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2004.8.6
 
 


塩問題…

 2004年7月21日、海外原産の塩を日本の海水に溶かして再生加工したものを、国産品と銘打ち販売していたとして、9社に対して公正取引委員会が警告を行った。(1)
 以下のようなイメージを持つことで成功を収めた製造/販売業者が対象だ。よく知られたブランドを持つ企業もある。
 ・ 瀬戸内海が持つ塩田 (赤穂市と愛媛県伯方町の企業各1社)
 ・ 沖縄の海 (沖縄県の企業5社)
 ・ 高級食提供 (藤沢市の企業グループに属す2社)

 なかには、重油燃料であるにもかかわらず「薪炊き仕込みで丁寧に仕上げた」と表記されているという。

 どうせそんなもんだろうと思っていた人達にとっては、ようやく公取が動いたか、といった程度の印象に過ぎない事件である。

 と言うのは、供給能力を考えれば、手作り国産商品が至るところの店の棚に並ぶ筈がない、と考えるからである。
 もともと、統計にも、「国内産のうちの特殊用塩、特殊製法塩のなかには、外国産の塩を受入れて国内で製造したものも含んでいます。」と記載されている。(2)
 海外原料再生の国産品が広く通用しているのは昔からのことで、驚くようなことではない。

 ビジネスマンが、ずらりと並ぶグルメ商品群を見て、「精製塩に不純物を混ぜれば高額商品になるのですな。」と、小売り担当者に皮肉をぶつけていた位である。

 おそらく、公取が登場したから、小売り業界は、騙されたという態度を示し、何らかの「真摯」な姿勢で対処することになる。
 しかし、ビジネスマンに言わせれば、まともに商品を勉強しているなら、似非商品を並べる筈がないと考える。
 口には出さないが、食品の虚偽記載の元凶は日本の小売り業界の体質にある、と考えるビジネスマンは多いのだ。

 日本の小売り業界は、売れそうな商材は、どうでもよいから並べろ、と供給者側に強く要求する。しかも、欠品を恐れる体質と、明瞭な契約ではなく、慣習を重んじる商取引が根底にある。要求に応えられない供給者に対しては、商取引を切る可能性が示唆される。取引関係を守りたいなら、不可能な要求に応えるしかないのである。

 ・・・といった、業界の問題もさることながら、圧巻は、素材を重視する「食通」の態度といえよう。
 こうした似非国産塩を、流石に国産は味が違う、として賞賛していた自称専門家がいる。素材重視と語るが、実はイメージ重視なのでである。
 最終の食品そのものなら、デザインの嬉しさや、食シーンの喜びもあるから、イメージ重視には意味もある。しかし、塩は素材である。ここに素材内容とかけ離れたイメージを持ち込まれたのではたまったものではない。このような専門家には退席願いたいものである。

 一方、本当の専門家の意見はほとんど目立たない。無視され続けていると言ってよいだろう。

 実は、135種類もの市販品が分析され、その結果は業界団体から公開されているのである。(3)
 データを見れば、様々なことがわかる。例えば、同じ処理方法にもかかわらず、成分が大きく異なる商品がある。原料が他とは大きく違うのではないか、と想定される。

 先進的な小売り業を営もうと考えるなら、本来は、こうしたデータを見て、販売方針を考えるべきだろう。
 例えば、精製装置に使われている銅が溶解している可能性が指摘されている。なかには、不純物のなかに、重金属が検出されている商品もある。小売りなら、こうした商品に対して、販売中止といった決断もできる筈だ。
 しかし、このような動きを見かけたことがない。

 どう見ても、消費者の購買代理店となろうとの発想が欠けている。本気で、素晴らしい素材を提供しようと考える小売り業者は少数派なのである。

 このような状態が続く限り、本当の「グルメ」が日本に育つとは思えない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.july/04072101.pdf
(2) http://www.shiojigyo.com/data/data01_00.html
(3) http://www.shiojigyo.com/data/data06_02.pdf


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