↑ トップ頁へ

2004.9.3
 
 


秋刀魚の刺身への期待…

 秋刀魚が豊漁で値崩れを起こしているそうだ。
 全国の水揚げ量が基準を大幅に越えたため、漁協は休漁して対応している。(1)

 安価なさんまは有難いが、漁業が成立しなくなれば、高級魚になりかねないから、需給が上手くいけばよいのだが、なかなかそうはならないようだ。
 漁獲可能量(TAC)を定め、これに合わせた漁業を進める体制(2)はできたが、自然は都合のよい方向には進んでくれない。
 どうも、昨年同様の豊漁になりそうだ。

 冷凍ものが年中あるから、よくわからなくなっているが、捕りたてのさんまが市場に登場するのは6月末ころだ。調査用のものが出回るわけである。初物は、1尾1,000円を越えるが、本格的な入荷が始まればすぐに200円位になるし、豊漁だと100円を切る。今時、これほど廉価で楽しめる魚は無い。

 旬の、脂ののりきった美味しさは、9月頃の北海道東沖モノで味わえる筈だと思う。しかし、回遊魚だから、南下してくる。お蔭で、12月の銚子沖産まで十分楽しめる。素晴らしい魚である。

 本来なら、さんまの消費拡大を図るべきだと思うが、漁業全体では安価に流れるから、力が入らないように見える。残念なことだ。

 というのは、さんまは良質の蛋白質である上、DHAやEPAの含有量が多いからだ。しかも、美味しい。さんまは、極めて良質の食材といえよう。
 このメリットは、かなり理解が進んでいると思われる。実際、家計統計を見ても、さんまの購入数量は着実に増えている。

 ところが、その割には、レシピの広がりは乏しい。加工品といえば、昔からの、「ひらき」だ。関係漁協以外、市場拡大を図ろうと考える人は少ないのかもしれない。糠漬、味噌漬、味醂干の類が登場している程度のようだ。(3)

 イベントも低調である。
 「さんまの日」さえも、全国規模で、あるのかないのか、はっきりしていない。

 とはいえ、9月12日には「目黒のさんま祭り」(4)(目黒区版ではなく、品川区目黒駅前版の方)が開催される。落語と、5000尾の新鮮・炭焼きさんま食べ放題がウリで、楽しいものだ。人気が集まり、すでに第9回を数えている。
 しかし、さんまのレトロイメージを固定化するものと、言えないこともない。さんまの市場拡大方向に確実に繋がるとは言いきれない感じがする。

 本当なら、さんまブームがあってもおかしくないのだが、火をつけたくない人が多いのかもしれない。高額セグメントの魚や、肉の業界から見れば強力なライバルであり、さんま市場の伸張は、産業基盤を揺るがしかねないとでも思っているのだろうか。
 とはいえ、さんまの刺身が急速に浸透すれば、この状況は変わると思われる。加工もさほど難しくはないようであり(5)、鮮度維持技術がこなれてくれば、全国津々浦々まで刺身加工品が並ぶ可能性が高い。

 さんま市場が思ったほど伸びないのは、塩焼きがメインだからである。塩焼きは、便利さの点から大ぶりの生さんまは敬遠されがちになる。荷姿は4kgか8kgだから、1箱20尾になってしまうと、単価が低いから、輸送費用を購入している商品になりかねない。このため、売る側も、買う側も、嬉しい商品ではないのだ。価格を度外視した集客用の「商品」にされ易いのである。これでは、商品価値は下がるし、イメージも悪くなる。ここから脱却すれば、状況は一気に変わる筈だ。
 その切り札が、刺身である。

 なんといっても、重要なのは、味だ。
 さんまの脂肪酸が舌の味細胞にある受容体と結合し、βエンドルフィンを分泌させることがわかっている。これは脂のお蔭で人気がある高級食材と全く同じである。(6)
 というような理論は、実は無用で、刺身を食べれば、すぐ実感できる。人気沸騰は時間の問題だと思う。

 豊漁での値崩れは、実はさんまの刺身普及の一大チャンスでもある。

 --- 参照 ---
(1) http://www.asahi.com/national/update/0824/016.html
(2) http://www.samma.jp/tac.htm
(3) http://www.ecbugyo.com/jf_kushiro/
(4) http://www.asahi-net.or.jp/~xq7k-fsm/sanma.htm
(5) http://www.gyokyou.or.jp/recipi/sannma/res-a.html
(6) http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040828ddm016070035000c.html


 「食」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com