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2004.3.24 |
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アサクサノリの問題…海苔産業は相変わらず既存業者への手厚い保護が続いている。輸入は割り当て制で、「需要枠」が主体である。(1)既存産業構造を守るだけの政策しか打ち出せないようだ。 このような産業の最悪の動きとは、単純なコスト削減に走ることである。もちろん、大胆なコスト削減が可能なイノベーションに挑戦するなら意味があるが、いままで避けてきた合理化を少しでも進めたところで、意味は薄い。多少の合理化で競争力がつくとは言い難いからだ。 しかし、生産者にしてみれば、小さな合理化でも、保護されていれば、すぐに利益に繋がる。一生懸命になるのは当然のことである。このニーズに応えて、周辺が動く訳である。 これが、生産者保護策が無駄に終わる元凶だと思う。意味の薄い努力が行われてしまうからだ。 生産者が行うべきは、大胆な新技術開発か、安価な海外産を凌駕する、誰にでもわかる魅力を作ることである。 ・・・と言うと、誰でもが、そんなことはわかっており、ずっと行ってきたと語る。 ところが、「皆やっている」と語ること自体がおかしなこと、と思わないのである。ここが一番の問題である。 「国産」の特徴など、包装に日の丸をつけるだけの話しだ。こんなものは魅力にならない。 はっきりわかる差別化を実現したいなら、養殖している海と気候に適合する独自の「種」を提供する必要があろう。こうなると、魅力を打ち出せる勝ち組みと、できない負け組みが発生する。皆で、特徴など出せる訳がないのである。 当然ながら、消費者にとっては、主張が無き国産品より、安い海外品の方があり難い。負け組みには消えて頂くしかない。 ところが、今もって、海苔産業は、産地や種について、特徴を語ることがタブーになっている。 素晴らしい産品を提供し、高収益を誇る、国際競争力を持つ産地を作るつもりが無いのである。それよりは、コストパフォーマンスの悪い産地を生き延びさせることが重要なのだ。 こうした方針への批判はタブーなのだろう。 例えば、有名海苔店が提供している品種解説を見ると不思議なことに気付く。(2) 海苔の代表的品種は、スサビノリとアサクサノリがあるとのことだ。 前者は比較的塩分の高い外洋性漁場、アサクサノリは河口域など塩分のうすい水域で、養殖されるとされる。両者は、全く違うものである。ところが、「製品になってしまうと両者の区別は困難」と記載されている。 区別が困難なのは、製品に種名を記載しないからである。見かけ上同じでも、全く違う製品を、同じものとして販売するのが、この業界のやり方なのだ。知っていても、これを変えるつもりは無いのだ。 どの程度違うかは、はっきりしている。同じ頁に、はっきり書いてある。 スサビノリは製品の光沢、色彩にすぐれており、アサクサノリはうすくてやわらかくて味も良く香りにも富んでいる。どう考えても、全く違う品質である。 要するに、スサビノリは厚手で固めだから、食べれば硬直感が生まれる。水にも溶け易い。これに対して、アサクサノリは柔らかくてねちっこい。濡れても、丈夫なのである。用途で使い訳けすべきものであるのは間違いない。 この話しをすると、海苔の仲間の、小さな違いを拡大解釈している印象を受ける人もいるようだ。このため、この話しは立ち消えになってしまうようだ。 しかし、これは無知を放置しているだけの話しである。酷いものだ。 例えば、見かけ上同じ茸でも、毒茸がある。誰も、見かけが同じだからといって、放置しておく筈はない。 ところが、海苔産業界は、無知のままにしておきたいのだ。 繰り返すが、スサビノリとアサクサノリは全く違うものである。アオノリを、普通の半紙状の黒い海苔と同一視する人がいないのと同じことで、本質的に違うものだ。 両者は同じ「属」というだけである。 しかし、苺「属」の農産品を、「種」で区別せず販売などできまい。見ただけで、全く違うものばかりだから当然だ。 ところが、この業界は、「種」が違っていても、そうしたくない。 一般商品名の「浅草海苔」で売りたいためである。 確かに、スサビノリの名称では売れ行きが落ちる可能性があるから、わからないことはない。しかし、そのような姿勢は、品質基準の曖昧化を招くだけである。確実に市場は乱れる。自分で首を締めているようなものだ。 そんなことは、業界人なら常識だと思う。 実際、海苔/貝業界紙を眺めると、どうすべきかのヒントはとっくの昔から掲載されている。 素晴らしい日本発の「牡蠣」品種が高級品として米国市場を席巻しているとの新春コラムが登場しているのだ。(3) 何をすべきか、わかっている人は多いのである。 日本でも、小売り現場を見れば、牡蠣の産地表示がされている。しかし、品種表示までは進んでいない。品質は価格でしか判断できないのである。小売り業者が勝手に格付けしているとも言える。 これでは、生産者による製品の差別化は難しい。生産者が自らの製品の価値を明示できるツールを持つ必要があろう。その第一歩は、品種の違いを際立たせることである。 この観点では、海苔は0点である。しかし、牡蠣にしても、たいして変わらない状況といえよう。 この状態を何時まで続けるつもりなのだろうか。 --- 参照 --- (1) http://www.meti.go.jp/topic/downloadfiles/nori.pdf (2) http://www.ohmoriya.com/kibun4.htm (3) 全国海苔貝類漁業共同組合連合会「海苔タイムス」1998年1月1日掲載:「アメリカで名を上げた『熊本ガキ』の話」 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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