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2003.10.5 |
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地鶏だらけ…ブロイラーが不人気である。そのため、店頭には、地鶏が並ぶ。美味しい鶏肉に移りつつあると、簡単に考えてしまいがちだが、じっくり考えると、日本の鶏肉産業に翻弄され続けている消費者が見えてくる。 ざっと眺めてみよう。 最近、ブロイラーを誉める人を見たことがない。抜群な生産性を考えれば、優れた食材と言えるのだが、できれば食べたくない食材、と平然と言い放つ人がいる位だ。 工場生産と同じように生産された鶏肉は避けたいらしい。気持ちはわからぬでもないが、ブロイラー型でない仕組みで生産される鶏肉は、おそらく全体の数%しかないだろう。 どの鶏肉でも、基本の仕組みはたいして変わらないのである。消費者に実態を知らせる人がいないから、誤解が広まっているだけの話しである。 典型的なブロイラー生産は、50〜60日間の平飼いシステムである。約5Kgの餌を与えて、2〜2.5Kgの鶏を育てる。大きくなって、ぎゅう詰め状態になったところで、「若鶏」として出荷する。無理な育て方であるのは、間違いない。しかし、驚異的な生産効率である。味が落ちるのはいたしかたあるまい。 ブロイラーは、もともと、全身「あぶり焼き」で美味しくなる食材として開発された。脂肪が少なく淡白な商品である。味は薄いのである。 ところが、日本では、ブロイラーの肉を小分けして調理する。しかも、串焼きや鍋にするのだから、淡白路線の肉は余り美味しくない。 そのため、日本では、もも肉が喜ばれる。筋肉なのでやや堅く、脂肪が多い部位である。 一方、欧米では、鶏肉は、牛豚のレッドミートと違い、低カロリー/低コレステロールのホワイトミートだ、との意識が強い。むね肉を食べることになる。脂肪が多いもも肉には市場性はない。 従って、米国は、むね肉ともも肉半々の低脂肪ブロイラーを目指して改良してきた。日本はもも肉が多く、脂っこい鶏にしたいから、方向は正反対だ。 要するに、日本では、鶏肉は、牛肉、豚肉の安価な代替品なのだ。 売り場に行けば、もも肉とむね肉のポジションの違いは一目瞭然である。売り易いもも肉の販売価格は高い。売れ残りかねないむね肉を安価にして、鶏肉全体で利益を出すプライシングが行われている訳だ。 このような状況では、牛豚なみの、「濃い」鶏肉が求められるのは必定だ。 そこで、この要求に応えるべく、「地鶏」や「銘柄鶏」が登場したといえる。 ところが、この高額鶏肉がよくわからない代物なのである。 まずは、「銘柄鶏」だが、これは、それぞれの地域が勝手に設定した「民」の規格である。自己申告だけで、認定されるわけではない。協会発表では現在150種類ほどある。基本はブロイラー型品種に在来品種を交雑した鶏だ。在来種も若干入っていれば、地鶏と考えてかまわない、という思想だ。品種を変えただけで、ブロイラー型生産システムをそのままつかっている地域も多い。ブロイラーとの違いはよくわからないのである。 宣伝を見ると、ブロイラーより余裕を持って育てた鶏らしいが、実態は皆目わからない。 (日本食鳥協会 http://group.lin.go.jp/jca/map/map.html) 一方、「地鶏」は認定が必要となる。「官」が管轄する、特定JASの規格である。品種、飼育日数、飼育方法で規定されている。在来種で80日以上の飼育をすれば、ほぼOKである。 [平飼規定もあるが、それ以外で飼育されるブロイラーなどあるまい。飼育密度も1平米10羽でOKだ。15羽以上という状況に比べれば小さいが、余裕ある飼育とは言い難い。] 従って、すぐに認定が広がりそうに思うが、実際にはほとんど利用されていない。 [阿波尾鶏、奥美濃古鶏、は認定された。] 当然である。認定無しに「地鶏」表示してもかまわないからだ。わざわざ時間と金をかけて認証してもらっても、JASマークが付くだけだ。 この動きは、消費者の「昔の鶏」を食べたいとの欲求に応じた、イメージ商法と見ることもできる。 そもそも、「昔の鶏」は、密集飼育不能だったり、成長が遅いため、安価なブロイラー登場でポジションを失った。まともに復活すれば、とてつもない高額商品にならざるを得ない。量販店に並び始めた商品は、在来品種を生産し易いように改良し、ブロイラー生産の仕組みで造れるようになった鶏肉と見て間違いない。 [もちろん、本当の「昔の鶏」も、ほんの僅かだが、生き残っている。] 要するに、ほとんどのプレミアム鶏肉はブロイラーもどきなのだ。 日本の消費者は、欧米が作り出したブロイラーのメリットを十分に味わえないし、「昔の鶏」の本当の旨みを知ることもできない状況にある。しかし、そのことに気付いている人は稀だ。 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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