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2003.10.3 |
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黒豚人気…豚肉には2種類ある。国産と輸入である。大雑把な分け方である。しかし、国産品と表示されると価格が高くなるから、重要な分類である。 国産品なら、なんであろうと、輸入品よりメリットがあるから高価なのは当然、とは思えないが、ずっとこの状態が続いている。 このような商売を続ければどうなるかは言わずもがなである。 そのほころびが、大手スーパーによる輸入豚肉の国産詐称販売として現われた。 マスコミは、一部の悪徳商法といったトーンで報道するが、詐称の根源にはほとんど触れない。意味の薄い分類で価格を決めているのだから、詐称が無くなる訳がない。 豚肉は、素人では、見た目で品質を判断できない。表示で判断して購入するしかないのである。 ところが、低品質な国産品でも、「国産」表示なら高価になる。美味しくて安全な輸入品でも、「国産」表示より安価のことが多い。販売店自体が不合理さを感じている状況である。詐称の「温床」が備わっている訳だ。 常識で考えれば、このような表示方法と、価格設定を続けていることが問題なのである。
といっても、最近は、さらに細かな分類表示がされるようになってきた。 高品質な豚肉生産者が、分類は不可欠と考え始めたからである。競争力ある生産者が、勝ち組み化の動きを始めたと言える。人気の黒豚は、その典型例だ。 右表でわかるように、輸入品は着実に浸透しており、国産優位とは言えなくなってきた。 品質差が激しい国内産をすべて同一扱いにして、低品質豚肉生産者でも生き残れるような仕組みを容認できなくなった訳だ。 しかし、合理的な分類が進んでいるとは言い難い。「銘柄化」で高級感を出そうという試みに過ぎないからだ。分類の基準は曖昧である。表示は産地名だったり、品種名だったりする。高級感訴求さえできればよいから、当然である。 お蔭で、ここでも、詐称が問題になる。国内で、産地名を巡る対立や、品種名騒動が持ちあがっている。 輸入品でも同じ問題を抱える。 生産者は千差万別だから、質のバラツキは極めて大きい。一括して、「輸入品」として品質や安全性のレベルなど議論しても意味ないのである。 出所を明示して、差別化できなければ、高品質豚肉生産者は大損だ。 こうした状況を見ていると、これからの「食」の流れに対応できる勝ち値組み生産者と、負け組み生産者がわかれ始めた、と言えそうだ。 こう考えるのは、酒や麺で見た日本「食」の流れが、豚肉にも当てはまりそうだからである。 ざっと、豚肉市場の流れを見ておこう。 豚肉もコモディティ商品開発が盛んな市場だったといえる。豚肉生産者は、消費者が喜ぶ、柔らかくて、ジューシイな肉の生産に励んだといえる。食べ易いくて、沢山摂ることができるなら、生産者と消費者の両者が歓迎するから、極く自然な流れである。 この段階では、圧倒的に国産優位といえる。海外の生産者は、このような商品開発を行わなかったのだから当然の結果である。柔らかくて、ジューシィな肉という観点では、国産肉は「素晴らしい商品」であるのは間違いないと思う。 ところが、市場が成熟化してきた上、健康志向が強まってきた。これに応えて、さらに肉質の改良が進む。脂身が少ない方向に進むと同時に、安全なSPFへのシフトが進んだ。 一方、輸入品は、対応が遅れた。しかも、台湾のような口蹄疫発生国はあるし、薬品使用がルーズな国もあり、安全イメージも良くなかった。 [口蹄疫が発生すると即時輸入禁止になる。病気撲滅と言うには、発生が無くなって最低1年は必要だし、確認に時間がかかる。従って、禁止になると、輸入解禁は何時になるかわからない。] この段階までは、「国産」「輸入」一括表示には、それなりの意味があったといえる。 しかし、この分類では、余りに雑、と消費者が感じ始めている。 すでに、豚肉加工食品原料の大半が輸入品になっていることに気付いたからだ。 その上、高度な安全確保体制を敷く海外生産者の存在が知られるようになってきた。国産か輸入かより、個々の生産者の差異が大きいことがわかってきたのである。 そして、「食」の流れが変わり始めた。柔らかくて、ジューシィな、癖の無い肉、というコンセプトに飽きがきたようだ。 「ジューシィ」とは書き方を変えれば、水っぽい肉汁だらけ、ということになる。美味しい肉と感じなくても不思議ではない。 「柔らか」との表現も、見方を変えれば、「ぶよぶよ」しているとも言える。このような肉質にすれば、繊維質の偏りは避けられない。噛みきれない固い筋が発生するし、肉汁リッチだから、組織自体は「ぼそぼそ」になる。食べ易いコモディティ商品とは、かなり偏った品質なのだ。 豚肉本来の旨みが欲しくなると、この様な商品では全く対応できなくなる。 お蔭で「国産銘柄豚」に人気が集中している。しかし、一部の高級品を除けば、改良品種への移行と、餌の変更程度にすぎず、肉質が大きく変わった訳ではない。安売り品とたいして変わらない「国産銘柄豚」がそこいらじゅうに登場しているのだ。 消費者が、ラベルで判断せず、味覚で品質を判断すれば、「国産銘柄豚」は総崩れになりかねない。
ということは、輸入品シフトが発生する可能性もある。 北米や欧州では、もともとジューシィさなどウリにならない。従って、日本と比べると、かなり固い。そのため、嫌う人が多かった。しかし、豚肉の持つ本来の旨みと、素材感では、日本より上である。この点が評価されれば、「銘柄」輸入品が登場するかもしれない。 こうした状況で日本の生産者が勝ち組みに残るためには、誰が見てもわかる差別化ポイントを打ち出す必要があろう。 すでに、給餌、飼育環境、病気予防、屠殺といったプロセス管理では、IT活用が進む海外生産者が圧倒的力量を誇る。ここでは、国産品の特別な強みは無い。 そうなると、勝ち組みに入るためには、「地もの品種」「産地特有の飼育方法」「SPF」の三点セットが不可欠だろう。 特に、重要なのが、美味しい品種のSPF化だろう。困難な技術だが、国産生き残りの切り札と言えそうだ。 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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