表紙 目次 | 水母の話 2018年3月20日 ネミアナ の話☢ 放射の 方向性は 3であるクラゲは漂泳性動物であるから、当然ながらその体躯は放射相称になる。箱虫は見かけ左右相称だが、本質的には四方放射相称の進化形と見るべきだろう。もっとも、刺胞動物に属する固着棲の花虫も六方や八方だから、漂泳性が本質を物語っている訳ではないが。 ただ、三方とか、棘皮動物のような五方はとんと見かけないのである。 しかし、本来的には三方だったのではなかろうか。 ・・・ということで、気になったので、突然、化石の話。 クラゲ化石の古いものは5億年以上前のものと言われている。 → "Photo in the News: Fossil Jellyfish Discovered in Utah" (C) National Geographic October 31, 2007 → "Oldest mass animal stranding revealed in Death Valley fossils" By Agnese Abrusci (C) New Scientist 26 July 2017 写真では、ドーム状の傘に傘縁に沢山の触手が並ぶ姿になっているから、間違いないだろう。 ただ、それと今迄の化石の報告と繋がっているかはよくわからぬところ。・・・ 原生代終末(先カンブリア)のエディアカラ生物群の化石は殻や骨格がなく、柔組織だけで出来ているものだらけ。そのなかで、"クラゲ体"らしきものはシクロメデューサ類/Cyclomedusa。各地で出土している。動物や植物ではなく、菌類との説もある。 東博に並んで展示されているのは、楕円形をした薄いパンケーキ状のディッキンソニア/Dickinsonia、しかしながら、体節構造がある上に一見左右相称的だから、クラゲの仲間であるとは思えない。 放射相称という点では、岩板に密着するクラゲを思わせる、正体不明の生物が見つかっている。とはいえ、分類では固着タイプ刺胞動物の花虫とされている。(《カンブリア紀》鉢虫として、コノメデュサイテスConomedusites等の化石群が知られている。但し、燐酸カルシウム骨格があったりするようだが。) ネミアナ/Nemiana → "花虫綱?Nemiana simplex[ロシア・白海沿岸]"@国立科学博物館 小生には藻類に見えるが、三方放射相称体があるとのことだから、そうだとすればクラゲの仲間ということではなかろうか。 顕生代(生物記録存在時代)開始期(カンブリア紀)のバージェス生物群・澄江生物群の化石になると、エルドニア/Eldoniaが、いかにも"クラゲ体"。円盤で、口らしき構造の側に触手がある。しかし、海鼠という説もあるそうで、クラゲとは見られていないようだ。 ともあれ、原生代⇒顕生代の激動環境下、活発な活動が可能なボディプラン(外骨格・内骨格=脊椎)の動物が出現したと見られているから、無骨格タイプも同様に対応したに違いなかろう。 そう考えると、三方放射相称の"クラゲ体"とは、原初を示しているとはいえまいか。 もともと、4方とか8方いう数字は、クラゲの傘の見た目から来ており、それは放射水菅や生殖器官の配置図。前者は胃腔から体躯の細胞に栄養液をいきわたらせる管であり、後者は外部に生殖細胞を放出するために胃璧にできた器官。胃腔というか内腔の、延長組織と表面組織にすぎない。 代謝活発化に伴う進化としては、子孫を増やすために生殖腺を増加させることがあげられよう。3本の管に附属するのだから、一対にして6個とするのが自然。 一方で、放射管を増やことになるが。こちらは1本増加パターンしかとれまい。 従って、放射相称の変化としては、3の2倍か、3+1の方向が見てとれることになろう。 この考え方でいけば、原始の三方放射はなくなり、主流は4本水管二股枝分かれ、2個x4ヶ所の生殖腺となるのでは。流石に、倍々的増加でも、細かな枝分かれでなく、大元が10、12、16には無理がありすぎるだろう。おそらく、基本形は4本水菅。活動が激しいタイプは8本となる。そこで、どうしても四方あるいは八方だらけになるのだと思う。固着に近い棲息であると、流れへの対応は四方は上手くいかないから、五方となるが、水中漂流を旨とするなら、5本まで増やす労力は不要だろうし。 以下のような流れである。・・・ _[3] →△[6] → ×[12] ↓ ◎[4] → ○ [8] → ×[16] ↓ △[5] → ×[10] ↓ ×[6] (この考え方をすると、クローンのような大量コピーをしていると、確率は低いが母集団の数が半端ではないから遺伝子異常も発生する筈。クラゲの種が矢鱈に多いのはそういうことでは。三方や五方の突然変異体が生まれてもおかしくないことになる。) 尚、"ポリプ体"を見ると、触手の数には特段のこだわりが無さそう。しかし、"クラゲ体"になれば、放射水菅の延長線上に配置するのが栄養配布からいえば一番合理的。放射相称の数の倍数の本数となろう。 一方、触手機能と連関すると思われる眼点の数も同じことが言えよう。四方放射相称でも、1対x4ヶ所になることが多かろう。 十字水母は四方放射相称ではあるが、写真を見ると水菅2本が融着しているように見えるから、もともとは八方放射相称。 集団の きのこパワーで 歳重ね 前述したように、先カンブリア時代は無骨格生物の時代。(原生代最後とされるエディアカラ動物群@豪州 アデレード北方フリンダース山脈など、刺胞動物だらけ。)従って、クラゲにはそのような時代の息吹が残っている可能性があろう。そんな例とは言えないかも知れぬが、豪州深海で見つかった管水母[→]の1種(Dendrogramma enigmatica)はどう見ても茸であり、古盃動物のような古代的雰囲気を醸し出している。 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |