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2007.7.31 |
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蕪の話…スーパーで蕪が無い時がある。 どうも、大根に駆逐されつつあるようだ。と言っても、サラダ生食用のミニラディッシュは必ず陳列されているようだが。 蕪の葉の、あのなんともいえない苦味の美味しさは、他の青菜では得られないと思うが、最近の味覚には合わないのだろうか。まあ、葉がすぐに痛むから、流通に嫌われているのかも知れぬ。
種苗カタログにも、見かけない品種が結構揃っている。 このことは、大根と違って、まだかなりの品種が残っているということかも知れない。それに、野沢菜のように、蕪とは気付かないものもあるし、ミニ大根として食べられている蕪もありそうだ。 ここまでしぶとく残ってきたのは、この野菜、結構優れものだからである。 諸葛孔明が兵糧用に栽培を奨励したとの話が蕪の説明によくでてくるが、一理ある。 ・どこでも、いつでも、効率的に作れる。 -どの季節でも栽培できる。 -土壌を選ばない。 -短期間で成長する。 ・すぐに食べられる。(発芽が早く、間引きできる。) ・根、茎、葉の全てを食べられる。 ・調理が簡単である。(生でも煮ても食べられる。) ・保存がきく。(漬物に向く。) こんな利点があっても、それは兵站では意味があるが、現代農業としての生産性では、大根にはとても勝てないということなのだろう。 ところで、蕪の面白いところは、様々な品種があるが、大きく2種類に分かれるという点。種を水に漬けて皮を膨潤させると、膨らむタイプと、そのままのタイプがあるそうだ。 前者はアジア系(アフガニスタン型)、後者は欧州系(テルトウ型)なのだという。(1) こんな話をきくと、日本はほとんどがアジア系だと思ってしまうが、それは西日本にしか当てはまらない。東日本は欧州系なのだ。西日本の“かぶら”と東日本の“かぶ”は、言葉だけでなく、発祥も違うらしい。 その分布の境界“カブライン”が、ほぼ富山から愛知に走っているという。(2) ただし、アジア系蕪が北海道道南にポツンとあったりして、その昔の近江商人との昆布交易を彷彿させる。 ここまでなら、ふ〜ん、で終わるのだが、欧州系が中国には無いと教えてもらうと、思わず息をのむ。 しかも、野生に近い欧州系「佐波賀蕪」が、日本海沿海地方に残っているのだ。(1)それも、欧州系の多くは山間部に伝わっているのである。農法は焼畑。 どう見ても、歴史は古い。 飛鳥時代のはるか以前に、シベリアから東日本に伝わったと解釈するしかない。これが、どんなルートだったのか、誰が何のために交流したのか、実に気になる。 蕪は、地域毎に品種があると見てよい位、多種多様。各地方で好みに合わせて改良された野菜であるとともに、その地域の土、水、気候でのみ生きられるような植物になっている可能性も高い。 上記の表にしても、今や種だけで存続している品種が多い。地域の文化を大切にしたいなら、名産蕪の生産は続けて欲しいものだ。 --- 参照 --- (1) 相馬博士の作物百科 カブ http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/kabu.htm (2) 山口聰: 「池川の焼き畑で発見した菜の花とカブについて」 http://web-seisan.agr.ehime-u.ac.jp/Dr.Yamaguchi/YakiIke2006Sympo/IkegawaYakihataReport.pdf (3) [品種例の参考にした図] http://alic.vegenet.jp/panfu/kab/kab.htm (川柳の出典) 「常識革命のインターネット」 川柳の広場 http://home.j04.itscom.net/fukuda/senryu/a04_hisagi/hisagi.htm (蕪のイラスト) (C) お花のアイコン館 http://flower.girly.jp/ 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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