[→鋏角類目次] [→蜘蛛目次] "! ■■■ 2018年5月2日 ■■■ 猪蜘蛛猪の 突進先に 団子あり フツーの蜘蛛の原形と、その発展方向がなんとなくわかると、あとはどのように棲み分けているか見ていけば、全体像もわかり易くなろう。 ということで見ていくことになるが、一つ大きな転回点があるようだ。それは生殖器官の変革である。 単純な性器のママの一群と、かなり複雑化した一群の2ツに分かれたようである。 ソリャ、有りえそう。 蜘蛛は昆虫の様に、交尾的な交接行為が行えないから。 おそらく、餌捕獲の視覚が合理的すぎ、共食い防止システムを供えていないので雄と餌の判別が不可能であることが大きい。精子は、雄の触脚の嚢に溜められて、雌の性器中に入れ込まれる仕組み。 雄の選別が行われているとも言えるが、合理的な設計とは思えない。他の機能を優先した結果ではないかと思うが、結局、細かな点で器官の調整の必要が生まれたということか。 先ず、性器が単純とされるグループを見ていこう。4群に分けることが可能らしい。 構造的にそうなってしまうのか、理由はよくわからないが、卵の数は他のグループに比べるとかなり少ないようだ。 そのうちの1つは、基本形の8眼が6眼以下になっているタイプ。思うに、餌を待ち構えているよりは、能動的に動いていこうということで眼数が減ったのではないか。 素人的には、わかる数である。4眼を横一列に並べれば、単眼でも、瞬時に動いている餌までの距離を知ることができるだろう。それに加えて、もう一列の2眼を揃えておけば、餌の動きの方向性を推定可能となる。 徘徊を始めれば、どの道、身体を動かすのであるから細かな差を見取る必要はないから、8眼を止めたのであろう。暗がり棲息なら、さらに6眼も不要となっていく訳だ。 そうそう、造網に力を入れるなら、祖先形態の3爪が望ましいが、徘徊なら2爪の方が便利であろう。もちろんのことだが、動き回るのだから呼吸器が十分に発達している筈である。一日中待ち伏せ体勢でいるのとは違う訳で。 その辺りの変化が現れている一群なのではあるまいか。もっとも、印象的にはもの見事にガチャガチャで、とりあえず集めた感じしかしないが。 特徴的な種としては、猪蜘蛛の仲間をあげることができよう。 餌はもっぱら団子虫や草鞋虫。いかにも居そうなジメジメした箇所などすぐにわかる訳で、そこら辺りを歩いていれば、すぐにブチ当たる。狩猟そのものは簡単だろう。 しかしながら、いかにも食べにくそうだが、結構上手に仕留めるようだ。 ([食餌写真]R,R.Jackson, et al.:"The biology of Dysdera crocata (Araneae, Dysderidae): Intraspecific interactions" J. of Zoology198, 1982) ほとんど殻だけのような生物だから、かなりの大食漢とならねば。 おそらく、そこらで餌での棲み分けが進んでいる筈である。(大きな網に団子虫をひっつけると、蜘蛛がでてきて、ふるい落とすから、一般的には好まれていない可能性があろう。)この餌は世界中どこにでもいるから、蜘蛛も汎世界的に棲息しているのは間違いなかろう。但し、日本種はいない模様だ。 採取報告はあるらしいが、それは欧州からの移入種と見る人もいるようだ。 そういえば、蜱蜘蛛という種も並んでいるが、赤っぽくでかなり小さいサイズだからダニ似ということかと思ったが、主食が蜱と見ることもできるのではなかろうか。 そうだとしたら、猪蜘蛛も団子虫蜘蛛と改名して頂くと分かり易いが。そもそも、腹の形的にも、猪と言うよりは鶏卵だし。 徘徊種が生まれるということは、新環境への進出が盛んな一群とも言える訳で、特定の洞窟だけに棲息することになった種も見つかっている。 → "Cave-Dwelling Spider Stuns Scientists" PBS NewsHour Aug 20, 2012 お社の 隅を飾るは 白き網 造網系の宮蜘蛛、閻魔蜘蛛についてだが、代表的な種は、神社の柱の割れ目とか、境内の樹木の穴や、石灯篭の角などに居るタイプ。要するに、薄暗い隅っこの方によくある網の持主。小さな蛾が引っかかっていたりするが、その網の基に筒状部位があり、そこで獲物を待ち構えているようだ。網を取り払おうとすれば、素早く逃亡。そこだけ見ると、走り回るのを得意としている体質にも見える。そのルートは網を張る前から周到に考えられているようで、割れ目やどこかに通じていそうな穴が必ずある。ヒトが出会うのは、もっぱら家屋近辺だが、どこにでも棲んでいそうだ。 鋏角類 《蜘蛛 Araneae》 │ │┼┼中疣…出糸疣が腹の中ほどに存在 │┌──【古代風 Mesothelae】 ││┼┼◆Liphistiomorpha 腹節蜘蛛と木村蜘蛛を代表とする群 └┤ ┼│┌─【原始的 Orthognatha】…真っ直ぐの牙顎類 ┼││┼◆Mygalomorphae ┼││┼┼┼│┌─《Fornicephalae 戸立蜘蛛と地蜘蛛を代表とする群》 ┼││┼┼┼└┤ ┼││┼┼┼┼└─《Tuberculotae 漏斗蜘蛛とタランチュラを代表とする群》 ┼└┤後疣…出糸疣が腹の後端に存在 ┼┼│ ┼┼│↓脱地中穴棲 ┼┼│ ┼┼└─【新生型 Opisthothelae】…二軸鋏型牙類(Labidognatha) ┼┼┼┼◆Araneomorphae ┼┼┼┼┼┼└┬─《Paleocribellatae 古篩板類(単性域類有篩板)》 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼├─《Austrochiloidea》<Neocribellatae新篩板類>基底的群 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼│┌《Haplogynae 単性域類篩板退化》…性器単純 ┼┼┼┼┼┼┼└┤┼┼↓ ┌───────│──┘ │┼┼┼┼┼┼┼└《Entelegynae 完性類》…性器複雑 │ │┼┼┼┼【Caponioidea】 │┼┌────Caponiidae 酸漿[カガチ]蜘蛛 │┌┤ │││┼┼【Tetrablemmidea】 │││┌───Tetrablemmidae 蛇腹蜘蛛 ││└┤ ││┼│┼┌─Oonopidae 卵蜘蛛,蜱蜘蛛,跳蜘蛛 ││┼│┌┤ ││┼││└─Orsolobidae 双爪猪蜘蛛 ││┼└┤【Dysderoidea】 ││┼┼│┌─Dysderidae 猪蜘蛛 ││┼┼└┤ ││┼┼┼└─Segestriidae 閻魔蜘蛛,宮蜘蛛 ││┼┼│ ││┼┼└──Trogloraptoridae └┤ ┼│┼┼┌──Pholcidae 幽霊蜘蛛,シモン蜘蛛 ┼│┼┼│ ┼│┌─┤【Pholcoidea】 ┼││┼│┌─Diguetidae 琴蜘蛛 ┼││┼└┤ ┼││┼┼└─Plectreuridae 口子蜘蛛 ┼└┤ ┼┼│┼┌──Ochyroceratidae 猿猴蜘蛛,冠蜘蛛 ┼┼│┌┤【Leptonetoidea】 ┼┼│││┌─Leptonetidae 猿[マシラ]蜘蛛 ┼┼││└┤ ┼┼└┤┼└─Telemidae 八木沼蜘蛛 ┼┼┼│ ┼┼┼│┼【Scytodoidea】 ┼┼┼└─┬─Sicariidae 糸蜘蛛 ┼┼┼┼┼├─Scytodidae 山城蜘蛛 ┼┼┼┼┼├─Drymusidae 彩[アヤ]蜘蛛 ┼┼┼┼┼└─Periegopidae 棘抜閻蜘蛛 【新生型蜘蛛類 Opisthothelae】 (後疣…出糸疣が腹の後端に存在) ◆Araneomorphae 《Haplogynae 単性域類篩板退化》 【Caponioidea】 -Caponiidae Bright lungless spider…眼数バラバラ ○Caponia・・・カガチグモ類 (Eight-eyed orange lungless spider) [8眼] 酸漿蜘蛛(capensis) ○Calponia [8眼] (harrisonfordi)…1993年命名 ○Iraponia [6眼] ○Nopsides [4眼] ○Diploglena [2眼] (capensis) ○Nops [2眼] (guanabacoae)@キューバ 【Tetrablemmidea】 -Tetrablemmidae Armored spider【徘徊】 [3爪6-0眼] ○Matta (hambletoni)…ブラジル洞窟棲 [2眼] ○Tetrablemma・・・ジャバラグモ類 蛇腹蜘蛛(shimojanai) (medioculatum)@スリランカ[4眼] 【Dysderoidea】 -Oonopidae Goblin spider or Dwarf hunting spide【徘徊】 [2爪6眼] ○Gamasomorpha・・・ダニグモ類 蜱蜘蛛(cataphracta)@樹皮裏棲 (maschwitzi)@マレーシア 大型ハシリハリアリ巣棲 ○Orchestina・・・ハネグモ類 赤跳[ハネ]蜘蛛(sanguinea) ○Oonops・・・タマゴグモ類 (Oonopid spider) 橙卵蜘蛛(domesticus)@西欧〜露 ○Diblemma (donisthorpei)@セイシェル→英国移入…2眼 -Orsolobidae @豪州,NZ,南ア,南米南端 ○Orsolobus・・・フタヅメイノシシグモ類@チリ,アルゼンチン -Dysderidae Woodlouse hunter spide【徘徊】 [2爪6眼] ○ …気管発達Dysdera・・・イノシシグモ類 猪蜘蛛(crocata)@汎世界 -Segestriidae Tubeweb spider【造網-筒状】 [3爪6眼] ○Ariadna・・・ミヤグモ類 宮蜘蛛(lateralis)…境内の樹皮や石垣割れ目棲。 縞宮蜘蛛(insulicola)…海岸性 ○Segestria・・・エンマグモ類 小松閻魔蜘蛛(nipponica) 裏切閻魔蜘蛛(florentina)@欧州▲毒 Snake-back spider(senoculata) -Trogloraptoridae ○Trogloraptor Cave robber(marchingtoni)@米国オレゴン洞窟 「鋏角類」の目次へ>>> 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |