↑ トップ頁へ

2007.9.4
 
 


山芋の話…

鵙高音 自然薯を掘る 音低く  高浜虚子

 ヤマイモとは、畑で栽培している長い山芋を指す。これは、山に自生している自然薯を栽培品種化したものではなく、中国から伝わってきたものだそうだ。
 自生種は、日本原産。当然ながら、縄文の昔から食べられていた。この野生芋は、猪君の好物らしいから、ヒトと取り合い。どちらが有利かはいわずもがなだが。
 このご時世、自然薯が簡単に採れる訳がないが、自然薯を使った料理はあちらこちらで見かける。そこで尋ねると、産直の栽培モノだという。

 う〜む。
 まあ、野生種のムカゴ(零余子)を採取して育てたから、自然薯ということなのだろう。

〜 山芋の種類 〜
- 形状 -- 品種 -
細長自然薯
長芋
扁平銀杏芋
捏芋
・伊勢芋
・丹波芋
・加賀丸
 どうも山芋の世界、昔から名前にはいろいろと混乱があるらしい。(1)

 例えば、三味線の撥のような形の芋を、東京では「大和芋」と呼んでいるが、関西では塊状のものを指すという。大和地方の特産品だったのだろうから、関西流名称が正統な感じがする。
 長芋は簡単に栽培できるが、“とろろ”として食べるなら銀杏芋 の方が肌理が細かく滑らかなので上物ということで、「大和」になったのだろうか。
 ともあれ、呼び名が同じなのに、モノは違うのだから厄介だ。

 山芋と言うと、“鄙びた山里の食”のイメージがつまとうが、もともとは高級品で全く逆である。
 芋粥は“無上の佳味として、上は万乗の君の食膳にさへ、上せられた。従つて、吾五位の如き人間の口へは、年に一度、臨時の客の折にしか、はいらない。その時でさへ、飲めるのは僅に喉を沾すに足る程の少量”(2)というのだから。

 考えてみれば、捏芋(つくねいも)は、“上等品”と見るべきものかもしれない。
 “つくね”と言うのは、潰して練る意味だが、薯蕷饅頭(上用)(3)や軽羹(4)のような和菓子の原料になるということ。昔は、このようなお菓子を食べられる人は限られていたのは間違いあるまい。

 --- 参照 ---
(1) 相馬博士の作物百科 ヤマイモ http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/yamaimo.htm
(2) 芥川竜之介: 「芋粥」 [青空文庫] http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card55.html
(3) http://www.meikatanbou.com/chi_/chi_w/w_s003.htm
(4) http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/food/kanmi/20041202sl11.htm
(山芋のイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm


 「食」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2007 RandDManagement.com