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2004.1.17
 
 


不毛な反乳業メーカー思想…

 乳業メーカーが官能評価を重視し始めたことが、酪農産業を変えるきっかけになる可能性を述べた。
   → 「おいしい牛乳の意義」 (2004.1.16)

 おいしいとは言うものの、この牛乳は高温殺菌品(130度2秒)なので、自称エコには興味が湧かないようだ。
 本当の牛乳とは、低温殺菌品と考えているからだ。

 日本では、130度2秒殺菌の牛乳がほとんどなのである。このため、自称エコ派のなかには乳業メーカーを敵視する人もいる。メーカーが低温殺菌に消極的姿勢なのが腹立たしいらしい。
 なかには、高温殺菌のような牛乳を飲ますのは日本くらいのものだ、と怒りをあらわにする人もいる。

 不毛な対立である。

 確かに、低温殺菌しか飲んでいなかった帰国子女は、日本の市乳にはこげたような臭気を感じるようだ。
 牛乳を高温加熱した際の調理臭がわかるようである。
 自称エコ派が主張するように、高温加熱すれば、まずい牛乳になることは間違いあるまい。

 日本の超高温殺菌(UltraHigh-Temperature pasteurization)は、滅菌に近い強烈な処理なのだ。典型的な処理は、約1分間85度で余熱した上、2秒間130度で加熱する。
 この温度では、おそらくほとんどの細菌が死滅すると思うが、「pasteurization」処理とされている。
 処理後に無菌充填しない上、紙パッケージを使うから、滅菌扱いにしていないだけと言えそうだ。

 実は、海外でも、高温殺菌(High-Temperature Short-Time pasteurization)は行われている。細菌汚染の危険性が低く、大量処理が可能であるからだ。しかし、処理条件は全く違う。
 普通は、密閉した装置内で、15秒間75度加熱するだけである。日本では、この方式を見かけたことが無い。

 何故ここまでの違いがでるか、考えればすぐに分かる筈だ。

 要するに、日本の原乳の質に合わせた殺菌処理条件なのである。15秒間75度加熱など怖くてできない訳だ。

 今もって、9割以上が超高温処理品なのは当然と言える。

 これはメーカーの姿勢の問題ではない。日本の酪農業の仕組み上、どうしようもない。
 競争力の無い酪農家が淘汰されないため、どうしても低品質品が混じるからだ。

 ちなみに、海外では極く普通に流通している低温殺菌(Low-Temperature Long-Time pasteurization)タイプは、湯煎型の2重鍋(少量生産)か、プレートやチューブ等で30分間65度加熱処理するだけである。雑菌が少ない原乳なら、これで十分である。
 おいしい牛乳のために低温殺菌するというより、低温殺菌は日保ちするからとも言える。低温処理なら乳酸菌がそこそこ残っているから、高温処理より、流通過程で雑菌の混入/繁殖がしにくいのだ。

 自称エコ派は、海外で普及している低温殺菌を日本でも行えと主張するが、酪農家の原乳の質が変わらない限り難しい。


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