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2007.12.18
 
 


山椒の話…

実山椒 勝手のちがふ ことなれば   石井優美子 “団栗”

 鞍馬の木の芽煮は昔から売られていたものとばかり思っていたが、明治の中頃に市販を始めたものらしい。
 ちょうど、山椒の商業栽培が始まった頃だ。
 それまでは、街は別だが、山椒を始めとして、紫蘇、茗荷、等は自宅の庭に生やすのが普通。それらを使う時にはその場で取っていたのだが、次第にその習慣が無くなってきたということでもある。山椒の香りがする商品には魅力があるとふんで始めたと思われる。

 鞍馬は、枕草子に登場するくらい有名な場所とはいえ、(1)参詣者で込み合うほどではないし、ましてや、佃煮を買い求めに行くような所ではない。ともかく商品化してみようと考えた程度のビジネスから始まったようである。・・・“山菜などは豊富にありましたから、それらを塩漬にして日ごろのおかずにしていたわけです。そして、それに多少の工夫を加えて、鞍馬寺詣での参詣客相手に細々と売りはじめ”(2)たという。それが、今では、鞍馬の山菜も不足がちになり、各地から仕入れている位だ。
 ブランド力のすごさを思い知らされる好例である。

 そもそも、山椒の木は、寒さに強く、日に当たるような場所なら、水やりを忘れなければ育てるのはそう難しくないらしい。どこでもできるのである。実際、日本での最大の生産地は鞍馬ではなく、蜜柑の紀伊辺りらしい。
 ただ、簡単とまではいかないのは、蜜柑系だからか、アゲハ蝶の幼虫に葉を食べられるからだという。見つけたらすぐに取ればよいだけの話ではあるらしいが。
 従って、素人でも肥料を与えて大事に育てていれば、若葉を愉しむことができるようだ。しかし、実まで愉しむのは簡単ではないそうだ。網をかけないと、鳥が喜んで食べ尽くすとか。
 小粒でも辛いというのに、鳥もそんな刺激を好むものだろうか。
 合点がいかないが。

 こんなことを知ったのは、本格的自家菜園をもっている人から、採り立ての実をもらい、チリメン山椒を作ってみようと考えたから。
 この商品、どういう訳か、結構値がはる。しかも、味と食感が合わぬものに出会うこともあり、それなら作ってみたい(正確には作ってもらいたいと書くべきだが)と考えたのである。残念ながら、実が入手できずかなわなかったので果せずにいる。山椒の実の瓶詰を使う手もあるが、これがどんなものかよくわからないから試してはいないといったところなのだ。

 もっとも、実をもらっても、実についている枝をしっかりと取るには相当な手間かもしれない。調理は簡単かも知れぬが、その前が厄介そうだ。
 実は、栗も頂いたことがある。最初は喚起雀躍ほどではないにしても、大いに嬉しかった。
 しかし、コレ2〜3時間の皮むき作業が必要なのだ。慣れない道具を使うので、指がえらく痛くなる。しかも、スーパーに並ぶ剥いた栗の値段を見ると、送料とたいして変わらないから、意気もあがらない。結局、3年で放棄した。
 実山椒でも、同じことになりかねないのは分かってはいるのだが、都会の住人は一回は挑戦してみたいのである。

 山椒といえば、このチリメン山椒にかかわらず、もっぱら薬味とか、ピリ辛の味付け用香辛料という印象。
 だが、よく考えれば、甘物にも使っている。切山椒だ。(3)
 紅白の鳥の子餅(素甘)の山椒入り変形版といったお菓子だが、それほど美味しいとは思えないのだが、未だに時節ものとして健在である。
 これが、時に、お茶と一緒にで出されたりする。
 そんな時は、部屋を見回せば必ず新しい熊手が飾ってある。そして、酉の市の話でひとしきり盛り上がる。縁起物のお菓子だが、話のタネにうってつけの商品である。
 鞍馬の木の芽煮の人気もそんなところがあるのかも知れない。

 --- 参照 ---
(1) 枕草紙 「近くてとほきもの」 [166段]
  宮のほとりの祭。思はぬ兄弟、親族の中。
  鞍馬の九折といふ道。十二月の晦日、正月一日のほど。
  http://etext.virginia.edu/japanese/sei/makura/SeiMaku.html
(2) http://www.kyomeibutuhyakumikai.jp/watanabekinomenihonpo.htm
(3) 「酉の市と黄金餅・切山椒」 浅草 鷲神社  http://www.otorisama.or.jp/chishiki.html
(俳句の出典) 白百合衆 新作競詠 http://homepage2.nifty.com/haikuza-seasons/lilies.html
(山椒のイラスト) (C) お花のアイコン館 http://flower.girly.jp/


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