表紙 目次 | 水母の話 2018年3月12日 みつでりっぽうくらげ の話👀 いち早く 餌を見つけて ご満悦オーストラリアでは毎年のように水母に挿されて死者が出るが、そんな猛毒種はすでに取り上げた。[→] 【箱虫】の"ネッタイアンドンクラゲ"を代表とするグループの仲間である。 沖縄にもこの親類が押し寄せるが、それがご存知「ハブクラゲ」。 【箱虫】とは良く言ったもので、傘と呼んで良いのか気になるほどに四角い箱型の水母である。透明で小さいから気付かずに触れて刺されてしまうことが多い。しかし、あちら様から見れば、面白くない輩が海を荒らしておるということで、ヒトに寄ってきて刺すのかも。頭や顔がないから感覚器官皆無の印象があり、そう考える人は滅多にいないが。 実際、蚊のような忌避剤は無いようだ。但し、刺されないクリームは市販されている。どのような薬剤含有なのか調べていないが、ダイバーの発言からすると、塗ってもやってくるから忌避剤ではなく、触れても刺されないことを狙ったものではとのこと。厚塗りすれば効果はありそうだとも。マ、ポリプ体の時は親兄弟だと触手が触れても刺さないとの研究もあるから、あり得そうな気はするが、どうなのだろうか。 つまらぬ話をしているが、この猛毒クラゲの類縁で、日本でも採取されている種を取り上げたかったから。傘径1cmで、その気になって探さないと見つからない手の【箱虫】種。 三手立方水母 特徴としては、勿論、3本x4箇所の立方体となるが、一般の水母のように海中をゆらりゆらりと漂流ばかりしている訳ではない点があげられよう。ソリャ、拍動すれば、どれも動くゼという意味ではない。 実は、ここに箱型の意義があるのだ。 俊敏に動くそうで、なかなかの泳ぎの名手なのである。もちろん、無闇に泳いでいるのではなく、方向感覚があり、自由自在に動き回る運動能力をお持ち。 従って、水族館展示に向いているように思えるが、プカリプカリの癒し系ではないから、流行には合わない。 ともあれ、そのような力量を発揮するのだから、放射相称では具合が悪いのは当たり前。箱型が一番妥当ということ。海鼠同様に都合で左右相称に変身したのである。 しかしながら、ボディに方向感を持たすだけでは自由な動きができる訳がない。感覚器の高度化は不可欠である。と言っても、ブヨブヨな体で、脳も無いのだから、どういうこととなるが、それは部外者の偏見にすぎない。 この種には、極めて高度な感覚器官が装備されていることがわかってきたからである。 箱形傘の4面にそれぞれ凹みがあり、そこに柄がついた小さな組織が付いているのだ。これがなんと視覚器官(rhopalium)。 それぞれに6個もの目があるという。簡素な光センサー"眼点"をまとめただけという意味ではない。・・・と言っても、単純な光センサーに近いものもあり、ピット眼とスリット眼がそれぞれ1対。しかし、圧巻は脊椎動物の構成とほぼ同一の目玉がある点。「水晶体レンズ+像を寫す網膜」型の眼が、上向きと下向きで1個づつ備わっているとくる。 う〜む。流石。 この種、本質的にはマングローブ植生域で棲息。ここが重要なところ。 間違いなく、一番のお気に入りの餌の光学的習性を考えているからこその、光センサー搭載。狩りに最適な場所と時間を知った上で、マングローブの茂る根の間から餌が動いて出て来た瞬間に、さっと戦闘機的に攻撃に出て捉えるのだと見て間違いなかろう。余程、気にいった餌だったのであろう。 そんな研究が可能なところを見ると、類縁とされていても、死を覚悟せざるを得ないような猛毒種ではないからであろう。 とは言え、【箱虫】は強毒性のクラゲ集団であることは間違いない。 類縁のグループ「立方水母」として一括分類されている種も見ておきたい。 【箱虫】といっても、それなりに、形は色々あるのだ。 恐ろしき 隣で泳ぐは 福禄寿 主に豪州やハワイに棲息する種。・・・ 福禄寿水母 長頭なので、命名されたのだろう。幸福・俸禄・長寿の三徳をそなえるとされるが、現世で碌なことをしていない輩にはお仕置きしますゼということかいナ。 ハワイでは刺されることで問題視されている種。どういう訳か知らぬが、満月10日後早朝に現れるらしい。 そんな時に、海遊びでもなかろうと思うが、ハワイだからそうはならない。海の中では姿が見えないのでついつい強く触れてしまうことが多く、そうなると刺さる面積も広いし、針も深く入ってしまうので、ただならぬ結果を頂戴することになるらしい。 日本でも2013年に座間味で初の被害例が発生している。 マ、【箱虫】は、それぞれの種を個々に見ていけば、毒にやられた話は尽きそうにないので、一括して語っておこう。もちろん、オーストラリア的な発想で。・・・ 💔一刺しで 心臓止める 力あり 豪州クインズランド沿岸には極めて微小な"fire jelly"が棲息している。アボリジニのイルカンジ部族の伝説にもとづいて命名されており、知る人ぞ知る有名種。 イルカンジ水母 小さすぎて、採取してどの種か同定するといっても大変な作業なので、10種類程度をすべてコノ代表種と同じ扱いにしているようだ。 刺されてすぐに痛みに襲われるのではなく、せいぜいが蚊に刺された程度の自覚しかないのだが、30分ほどしてから急速に症状があらわれ危篤状態に至ったりするという。(神経のナトリウムチャンネル異常が発生し、心循環系機能不全に至る。) この手の毒被害は、豪州北のチモールやパプアニューギニアは勿論のこと、ハワイ、フロリダ〜カリブ海島嶼(アンティル、ボネール、等)でも発生している。ただ、イルカンジ系の種ではない可能性もあろうとのこと。 こんな野郎の来訪は願い下げである。 日本にも類縁種が大量にやって来るとはいえ、被害の程度はそこまで深刻ではないからだ。 ⛶ お盆過ぎ 海から刺客が やって来る 3cmの立方体の四隅から20cm程度の触手が4本出ているクラゲは日本では有名である。 刺されるから注意せよということもあるが、お盆の頃に海水浴場に大量に出没するので知られている。こうなれば閉鎖止む無しだからだ。 行燈水母 誰もが、黒潮に乗って渡来すると言うが、どこの産か知っている人はいないようである。 マ、お盆過ぎは危ないゾと言っても聞く耳持たずの人の方が多いから毎年刺される人は出る。蚯蚓バレで傷跡が残ることもあるが、重篤にはならないと信じているのであろう。蜂と同じでアナフィラキーショックがあるゾとの警告もほとんど馬の耳に念仏状態なのが実情。 もちろん、豪州にも、イルカンジ水母だけでなく、行燈水母と同じような種が棲息している。刺されると酷い傷みに見舞われると警告はしているものの、その程度で済むから"not dangerous"といったところ。マッチョの風土だから、俗語で呼ばれている。 トリはこれでいくか。 🚧 危険物 警告すろゾ 近寄るな 警告色縞模様あり。 姫行燈水母 傘径は1cm以下。黄と黒のよくある、危険表示模様である。 カリブ海のボメール島棲息種も4本の職種に模様を配している。 Bonaire banded box jellyfish "Oh Boy!" "I'm a girl" というCFが流れたことがあるが、そんな手の話がついてまわる。研究者にとっては、発見が実り欣喜雀躍した種。余程のことらしく、en.Wikiの解説は生物よりそこらが詳しい。 と言うことで、【箱虫】を全般を眺めてみた。・・・ <特徴> ・傘縁に水管の通った擬縁膜。 ・触手の基部に鰭状の組織。 ・"ポリプ体"は小さな単体。 ・"クラゲ体"は、このポリプ1個体が直接変態。 【刺胞動物/Cnidaria】 ┌花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着) ┤ └Jellyfish/Medusozoa ┼┼箱虫/Box jellyfish/Cubozoa ┼┼┼◆立方水母(Cubomedusae) ┼┼┼-Alatinidae ┼┼┼┼○Alatina・・・フクロクジュクラゲ類 ┼┼┼┼┼福禄寿水母(moseri) ┼┼┼┼┼(mordens)† ┼┼┼┼┼(alata)† ┼┼┼┼○Manokia・・・マノキア類 ┼┼┼┼┼(stiasnyi) ┼┼┼┼○Keesingia ┼┼┼┼┼(gigas)…無触手† ┼┼┼-Carukiidae ┼┼┼┼○Carukia・・・イルカンジクラゲ類 ┼┼┼┼┼イルカンジ水母/Irukandji jellyfish(barnesi)† ┼┼┼┼┼Barnes' jellyfish(barnesi)† ┼┼┼┼┼(shinju)† ┼┼┼┼○Gerongia ┼┼┼┼┼(rifkinae)† ┼┼┼┼○Malo ┼┼┼┼┼"common" Kingslayer(kingi)† ┼┼┼┼┼Broome Irukandji(maxima)† ┼┼┼┼┼(filipina)@フィリピン ┼┼┼┼○Morbakka・・・ヒクラゲ類 ┼┼┼┼┼火水母(virulenta) ┼┼┼┼┼"Morbakka"(fenneri)† ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼†:イルカンジ症候群発生種 ┼┼┼-Carybdeidae ┼┼┼┼○Carybdea・・・アンドンクラゲ類 ┼┼┼┼┼行燈水母(brevipedalia) ┼┼┼┼┼Jimble(rastoni)…行燈水母類似 ┼┼┼┼┼(morandinii) ┼<┼┼┼┼Warty sea wasp(marsupialis) ┼┼┼┼┼海神[わたつみ]水母(xaymacana)@豪州,ハワイ† ┼┼┼-Tamoyidae ┼┼┼┼○Tamoya ┼┼┼┼┼Warty sea wasp(gargantua) ┼┼┼┼┼Bonaire banded box jellyfish(ohboya) ┼┼┼-Tripedaliidae ┼┼┼┼○Copula ┼┼┼┼┼姫行燈水母(sivickisi) ┼┼┼┼○Tripedalia・・・ミツデリッポウクラゲ類 ┼┼┼┼┼三手立方水母(cystophora) ┼┼┼◆Chirodropida ┼┼┼-Chirodropidaeネッタイアンドンクラゲ ┼┼┼┼○Chirodectes ┼┼┼┼○Chirodropus・・・キロドロプス類 ┼┼┼┼┼(gorilla)@南ア〜ガボンの深海(危険) ┼┼┼┼○Chironex・・・ハブクラゲ類(キロネックス)→[2018.2.26]◆ ┼<┼┼┼┼ オーストラリアウンバチ ┼┼┼┼┼濠太剌利海蜂水母/Sea wasp(fleckeri) ┼┼┼┼┼ハブ水母(yamaguchii) ┼┼┼-Chiropsalmidae ┼┼┼┼○Chiropsalmus ┼┼┼┼○Chiropsoides ┼┼┼-Chiropsellidae ┼┼┼┼○Chiropsella・・・ヒサシリッポウクラゲ類 ┼┼┼┼○Meteorona・・・リュウセイクラゲ類 ┼┼┼┼┼流星水母(kishinouyei) (参照) Anders Garm, et.al.:「箱クラゲ類の視覚生態」みどりいし(21) 2010年 J.Tibballs, et.al.:"Australian carybdeid jellyfish causing "Irukandji syndrome"" Toxicon 59(6). 2012年 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |