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尾索動物の話  2018年4月16日

がまぐちぼや の話


 鬼逃げて
 豆が散らばる
 浅海に

大きさが大きさだけに、びっしり豆がついているとは感じないが。
  豆海鞘
豆だが、4mm程度で大きくても6mmという個虫のこと。
一応は群体をつくる。個虫は同一の大きさで、丸々としており、表面の膜は半透明。黄色ががかっており、彩度が低い緑色も感じさせる。
これを視れば、普通は、"卵がびっしりと付着しているネ"で終わり。拡大すれば、動いている心臓が見える筈だが、専門家以外、そんなことを考える人はいまい。
つまらぬことを書くのは、日本の潮間帯ならどこだろうと見つかる種らしいから。しかも、植物のように四季の移り変わりに対応して生きているそうだ。日本列島に棲む人々の感覚を共有していそう。できれば、大和豆とでもして欲しいところ。
マ、だからこその群体であろう。

 砂泥こそ 我が道なりと 泳ぎ付く
体の表面が砂泥で覆われている種。
  泥海鞘
体は楕円形で大きくても2cm。外皮だけは透明で軟らかい。
細かい粒子の場所に定着して棲もうと考えているらしく、植物の根に当たる突起が右側に偏って沢山付いている。内湾の流れが穏やかな場所でないと安定しそうにないが。
すでに取り上げた酢海鞘[→]の類であり、同様に皮膜は酸性である。砂泥がアンモニアリッチ環境にならないようにする工夫かも知れぬ。
(酸性は、棗海鞘, 筋切海鞘, 茶壺海鞘, 斑海鞘, 等々も見れれ、特殊というほどのものではなさそう。[Euichi Hirose:"Acid Containers and Cellular Networks in the Ascidian Tunic with Special Remarks on Ascidian Phylogeny" Zoological Science 18, 2001])

この酢海鞘によく似ているとされている種だが、情報が得られないが名前が面白いので書いておこう。
🐢 亀の子の 一念真似し つき進む
甲羅模様でもあるのだろう。
  亀の子海鞘

インターネットを検索しても、名前以外、さっぱり情報が得られない種は少なくない。
👸 キスされて 目醒めてしまう お姫様
なんらかの種の小型ということではなさそう。滅多なことではご懇意にはしてもらえないということではないか。
  姫海鞘 筋姫海鞘
潮下帯の砂泥棲に特化しているのであろう。

いかにも、異端な種も見ておこう。

👛 口閉めて 何を忍ばす つもりかネ
なんと、孔に蓋つき。
  蝦蟇口海鞘
不審舎に棲み着かれるのはご免蒙るということでドアをつけたとも思えないし、どういう意味があるのか甚だ疑問。

お次は、500m以深棲の奇妙な形態の種の紹介本やVideoに登場するスター。
軟体動物が多いなかで海鞘も一緒に紹介されることが多い。その名前はすぐに忘れ去られてしまうが、どういう訳かそのイメージだけは記憶に残る。10cm越える大きさという点でも、なかなかの迫力だし。
😮 美味きモノ 大口開けて 食べにけり
海鞘は、餌を濾し取る機構がある生物とされているなかでは例外に属する。そのような面倒な手数がかかる器官を一切放棄してしまったしか思えない独善的な輩なのだ。なんだろうと一飲みするぞと待ち構えている雰囲気がありあり。それが見る人をギョッとさせるのである。
  大口海鞘
見かけがそうだというのではなく、実際、口に入るものはなんでも食べるらしい。
透明なこともあり、群体棲息しているようにも思えるが、単体で生きていると考えた方がよさげ。
どういうイメージに映るのか、こちらの絵がわかりやすい。・・・
"Predatory Tunicate" by (C) NocturnalSea

【尾索動物/Urochordata or Tunicate
┼┼┼海鞘[ホヤ]Ascidians
┼┼┼《Phlebobranchia》
┼┼┼┼┼-AgneziidaeAgnesiidae
┼┼┼┼┼┼○Agnezia・・・ヒメボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼姫海鞘(himeboja)
┼┼┼┼┼┼○AAdagnesia・・・スジヒメボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼筋姫海鞘(vesiculiphora)
┼┼┼┼┼-AscidiidaeAscidiidae
┼┼┼┼┼┼○Ascidia・・・ナツメボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼棗海鞘(ahodori)
┼┼┼┼┼┼┼バナジウム海鞘(gemmata)→[2018.4.14]
┼┼┼┼┼┼┼ザラ海鞘(zara)
┼┼┼┼┼┼┼筋切海鞘(sydneiensis)
┼┼┼┼┼┼○Ascidiella
┼┼┼┼┼┼┼ヨーロッパザラ海鞘/Dirty sea squirt(aspersa)
┼┼┼┼┼┼○Phallusia
┼┼┼┼┼-Cionidae
┼┼┼┼┼┼○Ciona・・・ユウレイボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼幽霊海鞘(savignyi)
┼┼┼┼┼┼┼硬幽霊海鞘(intestinalis)
┼┼┼┼┼┼○Rhopalaea・・・ムネボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼胸海鞘(circulata)
┼┼┼┼┼┼┼Blue Club Tunicate(crassa)
┼┼┼┼┼-CorellidaeCorellidae
┼┼┼┼┼┼○Corella・・・ドロボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼泥海鞘(japonica)
┼┼┼┼┼┼┼Orange-tipped sea squirt(eumyota)
┼┼┼┼┼┼○Chelyosoma・・・カメノコボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼酢海鞘(siboja)[食用:九州北部]
┼┼┼┼┼┼┼亀の子海鞘(sibogae)
┼┼┼┼┼┼┼北亀の子海鞘(yezoense)
┼┼┼┼┼┼○Rhodosoma・・・ガマグチボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼蝦蟇口海鞘(turcicum)
┼┼┼┼┼-Diazonidae
┼┼┼┼┼-Dimeatidae
┼┼┼┼┼-Hypobythiidae
┼┼┼┼┼-Octacnemidae
┼┼┼┼┼┼○Megalodicopia・・・オオグチボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼大口海鞘/Predatory tunicate(hians)
┼┼┼┼┼-Perophoridae
┼┼┼┼┼┼○Perophora・・・マメボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼豆海鞘(japonica)
┼┼┼┼┼┼┼台湾豆海鞘(firnisana)
┼┼┼┼┼┼○Ecteinascidia・・・ナガマメボヤ類
┼┼┼┼┼┼○Ecteinascidia・・・ナガマメボヤ類
┼┼┼┼┼┼┼曲長豆海鞘(garstangi)
┼┼┼┼┼-Plurellidae
┼┼┼┼┼┼○Microgastra
┼┼┼┼┼┼┼ウズミ海鞘(granosa)

(分類参照) ママでなく、素人が改編
JODC(日本海洋データセンター)GODAC/JAMSTEC


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