラヌラ → プロヌロシス → ポリプ
  ポリプ ━
[出芽]→ ポリプ
  ポリプ ━
[分裂]→ ポリプ
  ポリプ → ポッドシスト→ ポリプ
  ポリプ → プラヌロイド→ ポリプ
  ポリプ ━
[クラゲ芽出芽]→ 稚クラゲ → クラゲ
  ポリプ → ストロビラ→ エフィラ → 稚クラゲ → クラゲ
  クラゲ ━
[分裂]→ クラゲ
  クラゲ ━
[内部保育]→ クラゲ
  クラゲ → ポリプ

【ご注意】ポリプ体とクラゲ体の中間体のようなアクチヌラ体も存在するが、複雑になりすぎるので捨象。
[三宅裕志:「クラゲ類の生態学 1.クラゲの生活史」Nippon Suisan Gakkaishi 71(6) 2005 を参考にした。]


【刺胞動物/Cnidaria
花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着)

Jellyfish/Medusozoa
  鉢虫(Scyphozoa) …漂泳性 現生約200種
┼┼┼冠水母(カムリクラゲ類) (Coronatae) (Crown jellyfish)
┼┼┼-Atorellidae
┼┼┼┼○Atorella・・・ムツアシカムリクラゲ類
┼┼┼┼○Stephanoscyphus
┼┼┼┼┼苛藻[イラモ](racemosum)→[2018.3.1]
┼┼┼-Nausithoidae
┼┼┼┼○Nausithoe・・・エフィラクラゲ類
┼┼┼┼┼エフィラ水母/Medusa corona(punctata)
┼┼┼┼┼(aurea)@ブラジル

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