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2007.11.6
 
 


葱の話…

脇役は 大事斜めに 葱を切る  深藤本秋声

 葱は日本書紀に登場する位で、かなり古い時代に大陸から渡来したと見られている。(1)

 これほど古い野菜なのに、どういう訳か、欧州ではほとんど普及していない。
 その強い臭気から、呪術的な力があるとされ、神事や祭事に使われていたというから、宗教的に嫌われたのかも知れない。

 と言っても、禅寺の山門には、よく“不許葷酒入山門”と記載されており、仏教では葱は、肉と酒と並んで摂取禁止食物だ。
 確かに、無垢の心を目指す修行者にとっては、刺激性の食物は邪魔。
 しかし、煩悩の輩にとっては、酒同様、刺激性だからこそ欲しくなるということだが。

〜 葱の代表例 〜(1), 等
 - 根深葱(千住葱系) - 
黒柄一本葱/深谷葱
軟白葱
曲がり葱/錫杖葱
赤葱
- 根深葱(加賀葱系) -
下仁田葱
松本一本葱/札幌太
会津太/岩槻葱
- 葉葱 -
九条葱
博多万能葱
- 中間 -
岩津葱(兵庫県朝来)
越津葱(愛知県)
- 近縁種(野生) -
浅葱(アサツキ)
- 玉葱掛け合わせ -
ワケギ(分葱)
- 通称“西洋ネギ” -
リーキ[葱ではない.]
 それに、夏の強い日照に晒されながら、スクスクと成長する葱の強さに、感慨を覚える人も多かろう。ネギの気をもらいたいと考えるのは、極く自然な態度だと思う。
 その感覚が、萌葱色(もえぎいろ)や、浅葱色(あさぎいろ)になったのではなかろうか。

 ともかく、日本人にとっては、身近な野菜だったのは間違いあるまい。

 なにせ、昔は、八百屋の片隅に、どさっと束にして、大量におかれていた野菜である。
 これが、今や、包装され、一本売りが並ぶ状態。薬味用に美しく切ったパッケージに入りや、芽葱まである。見た目にも緑色が鮮やかな万能葱も年中おいてある。葱だというのに、航空便輸送シールがついたものを見かけたことがある。
 それに、根深葱にしてから、白色が透き通るような白になってきた感じで、軟らかくて細身で美しいものに変わっている。
 どう見ても、呪術用のお供えもだったとは思えない。ファッショナブルな野菜イメージが強まる一方である。

 こうなるのは、葱に思い入れがある人が多いということでもあろう。

 なにせ、東京には、料理屋相手の「葱商」と呼ばれる世襲の葱専門卸がある位。
 もちろん、その卸だけが参加する極上葱市場「山柏」もある。200年以上の歴史があり、葱商は葱を齧って目利きする毎日だという。(2)

 そんなところに目をつけたのか、“日本にはおいしい葱がある”というコピーで訴求するレストランチェーン(3)もあり、葱料理はお洒落なものになった。

 --- 参照 ---
(1) 故相馬暁博士(北海道立中央農業試験場長): ネギ http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/negi.htm
(2) http://doraku.asahi.com/earth/japan/seisan/060719_02.html
(3) http://www.kiwa-group.co.jp/restaurant/a100118.html
(川柳の出典) 『へぼきゅうり』 http://doraku.asahi.com/earth/japan/seisan/060719_02.html
(葱のイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm


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