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2007.6.12 |
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出汁のとり方…日本食とは、ご飯とお味噌汁に、魚と野菜の料理というのが基本だと思うが、何が一番の決め手かといえば、出汁ではないだろうか。この旨さは、知ってしまうと捨てがたい。 しかし、その嬉しさがわからない人が増えているようだ。出汁を美味しいと感じなくなっていなければよいが。 もっとも、そうなるのも致し方ないかも知れぬ。外食・昼食産業がまともな出汁を使おうと考えても、手間はかかるし、ただならないコストになるから無理なのである。 と言うことで、調味料業界が色々と工夫しているが、本格的な出汁と工業製品では、まだまだ相当な差があるようだ。 ・・・と言うことで、出汁を作らない理由を考えてみた。以下の4段階だろうか。 (1) 本格的な出汁は驚くほど美味しいとの認識が確立している訳ではなさそうである。 体験しなければ、わかるまい。 (2) 本格的出汁を楽しむ方法についての知識が不足している。 ウエブを眺めると、情報は膨大だが、微妙に方法が違う。 つまり、どうすると美味しくなるのか、納得ある説明がされていないということ。 理由がわかっていないのだから、べストな出汁を作っていない人も多かろう。 (3) 実際に出汁つくりを行う気力がわかない。 理屈では、どうすれば美味しい出汁を味わえるか、一応知ってはいる。 しかし、手間をかけてまで嬉しさを求めたいとは思わないのだ。 このことは、官能で嬉しいのではなく、頭で考えた嬉しさということ。 (4) 美味しいので欲しくなることもあるが、お金がかかるし、時間も割かねばならない。 そこで、滅多なことでは出汁を作らない。 (1)については、まあ致し方ないが、(2)の知識不足はこまったものである。 ウエブを眺めると、これが一番の問題という気がした。出汁のとり方は微妙に違うのである。調理だから、人によって違ったところでかまわないが、これでは、どうしてそんなやり方になるか理解できまい。 つまり、本当に美味しい出汁とはどんなやり方がよいのかわからずに、出汁を作っているということだ。これでは、感激するような味は出せまい。 そこで、家庭向けの、お勧めの出汁のとり方を考えてみた。 先ずは、昆布出汁。 準備については、どの解説も、ほとんど変わらない。 <昆布の質> 良質[一級品]の“出汁”昆布を使う。 「真昆布」が良いが高価。もし、安価だったら、おかしいから避ける。 「利尻」の良質な商品がコストパフォーマンスがよいようだ。 <昆布の使用量> 予め決めておいた使用分量[例えば, 水1カップに面積“5cm x 5cm”]の昆布を使う。 <容器の材質> 容器は金属イオンが出ないもの[陶器、ステンレス、琺瑯、等]にする。 <水の質> そのまま飲んで“美味しい”無味無臭の軟水を使う。 <昆布の前処理> 昆布の表面についている砂や泥汚れは、軽く湿った布巾で軽く拭く程度に抑え、できる限り材料のまま使う。 表面の美味しさ成分の白い粉を落とさないようにする。 <昆布の大きさ> 昆布が水からとび出したり、互いにピッタリと重なり合わないように入れる。 大きさが合わないなら、鋏で切断して適当な大きさにする。 <水への浸漬> 昆布表面に気泡がつかないように注意して水に浸ける。 ここまでは、納得できる。 ところが、この後の旨み成分抽出でやり方はいろいろ。 理屈で考えると、こういうことではないのかと思う。 水に浸漬すれば、昆布の旨み成分は自然と溶け出す。ただ、時間がかかる。 しかし、余り浸漬しすぎて、昆布がどろどろしてくると、不味い成分が混在してくるから、要注意である。 そして、昆布の組織は熱には弱いから要注意。 従って、冷水なら3時間も入れておけば昆布出汁は完了する筈だ。温めの水なら1〜2時間で済むだろう。 しかし、この方法には問題がある。使用する昆布の厚さや質が一定ではないからだ。そうなると、完全に抽出しきれなかったり、一部どろどろ化が始まってしまうかも知れない。そうなってしまったら遅いから、お勧めの方法ではないということ。 そこで、温度を上げ、短時間に抽出する方法が一般的になっているだけのこと。繰り返すが、昆布の組織が壊れると台無しだから、そうならないように温度管理には注意が必要である。 まず、水に浸漬して予め表面を柔らかくしておくことが肝心。水温にもよるが、10〜20分で十分。もちろん、長く漬けたところで問題は生じない。ただ、1時間を過ぎるなら、そのまま水浸漬に徹した方がよかろう。 表面に水が滲みたら、水温を上げる。もちろん低温抽出に徹するべきだ。気泡が出たら加熱を抑えるとの記載が多いが、気泡などでない低温でもかまわない。要は、昆布が十分柔らかくなればよいだけのこと。加熱時間や、細かく温度を調整する必要はない。 ともかく高温厳禁。煮沸など言語道断。そして、旨み成分が出たな、と思ったらすぐに昆布を出すこと。不味い成分の混入を防ぐ上で、これが極めて重要である。 料亭はこんなやり方ではない。そこには別の理屈があるのだろう。 鰹節も同じ発想で出汁をとればよい。 こちらは削るといたく酸化し易くなるから、削りたての良質品を使うことが肝要。決まった量[例えば, 水1カップに4g]を使おう。 昆布出汁に浸漬すれば、同様に旨み成分が出てくる。投入は、昆布出汁に水を少量加え、液体が静かになってから。液面全面に広がるように削り節を投入し、自然沈下を待つ。塊にならないように気をつかうだけのこと。 理屈では、このまま放置してもよいが、鰹節は昆布と違って硬いから、とてつもない時間がかかる。それに、灰汁がでてくる。 そのため、沸騰させる。沸騰して泡が出たら、これを掬って捨てることを怠ると、灰汁の味で美味さ半減。 当然ながら、沸騰時間は短い方がよい。2分を越えないようにしたい。 そして、すぐに漉すこと。この時、味や香りが変わらないように、道具にも注意を払おう。[例えば, ステンレスの網にコットンペーパー]それに、削り節を押さえたり、絞ったりして汁を出さないこと。こんなことをすると、雑味が混じる。 これだけで、素晴らしい一番出汁を味わえる。 もったいないから、二番出汁もつくるが、面倒と感じる人もいるかも知れぬ。 そんな人は、上記の作り方を避ける方法もある。 一気に出汁を作る迅速型。邪道と言われればその通りだが、家庭用ならこれで十分。 重要なのは容器。といっても難しいことではない。縦長で蓋ができる小振りの陶器でよいのだ。 後は、この容器の要領に合わせた分量の昆布と削り節を入れるだけ。そして、この中に、沸いたばかりの熱湯を一気に注いで、蓋をして数分待つ。もちろん、すぐに、ストレーナーで濾す。これで完了。実に簡単である。 言うまでもないが、灰汁をとらないから雑味がでる筈。しかし、量が少ないからほとんど感じない。沸騰させないから、不味い成分が入る可能性も少ない。最高のやり方ではないが、十分美味しい出汁ができる。 お茶を飲むような要領で、美味しい出汁を味わうのもお洒落だと思うのだが。 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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