表紙 目次 | 水母の話 2018年3月19日 かつおのえぼし の話馬簾水母[→]という聞き慣れない名称の種をご紹介したが、所属する分類名称の"管水母"ともども一般の人にはほとんど知られていないようだ。ところが、この集団に超有名な種が所属している。 目に青葉 岸に鰹の 烏帽子かな 危険な輩として警告が遍く行き届いている種だ。 鰹の烏帽子 足らしきビラビラしたものが傘から長く伸びているイメージができあがっており、裸の身体に絡みつかれでもしたら、コリャ一大事と誰でもが感じている訳だ。 尤も、落石注意と同じで、気付いた時は遅いのではないか。 尚、群体構成という点では似ているし、風に乗って移動する習性も同じ上に、名前も類似の"鰹の冠"[→銀貨水母]には、管構造はない。 クラゲ好きに有名な"管水母"と言えば、コチラ。 ⌇ 棲む所 長身痩躯 好きばかり 鰹の烏帽子と並び、最長クラゲとの評価の故であろう。世界最長あるいは第二位の動物として紹介されることが多い。(対抗馬は紐虫。) 迷相生水母 深海棲(700〜1000m)で長さ40m。シロナガスクジラを越すそうだ。若干薄白色がかった透明な体躯であるが、もちろん、発光する。 どう考えても、その光に餌が吸い寄せられるとしか思えない。 この長さだから漂流していたら海流の力で右往左往してしまうので、当然なgら自律的遊泳能力がある。 ジェット水流を噴射することで運動を司る泳鐘が、この種では桁違いに大きく強力だからなせる技。おそらく、拍動のスピードもとてつもなく速いに違いない。 40m近くのビラビラからは細い触手が無数に出ており、こんなものがくっ付いてきたらたまったものではない。一瞬にしてお陀仏間違いなしだろう。 しかし、群体であり獲得した餌の養分を総ての個体に平等に分配する必要があるが、このような単純な構造体でそのような機能が発揮できるのだから相当な優れモノ。 これほど極端でなくても、"長いナ"と感じさせるのが"管水母"らしさ。 🙏 水噴きて 坊主頭で 突進し 浮きの部分が1cmのキューブで、数mの長さ。 坊主韮 ただ、ダラダラと始終流している訳ではなく、30cm程度に縮めることもできる。沢山の独立した個体の集合体でありながら、軍隊並の統制がとれているのである。なかなに機用。 そうそう、名前だが、先が坊主頭で棘がある苛[イラ]なヤツというのが由来。ニラは訛り言葉だが、[ブリタニカ国際大百科事典]ここでは植物の韮を当て字として使用している。 坊主だから、手加減してくれる訳ではなく、鰹の烏帽子に負けず劣らず危険だと言われている。ただ、一般人が遭遇することは滅多にない。おそらく、表層には偶に上がってくるだけで、海中で過ごしているのだと思われる。従った、被害はもっぱら漁業従事者。 浮袋が付いているので、ソナー映像に現れてしまうから、コリャ大量だゾと網をかけると糠喜びどころではなくなるということだと思う。マ、誇り高ぃ専門家が多いから、そんな失敗談を語ることは滅多にない。 🐛 虫愛ずる 気にはなれまい 刺されれば 足から生える触手が独特な種も。 毛虫水母 写真によってはどう見ても、毛虫が沢山くっ付きあってている感じ。刺胞細胞がついた個体が寄り集まった、群生生物ですゾと主張しているようなもの。 傘から口腕と長い触手足が垂れている姿とは随分と違う。まとまってしまう形態だろボロ毛糸が絡まりあったモノとしか思えない。 とりあえず群体になっているだけで、機能分担というルールに則って生活しているようには見えない。いくらなんでも、泳鐘に相当する部分はあるのだろうが、他とほとんど同じ体躯でもそれなりの役割は果たせるということか。 どこから切れても、どうということもなく、それぞれ勝手に生活し続けそうな感じがする。 🌸 垂れる枝 蕾だらけで 揺れ続け 細長い泳鐘の下に長い栄養部があるタイプ。 枝垂桜水母 枝垂桜に似た水母と言うべきか、水母のような桜とするかは、なんとも。・・・ → [図絵](C) Stefan Siebert, et al.:"Stem cells in Nanomia bijuga (Siphonophora), a colonial animal with localized growth zones"EvoDevo 2015 以下は、相当な異端ではないか。突拍子もない程ではないにしても、アヴァンギャルド的設計である。 ⍝⌂ 五角形 駒を揃えて 突撃だ 泳鐘の形は、馬蹄形とも言えるし、五角形とも。深海棲息種特有の利点があるとも思えないが。 馬蹄水母 松の実水母 そういえば、日本の将棋だけが何故か五角形。 ⛓ 浜の上 ご愁傷 さまでした なかなかに見事な装飾的泳鐘群。 瓔珞水母 お寺の仏壇飾りを名前に持ち出すところが面白い。 泳鐘部は12角柱との説明があるが、写真を拝見すると、切子細工の透明胡瓜というのが素人の印象。 そうそう、眺めていて気になったのだが、箱虫系の名称と同じ"箱水母"という種が存在する点。小さな個虫が箱虫的ということだろうか。 と言うことで、ヒドロ虫【管水母】をざっと眺めた訳である。 【刺胞動物/Cnidaria】 ┌花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着) ┤ └Jellyfish/Medusozoa ┼┼ヒドロ虫/Hydrozoa ┼┼┼【Trachylinae】 ┼┼┼◆管水母Siphonophora ┼┼┼《Cystonectae 嚢泳(ボウズニラ)》 ┼┼┼┼┼┼…有気胞体 無泳鐘 無保護葉 ┼┼┼-Physaliidae ┼┼┼┼○Physalia・・・カツオノエボシ類 ┼┼┼┼┼鰹の烏帽子 or "電気クラゲ" ┼┼┼┼┼┼┼/Portuguese Man-of-War(utriculus) ┼┼┼┼┼-/Blue Bottle(physalis) ┼┼┼-Rhizophysidae ┼┼┼┼○Bathyphysa・・・マガタマニラ類 ┼┼┼┼┼勾玉韮(conifera) ┼┼┼┼○Rhizophysa・・・ボウズニラ類 (Siphonophore) ┼┼┼┼┼坊主韮(eysenhardtii) ┼┼┼┼┼小坊主韮(filiformis) ┼┼┼-Codonophora ┼┼┼《Physonectae 胞泳(ヨウラククラゲ)》 ┼┼┼┼┼┼…有気胞体 有泳鐘 有保護葉 ┼┼┼-Apolemiidae ┼┼┼┼○Apolemia・・・ケムシクラゲ類 ┼┼┼┼┼鹿子毛虫水母(lanosa) ┼┼┼┼┼毛虫水母(uvaria) ┼┼┼┼┼茶毛虫水母(vitiazi) ┼┼┼┼┼(rubriversa) ┼┼┼┼┼三ツ星毛虫水母, 数珠玉毛虫水母 ┼┼┼-Stephanomiidae ┼┼┼┼○Stephanomia・・・オオダイダイクダクラゲ類 ┼┼┼┼┼大橙管水母(amphytridis) ┼┼┼-Erennidae ┼┼┼┼○Erenna・・・アワハダクラゲ類 ┼┼┼┼┼淡肌水母(laciniata) ┼┼┼┼┼(richardi) ┼┼┼-Pyrostephidae ┼┼┼┼○Bargmannia・・・ヘビクラゲ類 ┼┼┼┼┼蛇水母(amoena) ┼┼┼┼┼長蛇水母(elongata) ┼┼┼┼┼赤蛇水母(lata) ┼┼┼-Rhodaliidae ┼┼┼┼○Steleophysema・・・ヒノマルクラゲ類 ┼┼┼┼┼日の丸水母(aurophora) ┼┼┼┼○Stephalia ┼┼┼┼○Dendrogramma ┼┼┼┼┼(enigmatica)@豪州深海…茸状 ┼┼┼-Forskaliidae ┼┼┼┼○Forskalia・・・ツクシクラゲ類 ┼┼┼┼┼木賊水母(asymmetrica) ┼┼┼┼┼大土筆水母(edwardsi) ┼┼┼┼┼土筆水母(formosa) ┼┼┼┼┼葱坊主水母(tholoides) ┼┼┼┼┼(edwardsii) ┼┼┼-Physophoridae ┼┼┼┼○Physophora・・・バレンクラゲ類 ┼┼┼┼┼馬簾水母(hydrostatica)→[2018.2.25]◆ ┼┼┼┼┼馬簾水母擬(gilmeri) ┼┼┼-Resomiidae ┼┼┼┼○Resomia・・・ナンキョクオオミミクラゲ類 ┼┼┼┼┼南極大耳水母(convoluta) ┼┼┼┼┼(ornicephala) ┼┼┼-Agalmatidae ┼┼┼┼○Agalma・・・ヨウラククラゲ類 ┼┼┼┼┼瓔珞水母(okeni) ┼┼┼┼┼長瓔珞水母(elegans) ┼┼┼┼○Athorybia・・・ノキシノブクラゲ類 ┼┼┼┼○Halistemma・・・ダイダイクダクラゲ類 ┼┼┼┼○Melophysa ┼┼┼┼○Nanomia・・・シダレザクラクラゲ類 ┼┼┼┼┼枝垂桜水母(bijuga) ┼┼┼┼○Marrus・・・ヒノオビクラゲ類 ┼┼┼-Athorybiidae ┼┼┼《Calycophorae 鐘泳(ハコクラゲ)》 ┼┼┼┼┼┼…無気胞体 ┼┼┼-Abylidae ┼┼┼┼○Abyla・・・ハコクラゲ類 ┼┼┼┼┼箱水母(haeckeli) ┼┼┼┼○Abylopsis・・・ハコクラゲモドキ類 ┼┼┼┼○Bassia・・・トウロウクラゲ類 ┼┼┼-Clausophyidae・・・フタツタイノウクラゲ ┼┼┼-Diphyidae ┼┼┼┼○Dimophyes・・・カドナシフタツクラゲ類 ┼┼┼┼○Muggiaea・・・ヒトツクラゲ類 ┼┼┼┼○Diphyes・・・フタツクラゲ類 ┼┼┼-Hippopodiidae ┼┼┼┼○Hippopodius・・・バテイクラゲ類 ┼┼┼┼┼馬蹄水母(hippopus) ┼┼┼┼○Vogtia・・・マツノミクラゲ類 ┼┼┼┼┼松の実水母(glabra) ┼┼┼-Prayidae ┼┼┼┼○Praya・・・アイオイクラゲ類 ┼┼┼┼┼迷相生水母/Giant siphonophore(dubia) ┼┼┼┼○Rosacea・・・コアイオイクラゲ類 ┼┼┼┼┼相生水母(cymbiformis) ┼┼┼┼┼アラビア相生水母(arabiana) ┼┼┼┼○Stephanophyes・・・ハナワクラゲ類 ┼┼┼-Sphaeronectida・・・ジェリーボールクラゲ類 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |