[→鋏角類目次] [→蜘蛛目次] "! ■■■ 2018年5月22日 ■■■ 水蜘蛛陸飽きて 水に入って マイホーム 水棲ということで、その珍しさから有名だが、それは日本だからかも。欧州では、そこここに棲んでいるらしい。 蜘蛛に鰓がある訳がないから、水中では溺れてしまうのに、どうして生きていけるのか不思議。しかし、英語の通俗名称を知ると想像がつく。"Diving bell spider"なのだ。ベル型の空気充填空間を作ってから潜水するということなのだろう。 一時の潜水なら、徘徊性の子守蜘蛛も可能らしいから、そう難しくはないのだろうが、ほぼ水中生活というのは凄い。 [→"Water spider (Argyroneta aquatica)" @Wildscreen Arkive-Natural World Encyclopaedia Online] ただ、水中移動には相当な体力が必要とみえ、蜘蛛にしては珍しく♂が♀より大きい。 流れゆく 潮のまにまに 独り棲み 一方、潮蜘蛛は潮間帯棲である。 満潮時に巣の一部が海水中に没してしまう場所でもOK。従って、珊瑚礁で見つかることがあるようだ。潮間帯の昆虫も少なくはないが、場所柄から見て、主たる餌は、端脚類や等脚類ということになろう。 塩分対策は結構厄介だろうから、普通は、そんな環境を避けるものだが、敢えて挑戦したのだろう。 大和潮蜘蛛の場合、満潮時には完全に水没してしまう干潟棲と言われている。砂地ではないかとビックリするが、そこには転がっている珊瑚片があったりするから、そこに巣を造成し満潮時はその空気室中でジッとしているのだろう。もともとはしっかりした礁に棲んでいて、荒波に壊されて流れついたりした種の生き様という気がしてくる。結構、離島にもいそうだが、雌雄の出逢いを実現する術がどうなっているのか気になるところ。 並でなく 細かな変化の 大盛りゾ ナミハ蜘蛛は水蜘蛛の類縁とされているので、思わず"濤波"と書いてしまうところだが、水には縁遠い生活をしている。森林帯の地表でトンネル状の巣を作っている種なのだ。 そうなると、この名前は、分類の視点から"並歯"と命名されたと見てよさそう。(ナミハ崖地蜘蛛と命名されている種もあることだし。) この仲間は日本国内で80種程度報告されているようで、棲み分けが盛んなようだが、同一の種でも、地域毎に大きさ、体色、生殖器形態が異なっていると指摘している論文がある。亜種や変種としてあげていたらきりがないようだ。ただ、矢鱈に洞窟発見種が多い。 それにしても、水棲に近い生物群を餌にしようとして分岐した一群という雰囲気がさっぱり感じられない。水中に進出するために、特段新しいデザインの器官を必要としていないということだろうか。 もともと、この辺りの類縁種にしても矢鱈に似ているらしく、分類も定かではないようだ。造網状況から見ると、以下の種は同一グループと見ることもできなくはない訳だし。・・・ 潮蜘蛛系[Desidae] 黒崖地蜘蛛類[Badumna] 大網崖地蜘蛛[Phryganoporus] 崖地蜘蛛系[Amaurobiidae] 谷地蜘蛛類[Coelotes(Coelotidaeとして独立させる見方も)] 夜道蜘蛛系[Amphinectidae] ネオ崖地蜘蛛類[旧Neolanidae→Neolana] 草・棚蜘蛛系[Agelenidae] 葉蜘蛛系[Dictynidae] 小棚蜘蛛類[Cicurina] 鋏角類 《蜘蛛 Araneae》 │ │┼┼中疣…出糸疣が腹の中ほどに存在 │┌──【古代風 Mesothelae】 ││┼┼◆Liphistiomorpha 腹節蜘蛛と木村蜘蛛を代表とする群 └┤ ┼│┌─【原始的 Orthognatha】…真っ直ぐの牙顎類 ┼││┼◆Mygalomorphae ┼││┼┼┼│┌─《Fornicephalae 戸立蜘蛛と地蜘蛛を代表とする群》 ┼││┼┼┼└┤ ┼││┼┼┼┼└─《Tuberculotae 漏斗蜘蛛とタランチュラを代表とする群》 ┼└┤後疣…出糸疣が腹の後端に存在 ┼┼│ ┼┼│↓脱地中穴棲 ┼┼│ ┼┼└─【新生型 Opisthothelae】…二軸鋏型牙類(Labidognatha) ┼┼┼┼◆Araneomorphae ┼┼┼┼┼┼└┬─《Paleocribellatae 古篩板類(単性域類有篩板)》 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼├─《Austrochiloidea》<Neocribellatae新篩板類>基底的群 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼│┌《Haplogynae 単性域類篩板退化》…性器単純 ┼┼┼┼┼┼┼└┤ ┼┼┼┼┼┼┼┼└《Entelegynae 完性類》…性器複雑 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼↓ ┌──────────┘ ├【Eresoidea】 │┼┼┼┼┼┼┼┼Eresidae 岩ガ根 │┼┼┼┼┼┼┼┼Oecobiidae 塵,扁 │┼┼┼┼┼┼┼┼Hersiliidae 長疣 │ ├【Palpimanoidea】 │┼┼┼┼┼┼┼┼Mimetidae 戦捷 │┼┼┼┼┼┼┼┼Malkaridae │┼┼┼┼┼┼┼┼Huttoniidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Palpimanidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Stenochilidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Micropholcommatidae 星 │┼┼┼┼┼┼┼┼Holarchaeidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Pararchaeidae 夜叉 │┼┼┼┼┼┼┼┼Archaeidae │┼┼┼┼┼┼┼┼Mecysmaucheniidae │ └【"canoe tapetum"カヌー型タペータム】 ┼│ ┼├Orbiculariae 円軌道造網型 ┼│┼├Deinopoidea ┼│┼│┼┼┼┼┼Deinopidae 目玉 ┼│┼│┼┼┼┼┼Uloboridae 渦,招き.扇,投げ縄 ┼│┼│ ┼│┼├Araneoidea ┼│┼│┼┼┼┼┼Araneidae 黄金,鬼,芥,棘,投げ縄 ┼│┼│ ┼│┼└"derived araneoids" ┼│┼┼┼│ ┼│┼┼┼├───Nephilidae 女郎 ┼│┼┼┼├───Tetragnathidae 脚長,銀 ┼│┼┼┼└"reduced piriform/葡萄状腺" ┼│┼┼┼┼┼┼---("symphytognathoids" ) ┼│┼┼┼┼┼┼┼Theridiosomatidae 山路,鳴子 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Mysmenidae 小粒 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Synaphridae 荒地小粒 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Anapidae 鎧姫,砂粒,寄り眼 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Symphytognathidae 融顎 ┼│┼┼┼┼┼┼"araneoid sheet web weavers" ┼│┼┼┼┼┼┼┼┼--("linyphioids") ┼│┼┼┼┼┼┼┼Pimoidae ピモ皿,脚縒 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Sinopimoidae ┼│┼┼┼┼┼┼┼Linyphiidae 皿 ┼│┼┼┼┼┼┼┼┼"spineless femur" ┼│┼┼┼┼┼┼┼Chatolipidae ┼│┼┼┼┼┼┼┼Synotaxidae ┼│┼┼┼┼┼┼┼Nesticidae 洞姫 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Theridiidae 姫,尾長,後家,居候,槍 ┼│┼┼┼┼┼┼┼Chatolipidae ┼│ ┼└Nicodamidae & "divided cribellum" + "RTA" ┼┼├-- ┼┼│┼┼┼┼┼┼Nicodamidae 赤黒 ┼┼│ ┼┼├"titanoecoids" ┼┼│┼┼┼┼┼┼Phyxelididae 棘崖地 ┼┼│┼┼┼┼┼┼Titanoecidae 大和崖地 ┼┼│ ┼┼└"RTA" ♂触肢の後側脛節突起(retrolateral tibial apophysis)保有群 ┼┼┼├Dictynoidea ┼┼┼│┼┼┼┼┼Hahniidae 畠,山畑 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Dictynidae 葉 ┼┼┼├─ ┼┼┼│┼┼┼┼┼Zodariidae 法師,童子 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Penestomidae ┼┼┼│┼┼┼┼┼Chummidae 糸枯法師 ┼┼┼│ ┼┼┼├Dionycha 二爪 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Sparassidae 脚高,露 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Anyphaenidae 井筒 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Homalonychidae ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Clubionidae 袋,小町 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Corinnidae 蜂 ┼┼┼│┼┼┼┼┼(Trachelidae) 猫 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Zoridae 絞擬 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Liocranidae 鼬,田圃 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Philodromidae 海老,蝦蛄,宿借 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Cycloctenidae 丸絞 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Salticidae 蠅捕,孔雀 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Selenopidae 袷 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- ┼┼┼│┼┼┼┼┼Thomisidae 蟹,渡蟹,花,行者,安土 ┼┼┼│┼┼┼┼┼-- "Oblique Median Tapetum" ┼┼┼│┼┼┼┼┼(本来的には含有:↑Liocranidae) ┼┼┼│┼┼┼┼┼Lamponidae 尾白鷲 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Cithaeronidae 韋駄天 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Gallieniellidae ┼┼┼│┼┼┼┼┼Trachanteriidae 単衣 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Ammoxenidae ┼┼┼│┼┼┼┼┼Phrurolithidae(↑Corinnidae分離群) 浦島,乙姫 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Gnaphosidae 鷲 ┼┼┼│┼┼┼┼┼Prodidomidae 伊予 ┼┼┼│ ┼┼┼│┌"fused paracribellar" ┼┼┼││┼┼┼├Stiphidiidae ┼┼┼││┼┼┼└ ┼┼┼││┼┼┼┼Agelenidae 草,棚 ┼┼┼││┼┼┼┼Cybaeidae 並歯,水 ┼┼┼││┼┼┼┼Desidae 潮 ┼┼┼││┼┼┼┼Amphinectidae 夜道 ┼┼┼└┤ ┼┼┼┼│┌─┼┼Amaurobiidae 崖地,谷地 ┼┼┼┼└┤ ┼┼┼┼┼│┌─┼Tengellidae(→Zoropsida) ┼┼┼┼┼└┤"grade shaped tapetum"格子形タペータム ┼┼┼┼┼┼└┐ ┼┼┼┼┼┼┼├─Udubidae(Zorocratidae) ┼┼┼┼┼┼┼├"ctenoid complex" ┼┼┼┼┼┼┼│┼Miturgidae 土袋 ┼┼┼┼┼┼┼│┼Ctenidae 絞 ┼┼┼┼┼┼┼├─Zoropsidae 周防,逸 ┼┼┼┼┼┼┼└"higher lycosoids" ┼┼┼┼┼┼┼┼┼Psechridae 襤褸網 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼Senoculidae ┼┼┼┼┼┼┼┼┼Oxyopidae 笹 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼Pisauridae 走,岸田 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼Trechaleidae 差し足 ┼┼┼┼┼┼┼┼┼Lycosidae 子守 【新生型蜘蛛類 Opisthothelae】 (後疣…出糸疣が腹の後端に存在) ◆Araneomorphae 《Entelegynae 完性類》 【"canoe tapetum"カヌー型タペータム】 Nicodamidae & "divided cribellum" + "RTA" -- "RTA" "fused paracribellar" -Cybaeidae【造網】[有篩板] ○Cybaeus・・・ナミハグモ類@森林土壌地表棲 [3爪,8〜0眼] 龍の岩屋並歯蜘蛛(ryunoiwayaensis)@徳島県の洞窟 信玄並歯蜘蛛(singenni)@山梨県の洞窟 高沢並歯蜘蛛(takasawaensis)@熊本県の洞窟 日原並歯蜘蛛(obdienarius)@奥多摩の洞窟 蛇穴並歯蜘蛛(jaanaensis)@岐阜県の洞窟 北国並歯蜘蛛(senzokuensis)@岩手県の洞窟 勝鬨並歯蜘蛛(nipponicus)…全国区当選種か. (reticulatus)@北米 ○Dolichocybaeus・・・ズナガグモ類 風神並歯蜘蛛(fujinensis)@熊本県の洞窟 日光並歯蜘蛛(nichikoensis)@熊本県の洞窟 長門並歯蜘蛛(kuramotoi)@山口県の洞窟 金毘羅並歯蜘蛛(kompiraensis)@高知県の洞窟 ○[化石]Vectaraneus (yulei)…Argyronetaとの中間 (-Argyronetidae⇒Cybaeidae) ○Argyroneta・・・ミズグモ類(Water spider)…【水中-造網】 [3爪,8眼] 水蜘蛛 Diving bell spider or Diving bell spider(aquatica) …水中棲(脚毛で空気運搬@水中ドーム) -DesidaeIntertidal spider [3爪,8眼][有篩板] (Amaurobiidae崖地蜘蛛から独立) ○Desis・・・ウシオグモ類(Marine spider)【徘徊-海岸間隙・珊瑚礁】 大和潮蜘蛛(japonica) (bobmarleyi)@豪州珊瑚礁棲…空気室造網 ○Badumna・・・クロガケジグモ類【造網-入口ボロ+トンネル状住居】 黒崖地蜘蛛Black house spider(insignis)@豪州(→日本移入) ○Phryganoporus 大網崖地蜘蛛Foliage webbing spider(candidus)@豪州 …多数個体が大網を共通利用(社会性) -Amphinectidae ヨミチグモ[有篩板] ○Metaltella (simoni)@南米→北米移入 ○Tasmarubrius@森林棲 (-Neolanidaeネオガケジグモ) ○Neolana@NZ -AmaurobiidaeTangled nest spider or Hacklemesh weaver [3爪,8眼][有篩板] ○Amaurobius・・・ガケジグモ類 (ferox)…母親食 ○Taira・・・セスジガケジグモ類【造網】 背筋崖地蜘蛛Tangled nest spider(flavidorsalis) ○Cybaeopsis 並歯崖地蜘蛛(typica) ○Callobius (claustrarius)@欧州山地 (-Agelenidae/Coelotidae⇒Amaurobiidae) ○Coelotes・・・ヤチグモ類【造網-トンネル状住居】 (黒)谷地蜘蛛(exitialis) 鉞谷地蜘蛛(kintaroi) 帝谷地蜘蛛(yaginumai) (-Tengellidaeヘリツメグモ⇒Zoropsida)[有篩板] 「鋏角類」の目次へ>>> 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |