表紙 目次 | (C) 2016 DBCLS 統合TV/CC-BY-4.0 櫛水母の話 2018年4月1日 ムネミオプシス・レイディ の話流れ寄る 光輝く 胡桃の実 この種のお蔭で、櫛水母に口と肛門が別々に存在することがはっきりした。体長10cm程度あるから、間違いない。 ムネミオプシス・レイディ 今迄、櫛水母には、肛門が無く、胃腔に1つしかない口を共用しているとされ続けてきた。口の反対側に孔があることは知られていたにもかかわらず。 何故かといえば、餌を与えると、しばらくしてから排出するからである。その行動を、勝手に不消化物質や糞を出していると解釈していたのだが、実は、体質的に受け入れ難い食餌を強制されていたからで、嘔吐していたにすぎなかった可能性が高い。 → "Watch: Pooping Comb Jellies Just Upended Gut Evolution" By Amy Maxmen (C) National Geographic Society AUGUST 13, 2016 ただ、話題性という点では、有櫛動物では、ゲノム解析が行われた種ということの方をあげておくべきかも。データは海綿より前に登場した可能性を示唆するデータが発表され歩紋を生じたからである。換言すれば、エディアカラ紀の生物の直接的子孫かも、ということなのであろう。筋肉や神経を持ち、光センサーもある方が、そんな機能を欠く生物より前に進化したとはにわかに信じられぬから、海綿はそのような機能を退化で失ったということになるのであろう。 [Joseph F. Ryan: "The Genome of the Ctenophore Mnemiopsis leidyi and Its Implications for Cell Type Evolution" Science 342, 2013] 但し、実験手法やデータの見方が確定している訳ではないから、分岐分類での紆余曲折はあろう。 [Nathan V. Whelan, et al.:"Ctenophore relationships and their placement as the sister group to all other animals"Nature Ecology & Evolution 2017] しかし、ここで注目すべきは有櫛動物/櫛水母の神経系の見方。眼球を欠くから脳は無いものの、自律的に運動可能な立派な筋肉を揃えているから、脳的な制御機能を保有しているのは明らか。中枢神経系があると考える方が自然。そのような発想で眺めるなら、櫛水母とは全く異なるボディプランの刺胞動物/Cnidariaのポリプ体にしても、最重要機能たる胃腔(=専用出口無き腸菅)の出入口には環状に中枢神経系の発露ありと考えることになってくる。そのような特別な器官が存在する証拠はあがっていないようだが、口周囲の餌取り入れ活動だけでなく、拍動をも制御している生物なのだから、それほど無理な考え方をしている訳ではない。[→中枢神経系進化の分岐図]@Holland LZ, Carvalho JE, Escriva H, Laudet V, Schubert M, Shimeld SM, Yu JK. Evo.Devo. 4, 2013 神経系の進化は、この論文がわかり易い。---Moroz, L. L. et al. The ctenophore genome and the evolutionary origins of neural systems. Nature 510, 2014 マ、櫛水母は余りよくわかっていない生物であることは間違いなさそう。 現在の種は、まさに、水でできた体そのもので骨無しだが、そうではなかったという話も持ち上がっているのである。 無触手で8枚の板状骨格を持つカンブリア紀の化石が見つかっているからだ。 [Qiang Ou, et.al.:"A vanished history of skeletonization in Cambrian comb jellies" Science Advances 1(6) 2015]] それはともかく、この種の棲息地は大西洋西側。南北米州の沿岸であるが、船のバラスト水と一緒に欧州一帯に移動し、温度耐性があるので、今やいたるところで見つかるようだ。雌雄同体で自家受精も可能なので棲み付かれると突然の大発生間違いなしだから、侵入生物として危険視されている。 今のところは日本国内未定着である。 現実的にはこちらの問題の方が緊要と言えよう。 兜でも 防衛できる 力無し 獲物捕獲用触手を持たぬのに大手を振って生きているように見えるのは、瓜水母の仲間[→]だが、そんなことができるのは同族喰いをしているからだ。その対象がこの種。 兜水母 近寄られて、丸呑みされてしまうだけ。 兜に見えるのは、多少は駆動力向上させようと姿を変えた努力の跡か。 【有櫛動物/Ctenophora】 ┼有触手Tentaculata ┼┼◆冑水母Lobata ┼┼-Bolinopsidae ┼┼┼○Bolinopsis・・・カブトクラゲ類 ┼┼┼┼兜水母(mikado) ┼┼┼┼赤星兜水母(rubripunctata) ┼┼┼○Mnemiopsis ┼┼┼┼ムネミオプシス・レイディ/Sea walnut(leidyi) 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |