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2005.7.19
 
 


油脂科学の時代…

 「日本人の食事摂取基準量(2005年版)」(1)は2005年から5年間使うことになっている。

 前回の「第6次改定」(2)では、“従来は栄養欠乏症の予防を主眼としてきたが、過剰摂取への対応もできる限り考慮し”たとの言葉だけで、ほとんど現状で問題なしという意見といってよいだろう。
 最新の知見と取り入れたと、どうして言えるのか疑問の答申だった。
 と言うより、どうして食事摂取に問題が無いと判断したのか、合点がいかない代物だった。

 油脂栄養学が進んでいても、この分野にハイライトを当てたくない人が多かったのだろうか。

 今や、食については自由な選択ができる時代である。食で健康を保とうと考える一大潮流が発生しているのに、“食事摂取基準”だけは一昔前の発想がまかり通っていた訳である。

 流石に、2005年版では油脂栄養摂取についての記述が入った。

 どうなっているかといえば、(2)総脂質、飽和脂肪酸、n=6系脂肪酸、n=3系脂肪酸について総エネルギーに占める割合の目標値が上限と下限で示したのである。
 そして、コレステロールを摂取しすぎないように、上限目標量も示されている。

 すべての栄養素をできる限り同じパターンで表示するように工夫したということなのだろうか。

 う〜む。

 この程度のガイドラインでよいのだろうか。

 今や、栄養摂取に関する知識の普及にたいして時間はかからない。
 国民は無知どころか、日頃から、よく勉強しているからである。

 最近も、スーパーの棚からあっという間に寒天製品が消えたので驚いた。健康情報には人一倍敏感な国民と言ってよいだろう。

 油脂にしても、EPAは血栓を起しにくくするし、DHAが精神疾患防止に良いという話は広く知られているようだ。そのため、いわしの丸干しとサバの水煮缶詰は日本では絶対に廃れないと語る業界人がいるくらいである。
 (可食部分で両者ともに高含有率で、食事量も多くなる魚介類としては、この2つに優るものはないそうだ。但し、沢山食べるなら、あん肝がピカ一で、筋子も結構いけるそうだ。)

 もともと、魚介類を食べている人の死亡率が低いとの疫学調査は古くから話題になっていた。
 高齢化社会化が進めば、こうした現象を説明できる油脂科学に期待が集まるのは当然である。
 死亡原因の最大分野である脳・心循環系疾患と癌、それに痴呆まで予防できそうなのだから、そのうち学術報告もすぐに衆知のものとなるかもしれない。

 これからの、栄養のガイドラインはこうした油脂科学の進歩に遅れずに対応していく必要があろう。

 すでに、脂肪酸バランスの重要性はあちらこちらで語られている。
 n=3、n=6のバランスだけでなく、炭素数18と、20/22で分けた4種バランスを見るべきというところまできている。(4)

 こんな知識が広がっているのは、「健康によい」とされてきた油脂を過多に摂取したおかげで免疫反応が上手く働かなくなっているとの主張に説得感が生まれているからである。

 要するに、循環器系の疾患や、アレルギー疾患などは、昔はそれほど感じなかったのに、ここまで大事になっているのは食生活が原因だと皆が感じているのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2.html
(2) http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9906/s0628-1_11.html
(3) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/dl/h1122-2b.pdf
(4) http://efaeducation.nih.gov/sig/dietbalance1.html
  解説 http://efaeducation.nih.gov/sig/beginner.html


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