[→鋏角類目次] [→蜘蛛目次] "! ■■■ 2018年5月8日 ■■■ 目玉蜘蛛糸と毒で生きる節足動物という、蜘蛛の概念ははっきりしているにもかかわらず、一族内の分岐については様々な見方が錯綜していてどう読むかえらく難しい。網の建築様式の進展は、分岐とは異なることがゲノム読み取りでわかったからで、そうなると造網なら3爪で徘徊は2爪という寒天で、大きな分岐があったと考える訳にもいかないだろうから、えらく厄介だ。 と言って、目は、いかにも短期間で構成を変えそうだから大きな分岐を考える場合の参考にするのはどうかと思われるし、いかにも難題そう。 と言っても、基底にあたる領域は、比較的分かり易い訳だ。ここまで見てきた種の範囲である。 問題はその先の新しい層。 マ、素人だから心置きなく勝手に眺めていくことにしよう。(レガシー的分類満載の観で納得感は薄い。素人には手が出せないから致し方無し。) "Project: The Taxonomicon"[www.taxonomy.nl/taxonomicon/Default.aspx] Fig. 18-2 @Phylogeny of Acari J.Cracraft & M.J.Donoghue:"Assembling the Tree of Life" Oxford University Press, USA 2004 夜明け迄 投網の好機 待ち続け 熱帯棲の種で巨眼の持主。(牙に近い前列ではなく、後列1対。的確に咬み付くことより、遠方の動きをしっかり見たいのだろう。) "巨眼蜘蛛"と書いて、"メダマクモ"とルビを振りたいところ。 かなりの暗さでも獲物が見えると言われている。(カメラレンズのFで言えば、1近辺の梟をはるかに凌駕する明るさらしい。さらに、夜間に受光面の感度を上げる仕掛けがあるらしい。) その能力を十二分に発揮するため、狩猟は十分暗くなってから。 といっても、矢鱈にうろつく訳ではなく、ココゾという場所で待ち伏せ。そして、チャンス到来とあらば、早速に、4脚で広げた網を用いて掩[かぶせ]網猟。アッという間の出来事で、被せられた方はなにがなんだかわからずもがけばもがくほど虜になってしまう。 人間様には真似できそうにない方法なので、その素晴らしい技術で著名蜘蛛の地位を築いている。 →【衝撃のハンター】超不気味な姿のメダマグモが自作の網ネットを使いアリを狩り補食する映像 by RibonRoom@YouTube 2016/12/20 近付いて被せる方法だけでなく、小さな四方網を糸でぶる下げておいて、標的到来時にタイミングを見計らって突然落とす技法も駆使するとか。 動きがない上方には神経を払わず、ノコノコ動いていると、そんな仕掛けについついひっかかってしまう訳だ。 なかなかの知恵者と言ってよいだろう。 そうなると、推定に過ぎぬが、そんな小さな網の下を獲物が偶々通る確率は低そうだから、餌らしきものを下に置いておくのではないか。 そして、脚を伸ばすと網を上手く被せることができるか、しっかりと捕獲予行演習している筈。 仕掛け網 造るに当たって 美学あり 日蔭っぽい場所に生えている灌木や草の間に小さな丸い網を水平あるいは少々傾いて張る蜘蛛がいる。一種のトランポリンのようなモノで、獲物が上から落ちて来そうな場所に造網する訳だ。落下者に網を突き破られてはこまるから、かなり念入りな造作。 獲物を網に追い込んだり、かかったら網を引き上げることはないが、漁で用いる"敷き網"に近い。 もちろん、そんじょそこいらにいくらでも存在するタイプ。 たいていは黒っぽい体色だが、環境に合わせてそれなりに色を変えているのではないか。体形は似たりよったりで細長い。この手の網造りには向いた体つきと言えそう。 円網の構造がほぼ完成したら、篩板から粘着性細糸を出して横糸に絡ませるそうだ。網造りで進化の流れを読むことはできないようだから、この手の糸に絡み易い獲物が多い環境と考えるべきなのだろう。 尚、円網にもぁかわらず、渦という名称がついているのは、渦巻き型の帯状装飾が付いているから。補強用にしては、力学的に無駄な感じがするせいもあるのか、"隠れ帯"と呼ばれている。 蜘蛛は常時網の下にいるから、姿を見えにくくするための帯と解釈されたようだ。しかし、蜘蛛に訊いた訳ではないから、どこまで当たっているかはなんとも。それに、渦ではなく、直線の帯の時もあるし、いい加減な模様だったりと、隠れるには不適当に映る意匠もママ見かける。この辺りは、几帳面か否かといった個体差と考えてもよいのかも知れぬが。 小生が見るに、"自己主張帯"。ヒトの目からすれば、美しい紋様で目立つという評価になるからだ。どうかネ〜。・・・ 常時網裏に貼りついているから、天敵に見つかるリスクはかなり高かろう。発見されれば、まず間違いなく餌食の運命。しかし、飾り帯がついた場所にいれば、遠くから見るのだから帯が身体の一部と誤認される可能性が生まれる。天敵も、コヤツは食べにくそうということで敬遠するかも。 自己主張すると、安全性が高まるとのストーリー。 お気軽に 招きにのれば 命取り 写真で身体を見た瞬間、全体が棒状なので、すぐに小枝の擬態でることがわかる。 そうなるとマネキとは真似木かという気にもなるが、表現としては余りに不自然。 見ると、"招き"らしい。 肉食の輩から招かれたい虫がいる訳がないが、この蜘蛛、自分の脚で糸をつかんで、その糸を垂らすことで、"ようこそおこしやす"とお待ちしているのである。 丈夫な糸に有篩板から出糸させた細糸を絡ませ、通行する虫がひっかかるようにしているのである。 たった、1条か2条で網と言うには余りにお粗末だが、糸の途中に枝のようにじっとしているから、餌が絡まったら即時襲撃できるということなのだろう。 もっとも、静止状態を続けている訳ではなく、時折、糸を手繰り寄せたりするという。糸のテンション調整の予行演習であろう。釣り師の合わせと似た様なもので、獲物がかかるまでは高テンションで、引っかかった途端にテンションを緩めて動く獲物に糸が絡むようにする訳だ。釣り師顔負け。 釣り師なら 扇の要 離さない ずんぐり体形で多少光沢を感じさせる外観の蜘蛛である。甲虫的装いという訳でもなさそうだが。 林棲なので、余りポピュラーではない。経糸4本、横糸10〜20本で、ほぼ三角形の網を張って、その橋でジッと餌がやってくるのを待っている。 造網手順は完全円形と同じで、横糸が獲物に絡むようになっている。しかし、獲物釣りという観点では、前述の招き蜘蛛と同じらしい。三角の頂点に繋がる一本の糸を脚で押さえているからだ。 つまり、獲物がひっかかるまでは高テンションの網だが、獲物がもがき始めたらテンションを緩めて糸を絡ませるのである。 尚、上記は、"canoe tapetum"カヌー型タペータム(視覚器官の底にある光反射輝板)群に属すとされているが、【古代風Mesothelae】や【原始的Orthognatha】のような単純な一枚板とは違い、視神経の表側と裏側の2層構造にして集光度を向上させている特徴があるということ。夜行性に拘っている訳だ。言うまでもないが、さらなる暗闇に突き進めば目を失うし、昼行性志向へ進んでいけばタペータムは欠落することになる。尚、一番目立つ最前眼1対にはもともとタペータムは無い。他の3対とは出自が違うのであろう。 鋏角類 《蜘蛛 Araneae》 │ │┼┼中疣…出糸疣が腹の中ほどに存在 │┌──【古代風 Mesothelae】 ││┼┼◆Liphistiomorpha 腹節蜘蛛と木村蜘蛛を代表とする群 └┤ ┼│┌─【原始的 Orthognatha】…真っ直ぐの牙顎類 ┼││┼◆Mygalomorphae ┼││┼┼┼│┌─《Fornicephalae 戸立蜘蛛と地蜘蛛を代表とする群》 ┼││┼┼┼└┤ ┼││┼┼┼┼└─《Tuberculotae 漏斗蜘蛛とタランチュラを代表とする群》 ┼└┤後疣…出糸疣が腹の後端に存在 ┼┼│ ┼┼│↓脱地中穴棲 ┼┼│ ┼┼└─【新生型 Opisthothelae】…二軸鋏型牙類(Labidognatha) ┼┼┼┼◆Araneomorphae ┼┼┼┼┼┼└┬─《Paleocribellatae 古篩板類(単性域類有篩板)》 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼├─《Austrochiloidea》<Neocribellatae新篩板類>基底的群 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼│┌《Haplogynae 単性域類篩板退化》…性器単純 ┼┼┼┼┼┼┼└┤ ┼┼┼┼┼┼┼┼└《Entelegynae 完性類》…性器複雑 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼↓ ┌──────────┘ ├【Eresoidea】 │┼┼┼┼┼┼┼┼Eresidae 岩ガ根 │┼┼┼┼┼┼┼┼Oecobiidae 塵,扁 │┼┼┼┼┼┼┼┼Hersiliidae 長疣 │ ├【Palpimanoidea】 │┼┼┼┼┼┼┼┼Mimetidae 戦捷 │┼┼┼┼┼┼┼┼Malkaridae │┼┼┼┼┼┼┼┼Huttoniidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Palpimanidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Stenochilidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Micropholcommatidae 星 │┼┼┼┼┼┼┼┼Holarchaeidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Pararchaeidae 夜叉 │┼┼┼┼┼┼┼┼Archaeidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Mecysmaucheniidae │ └【"canoe tapetum"カヌー型タペータム】 ┼│ ┼├Orbiculariae 円軌道造網型 ┼│┼├Deinopoidea ┼│┼│┼┼┼┼┼Deinopidae 目玉 ┼│┼│┼┼┼┼┼Uloboridae 渦,招き.扇,投げ縄 ┼│┼│ ┼│┼├Araneoidea ┼│┼│┼┼┼┼┼Araneidae 黄金,鬼,芥,棘,投げ縄 ┼│┼│ ┼│┼└"derived araneoids" ┼│┼┼┼│ ┼│┼┼┼├───Nephilidae 女郎 ┼│┼┼┼├───Tetragnathidae 脚長,銀 ┼│┼┼┼└"reduced piriform/葡萄状腺" ┼└Nicodamidae & "divided cribellum" + "RTA" 【新生型蜘蛛類 Opisthothelae】 (後疣…出糸疣が腹の後端に存在) ◆Araneomorphae 《Entelegynae 完性類》 【"canoe tapetum"カヌー型タペータム】 {Orbiculariae 円軌道造網型} -- --Deinopoidea -Deinopidae Retiarius spider【造網-脚間小四角状】[有篩板] [3爪,6眼] ○Deinopis・・・メダマグモ類…投小網捕獲(Net-casting spider) 目玉蜘蛛 Rufous net-casting spider(subrufa ○Menneus・・・アミナゲグモ類@豪州(Humped-back spider) ○Avellopsis(Camel-backed spider) -Uloboridae Hackled orb-weaver[有篩板] ○Uloborus・・・タイリクウズグモ類(Humpt spider) 大陸渦蜘蛛(walckenaerius) ○Octonoba・・・ウズグモ類【造網-水平円状】[3爪,8眼] 渦蜘蛛(varians) 東京渦蜘蛛(sinensis) 八重山渦蜘蛛(yaeyamensis) 片張蜘蛛(sybotides) ○Miagrammopes・・・マネキグモ類【造網-条】[4眼] 招き蜘蛛 Hong Kong spider(orientalis)…小枝擬態 ○Hyptiotes・・・オウギグモ類(Triangle spider)[3爪,8-6眼] 扇蜘蛛(affinis) ○Zosis・・・ミナミウズグモ類 南渦蜘蛛(geniculata) 「鋏角類」の目次へ>>> 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |