[→鋏角類目次] [→蜘蛛目次] "! ■■■ 2018年5月9日 ■■■ 黄金蜘蛛造網で 黄金時代 切り拓き 黄金蜘蛛と言えば、ファーブル昆虫記でお馴染み。 と言うより、典型的な垂直円形の蜘蛛の巣を張る種と言った方がわかりやすい。 後部(腹)に黄と黒の横縞模様があるので目につきやすい。4対の脚を前方2脚と後方2脚を揃えているのでX印に見え、尚更、この縞が目立つのである。種の名称では、長黄金蜘蛛が多いようだ。 巣と呼ぶが、住居用ではなく、もっぱら補虫網。よく知られているように、網は結構丈夫で弾力性がある。餌がひっかかると蜘蛛君は早速網を揺らすので、粘着性横糸がさらに絡みあうことになる。十分に糸に引っかかったところですかさず近寄り、さらに捕縛糸でグルグル巻きに。ここまでを、驚く程のスピードで済ませてしまう。 動けぬよう徹底的に捕縛するから、牙毒は弱いのだろう。 それにそれほど腹が減っていなければ、活き造りをゆっくりと賞味する方が健康によさげだし。 天敵来襲時も、同じように網を揺らし脅す。しかしその効果なしと感じた瞬間、ハブから一気に糸で降下して難を逃れる。なかなか、優れた生活習慣を身に着けている訳だ。 水平円網タイプの種が行っていた、隠れ帯の習慣も引き継いでおり、当然ながら模様はも十字である。脚をそれに合わせることで巨大な虫に偽装し、天敵の種劇を避ける訳だ。 と言うことで、待ち構える場所はもっぱらハブということになる。その場所で、常に、獲物捕獲信号糸を脚で押さえている訳だ。揺れたらすかさず、自分の脚でさらに揺らすのであろう。 いわば完成形の網とも言えるので、この蜘蛛の網に至る進化の道筋が描かれることが多かった。マ、過去形ではなく、現在もそのような論法での分類が提起されているようだ。一知半解的に、テキトーではあるがどんな具合なのか下にまとめてみた。 素人にしては、かなり違和感を覚える話である。 一つは、黄金蜘蛛にしてから、非造網タイプの種(大和鼎蜘蛛)が含まれているし、後述する投げ縄蜘蛛のように糸を垂らすだけの種があったりするからで、棲息環境と狙う餌の習性に応じて網の設計が変わっておかしくないから、"作品"で種を分類するという論理がよくわからないからである。同じような生活を送ることになれば、"作品"は似てくるだろうし、それを作成するために体躯的にも類似形態が増えるのは当然だから、それは有力な根拠とは言い難かろう。 もう一つは、網で分類というなら、糸腺あるいは出糸紡糸構造で分類すべきだと思われるが、網形状分類とそれがどう対応しているのか今一歩さだかではない印象があるから。 【網形状視点での分岐】 └┬──────────巣穴蓋裏打 ┼│┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼腹節・戸立 ┼│↓捕獲場所化 ┼└┬─────────長細ソックス(巣の延長) ┼┼│┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼地 ┼┼│↓絡まり糸+丈夫な糸 ┼┼└┬────────滅茶苦茶 ┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼┼┼昔襤褸網Austrochilus ┼┼┼└┬───────チューブ ┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼┼宮Ariadna ┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼毛羽立ちシート ┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼┼塵Oecobius ┼┼┼┼└┬──────不規則地平シート ┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼葉Dictyna ┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼黒崖地Badumna ┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼┼走Dolomedes ┼┼┼┼┼└┬─────円軌道造網法 ┼┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼目玉Deinopis ┼┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼渦Uloborus ┼┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼┼扇Hyptiotes ┼┼┼┼┼┼└┬────不規則空中シート ┼┼┼┼┼┼┼│┼┼┼┼┼赤黒Nicodamus ┼┼┼┼┼┼┼│↓円網的 ┼┼┼┼┼┼┼│┼┌──典型的空中シート ┼┼┼┼┼┼┼└┬┤┼┼┼ピモ皿Pimoa ┼┼┼┼┼┼┼┼│└──ドーム ┼┼┼┼┼┼┼┼│┼┼┼┼脚長Tetragnata ┼┼┼┼┼┼┼┼│↓純絹糸系 ┼┼┼┼┼┼┼┼└┬──粘着網 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼│┼┼┼後家Latrodectus ┼┼┼┼┼┼┼┼┼└┬─垂直馬蹄形円網 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼│┼┼女郎Nephila ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼└─高度造成垂直円網 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼黄金Argiope ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼棘Gasteracantha ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼鬼Araneus ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼│↓粘着珠付き孤立糸 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼投げ縄Mastophora (参照) T.A.Blackledge. et al.:"Reconstructing web evolution and spider diversification in the molecular era" PNAS106(13). 2009 素人的に解釈すれば、大型垂直円網とは、出糸量が少ない割に大型の餌も捕獲できる優れモノ。 地平型は結構厚手であり大層なエネルギーを消耗するから、この一家は大繁栄できたということであろう。ただ丈夫な糸という点では地中棲を棄てた時点でその方向に進んだのだから、絡み糸でなく粘着成分を産み出したことが結節点に当たるということになろう。 素人からすれば、粘着珠付き孤立糸の投げ縄蜘蛛が黄金蜘蛛の基底種の様相を示しているような気になってくる。 珠あれば 投げ縄下手でも 捕獲でき 投げると言うよりは、粘着珠付き糸をブル下げているだけでは。通行者にひっつきやすいように糸を揺すっていると考えた方が合理的な感じがする。 北米タイプ、豪州タイプ(滅多に見つからない日本棲の井関蜘蛛が含まれる。)、アフリカタイプにわかれているようだ。 ともあれ、この円網一家には様々な習性の種が含まれており、外見も色々。 そうなったのは、主要な餌たる飛翔昆虫が大いに栄えて様々な種が生まれたからだろう。それに対応すれば自動的に多種多様の道を歩まざるを得まい。 夜の虫 一網打尽に してくれる 場所によって細かく棲み分けしそうだから、天敵の特定の鳥がいる場所かどうかで網張り習性も違ってくるのだろう。 鬼蜘蛛の外見はかなりゴツイが、華奢に映る美しい意匠に凝る種も存在する。 →[PHOTO]Spiny Orb-weavers Genus Gasteracantha@iNaturalist カラフルで 美しいから 棘もある 当然ながら擬態もお得意。 ゴミ屋敷 主にとっては 生命線 どうしてか こんな所に 鳥の糞 妖術で 樹木の瘤に 成り代わり 鋏角類 《蜘蛛 Araneae》 │ │┼┼中疣…出糸疣が腹の中ほどに存在 │┌──【古代風 Mesothelae】 ││┼┼◆Liphistiomorpha 腹節蜘蛛と木村蜘蛛を代表とする群 └┤ ┼│┌─【原始的 Orthognatha】…真っ直ぐの牙顎類 ┼││┼◆Mygalomorphae ┼││┼┼┼│┌─《Fornicephalae 戸立蜘蛛と地蜘蛛を代表とする群》 ┼││┼┼┼└┤ ┼││┼┼┼┼└─《Tuberculotae 漏斗蜘蛛とタランチュラを代表とする群》 ┼└┤後疣…出糸疣が腹の後端に存在 ┼┼│ ┼┼│↓脱地中穴棲 ┼┼│ ┼┼└─【新生型 Opisthothelae】…二軸鋏型牙類(Labidognatha) ┼┼┼┼◆Araneomorphae ┼┼┼┼┼┼└┬─《Paleocribellatae 古篩板類(単性域類有篩板)》 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼├─《Austrochiloidea》<Neocribellatae新篩板類>基底的群 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼│┌《Haplogynae 単性域類篩板退化》…性器単純 ┼┼┼┼┼┼┼└┤ ┼┼┼┼┼┼┼┼└《Entelegynae 完性類》…性器複雑 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼↓ ┌──────────┘ ├【Eresoidea】 │┼┼┼┼┼┼┼┼Eresidae 岩ガ根 │┼┼┼┼┼┼┼┼Oecobiidae 塵,扁 │┼┼┼┼┼┼┼┼Hersiliidae 長疣 │ ├【Palpimanoidea】 │┼┼┼┼┼┼┼┼Mimetidae 戦捷 │┼┼┼┼┼┼┼┼Malkaridae │┼┼┼┼┼┼┼┼Huttoniidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Palpimanidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Stenochilidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Micropholcommatidae 星 │┼┼┼┼┼┼┼┼Holarchaeidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Pararchaeidae 夜叉 │┼┼┼┼┼┼┼┼Archaeidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Mecysmaucheniidae │ └【"canoe tapetum"カヌー型タペータム】 ┼│ ┼├Orbiculariae 円軌道造網型 ┼│┼├Deinopoidea ┼│┼│┼┼┼┼┼Deinopidae 目玉 ┼│┼│┼┼┼┼┼Uloboridae 渦,招き.扇,投げ縄 ┼│┼│ ┼│┼├Araneoidea ┼│┼│┼┼┼┼┼Araneidae 黄金,鬼,芥,棘,投げ縄 ┼│┼│ ┼│┼└"derived araneoids" ┼│┼┼┼│ ┼│┼┼┼├───Nephilidae 女郎 ┼│┼┼┼├───Tetragnathidae 脚長,銀 ┼│┼┼┼└"reduced piriform/葡萄状腺" ┼└Nicodamidae & "divided cribellum" + "RTA" 【新生型蜘蛛類 Opisthothelae】 (後疣…出糸疣が腹の後端に存在) ◆Araneomorphae 《Entelegynae 完性類》 【"canoe tapetum"カヌー型タペータム】 {Orbiculariae 円軌道造網型} -- --Araneoidea -Araneidae Orb-weaver【造網】 [3爪,8眼] -- ○Argiope・・・コガネグモ類【造網-円-昼行性】 黄金蜘蛛(amoena) 長黄金蜘蛛(bruennichi) …"JHFabre:l'exode des araignées" 中型黄金蜘蛛(boesenbergi) -- ○Acusilas・・・ハツリグモ類 葉吊蜘蛛(coccineus) ○Cyclosa・・・ゴミグモ類 芥蜘蛛Orb-weaver(octotuberculata)…ゴミ擬態 烏芥蜘蛛(atrata) 銀鍍金芥蜘蛛(argenteoalba) ○Parawixia or Eriophora (bistriata)@パラグアイ…社会性(円網集合体) -- ○Arachnura・・・オヒキグモ類(Tailed spider) 黄白尾曳蜘蛛(logio) ○Araneus・・・オニグモ類【造網夜行性】 鬼蜘蛛(ventricosus) 山鬼蜘蛛(uyemurai) 赤鬼蜘蛛(pinguis) 青鬼蜘蛛(pentagrammicus) 階鬼蜘蛛(abscissus) 幣鬼蜘蛛(ejusmodi) Cat-faced spider(gemmoides)&(gemma) 庭鬼蜘蛛Cross spider or European garden spider(diadematus) …"JHFabre:les épeires" ○Chorizopes・・・カナエグモ類 大和鼎蜘蛛(nipponicus)[非造網]…蜘蛛食 ○Yaginumia・・・ズグロオニグモ類 頭黒鬼蜘蛛(sia) --(-Arkyidae Ambush hunter⇒Araneidae) ○Arkys Speechley's Arkys(speechleyi)@豪州 (alatus)@豪州 (curtulus)@豪州 ○Hypsosinga 白条猩猩蜘蛛(sanguinea) ○Zygiella Silver-sided sector spider(x-notata) ○Neoscona・・・ヒメオニグモ類 家鬼蜘蛛(nautica) 山白鬼蜘蛛(scylla) 土用鬼蜘蛛(adianta)…水田周辺棲 ○Poltys・・・ゲホウグモ類…樹木瘤擬態 外法蜘蛛(illepidus) 筒外法蜘蛛(columnaris) -- ○Pasilobus・・・ツキジグモ類[造網-水平三角形状] 蟇蛙[わくど]築地蜘蛛(hupingesis)…希少種 (bufoninus)@台湾,ジャワ島 ○Cyrtarachune・・・トリノフンダマシ類 鳥ノ糞騙(bufo) --(-Mastophridae⇒Aran eidae) ○Mastophora・・・ナゲナワグモ類(American bolas spider) 投げ縄蜘蛛(bisaccata)@北米 …粘球を吊り下げ振り回して捕獲 ○Ordgarius・・・イセキグモ類(Australasian bolas spider) …粘球に蛾の誘引物質 豆板井関蜘蛛(hobsoni) 六棘遺跡蜘蛛(sexspinosus) ○Cladomelea(African bolas spider) -- ○Cyrtophora(Tent spider) 涼蜘蛛(moluccensis) 絹網蜘蛛(exanthematica) -- ○Gasteracantha・・・トゲグモ類(Spiny orb-weaver) 棘蜘蛛(kuhlii) 乳房棘蜘蛛(brevipina) 大長棘蜘蛛Long horn spider(arcuata) Spiny-backed orb-weaver or Star spider(cancriformis)@米国南部 Oriental spiny orb-weaver(geminata) ○Micrathena 迷彩棘蜘蛛(gracilis)@北米落葉樹林帯 ○Caerostris 頭高蜘蛛"common" Bark spider(sexcuspidata)@アフリカ南部 「鋏角類」の目次へ>>> 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |