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2007.4.26 |
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蒸しパンの話…2006年4月、熱海のスーパーマーケットの惣菜コーナーの一角に、硝子越しに見える食品製造設備が設置された。「蒸しパン」の製造直売が始まったのである。名前はパンだが、焼き立てベーカリー店とは別。蒸しパンと聞くと、昔、流行った商品を思い出す人もいるのではなかろうか。 そう、1990年に発売された「チーズ蒸しパン」である。 北海道のパンメーカーが大ヒットをとばし、全国的に有名になった商品だ。しかし、この商品をテコとした首都圏展開は上手く行かず、本州から撤退してしまった。一品がヒットしたからといって、簡単に経営の柱にすることができないのが、この世界である。 蒸しパンにビジネスチャンスありとなれば、商品開発競争が一気に激化し、販促活動も活発になり、熾烈な競争に巻き込まれるからだ。なにせ、僅か5年で、少なくとも136品もの新商品が登場したらしい。(1) 今でも、その状況は余り変わっていないようで、新しい蒸しパンは次々と登場する。「あいとサリーのなかよくたまご蒸しケーキ」、「頭脳あずき蒸しパン」、「抹茶蒸しケーキ」、「よもぎむしパン」、「お米蒸しケーキ 抹茶」、・・・(2) 菓子パンビジネスは商品開発が大変なのである。 この商機を逃さず、定番商品に仕上げることに成功したのは、結局のところ大手パンメーカー。包装に北海道の絵柄をあしらった「北海道チーズ蒸しケーキ」の2006年12月半期売上高は21億円に達している。(3)練った粉モノを蒸すだけの単純な菓子を大型商品に仕上げたのだからあっぱれ。 おそらく細かい肌理を実現したのだろう。乳化剤技術と混ぜ方の管理が優れているということ。こんなことは、家庭では無理である。 名称もパンではなく、ケーキとしたセンスもなかなかのもの。 ただ、名称はケーキと洋風なのにもかかわらず、饅頭と同じ蒸しモノとして、和菓子カテゴリーに入っている。不思議な感じがするが、もともと、出自は家庭の素朴な菓子だから、正統な見方かも知れぬ。それに、和菓子にも、蒸しカステラというジャンルもあるし。 このようにメーカーは頑張っているが、これに対抗する蒸しパン専業店は滅多にお目にかかれない。手間ばかりかかる割りに、廉価な商品だからかも知れぬが。 よく見かけるのは、“玄米パンの、ホ〜カ、ホ〜カ”的なノスタルジックなシーンをウリにした副業的なもの。ただ、最近は、健康志向をウリにできるから、起業(4)も結構あるのかも知れぬ。 とはいえ、有名な専業店といえば、このスーパーの一角のお店と、車で販売している京都の「ロバのパン」(5)位ではなかろうか。 と言うと、スーパー内の商売がどうして有名なのか、と驚く人もいるかも知れぬ。しかし、このお店、地元では有名店なのだ。 実は、このお店、1930年創業で、スーパーの近くで開業していたパン屋さんなのである。この3月末に閉店し、スーパー内に移転して来たのである。 間違えてはこまるが、スーパーへの通り道に位置しているから皆に知られている訳ではない。古めかしい店構えで、店内も結構広いのだが、ショーケースや陳列棚に、さっぱり商品が並んでいないから、一度見たら忘れられないのだ。 それでなくても閑散とした雰囲気の店に、商品が無くガランとしているので、初めて見た人は店仕舞かと心配になる。 ところが、これが、このお店の一番の特徴でもある。午前中に規定の個数を蒸しあげ、これを売り切ると商売終了。しかも、熱海という地にありながら、日曜・祝日はお休み。 およそ商売っ気がないお店という訳。 にもかかわらす、商売が成り立ったのは、商品力があるから。 美味しい上に、種類が矢鱈と多いのだ。なかでも、栗蒸しパンは一度食べると病みつきになるらしい。 なにせ、予約して、一度に100個購入という猛者もいるから、その日の状況によっては、入手できないのだ。品薄なのが、またまた人気を呼ぶのである。 そんなお店が何故スーパー内に移転したのか、不思議だった。 しかし、ニュース記事(6)を読んで合点がいった。 記事によると、2代目が病気で仕事ができなくなり、長男の歯科医が、早朝だけパン屋の仕事をして、どうにか続けてきたそうだ。 そこで、従業員も含めて、大手スーパーがこの事業を引き継くことになったのである。(7) マネジメント力がある全国区の企業に、地場の食品ビジネスをまかせ、ビジネスの飛躍を図るパターンだ。 この手の動きがもっと生まれてもよさそうな感じがするが。 --- 参照 --- (1) 「蒸しパンリスト 1995年頃まで」(136品) http://www.geocities.jp/living_with_plasma/food_bread.html (2) 「にゃーこの菓子パン日記 2007/04/20」 http://konasu.blog12.fc2.com/index.php?q=%A1%FD%BE%F8%A4%B7%A5%D1%A5%F3%B7%CF (3) http://www.yamazakipan.co.jp/ir/ir-library/kessan_siryou/html/20060807/pdf/all.pdf (4) ムッシュムシパン(阿倍野王子商店街) http://monsieur-musipan.com/ (5) http://robanopan21.hp.infoseek.co.jp/menu.html (6) “けいざい・しずおか:熱海名物「ほていやの蒸しパン」復活 /静岡” 毎日新聞 [2007.4.12] http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/shizuoka/archive/news/2007/04/12/20070412ddlk22020325000c.html (7) http://www.mv-tokai.com/topics/documents2/20070328hoteiyamushipan.pdf 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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