↑ トップ頁へ |
2006.7.5 |
|
|
地大根は残るか…
昔から、大根はお供え物や、ハレの日の料理に登場する。野菜といえば、大根しかなかったようなものだから、日本全国、大根には思い入れがある筈だ。なにせ、仁徳天皇の歌にまで登場するくらいである。(2) そのせいかは定かではないが、それぞれの地方で品種改良が行われており、品種の数は、100を軽く越す。形で分類するだけでも、50種ある。(3) 東京をとってみても、練馬、亀戸、大蔵、荒川地区からそれぞれ別な種が出荷されていたのである。 こんな国も珍しいのではなかろうか。 素人には、どうなっているのか、さっぱりわからぬが、種苗会社によると、16種ほどの系列に分類できるようだ。(4) もっとも、これだけ沢山の種類があっても、流通しているタネは意外と少ないようである。 今や、日本全国、大根といえば、青首総太大根。他は僅か。 了徳寺さんにしても、地物の鳴滝大根かと思ったら、亀岡産の青くび大根だそうである。 全国一律化を悪く言う人もいるが、青首が広がるのは当然である。 栽培し易く、スも滅多にできず、安定して取れるからである。昔の大根は、引き抜いても商品にならないものが結構あったが、青首ではそんな話を聞いたことがない。生産性抜群である。 それに、そもそも、大根は引き抜くのが重労働である。力まかせに引くと、もげたりして、恐ろしく厄介な品種が多かった。青首のような楽なものは他にない。 しかし、青首全盛をよしとしない人も多く、地大根ブーム(5)はまだ続いているようだ。地大根復活の動きは全国で見られる。 これはこれで結構なことだが、地大根を用いる地域独自の食文化が消えているのに、地大根だけ復活させるのはアンバランスな感じがする。 素人が見る限り、大根の種類にこだわりがありそうなのは、京都と信州だけと言うと、言い過ぎだろうか。 前者は、季節と用途に合わせて適切な種を選ぶ習慣が未だに残っているようだ。そのため、そのニーズに対応した地大根が残っていそうだ。 一方、後者は、蕎麦が好きな土地柄だ。流石に、蕎麦生産は細ったが、蕎麦食の習慣は消えないどころか、盛んかもしれない。この食にとって、辛味大根は不可欠である。このこだわりのお蔭で、地大根の生産が続いてきたのだと思う。 これ以外の地域で残っている地大根とは、漬物原料が多い。京都にしても、大根食文化が残ったのは独特の漬物のお蔭かもしれない。守口大根人気も、守口漬あっての話だろう。 地大根を用いた漬物が愛されていれば、自然と大根も残るというだけの話である。 練馬大根が消えたのも、昔ながらの沢庵人気がなくなっただけの話だと思う。安価な塩漬けを輸入し、塩抜き後、調味液に浸すタイプが好まれれば、廃れて当然だ。もっとも、完全に無くなることもないと思う。沢庵1本\1,000(6)でも食べたい人は残っているからだ。 要するに、こんな「食」ファンを作れるかが、地大根ビジネス振興の鍵だと思う。 世界一の大きな大根といった「材」としてのウリだけでは、先細りになりかねまい。 都会人は興味本位で様々な食材を試す。そのため、プロモーション費用をかければ、それなりの販売額は達成できるかも知れぬ。 しかし、「食」として、琴線に触れる特徴がないと、一過性に終わる。地大根もそうなりかねない。 地大根復活にかけるより、地域の食文化を再考し、そのウリを見つける方が先ではないかと思うが。 --- 参照 --- (1) http://www.ryoutokuji.or.jp/daikon/webpagem/daikodaki.htm (2) 仁徳天皇が山代の国に入った皇后に贈った“恋”歌 留守をいいことに, 八田若郎女と戯れていたが, 知られてしまう. 皇后は戻らず, 実家に. こまった天皇は歌で仲直りを図る. 結局のところ, 八田若郎女が皇后になるのだが. 都藝泥布 夜麻斯呂賣能 許久波母知 宇知斯意富泥 佐和佐和爾 那賀伊幣勢許曽 宇知和多須 夜賀波延那須 岐伊理麻韋久禮 http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40013169&VOL_NUM=00002&KOMA=84&ITYPE=0 (3) http://www.mint-j.com/yaoya/2003/09/daikon.html (4) http://www.takii.co.jp/tsk/hinmoku/ada/p2_bdy.html (5) 2004年10月, 東京農業大学「食と農」博物館に地大根を集めた「大根フェスタ」が開催された. 記念発刊本: 東京農大/良い食材を伝える会監修「考える大根 大・根・読・本」東京農業大学出版会 2005年 (6) http://www.asajirou.net/goods/1001.html 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2006 RandDManagement.com |