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2008.1.15 |
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萵苣の話…「チシャ(萵苣)」は菊と同じ種。と言っても、どんな野菜だったか、考えてしまう人が多かろう。滅多に使われない言葉になってしまったようである。 「レタス」と言えば知らぬ人はいないのだが。 キク科といえば、春菊がすぐに思い浮かぶが、似ても似つかぬ野菜だ。しかし、よく考えれば、似た所はある。 ほんのりとした苦味を感じることがあるからだ。 又、最近の春菊ではわからなくなってきたが、茎を包丁で切ると、と白い液が溢れるように出てくるところも同じ。春菊で覚えがなければ、タンポポを折るとわかる。もっとも、タンポポを取ったことが無い人の方が多い時代だから、そんなことを言っても実感は湧かないかも知れないが。
なかなかお洒落な命名ではないか。 芭蕉が俳句に詠んだ位だから、チシャは古くから伝わっている野菜だ。しかし、冷蔵庫で保管してもすぐに弱ってしまう位だから、余り実用的ではなかったと思われる。 それに、手で千切って、生で食べるというのはいかにも非衛生的だし、マナーに反する。チシャは食べられていたにしても、今のレタスのような食べ方ではなかったに違いない。 それが、洋風化で一変した訳である。チシャでなく、レタスと呼びかえて当然だと思われる。 ところで、このレタス、古代エジプトでは、神聖なる薬草とされていたという。しかし、乳草とは見なされなかったようだ。どうも、媚薬の類らしい。 “Lettuce was sacred to the fertility god Min, and was thought to be aphrodisiac”(2) 中国にしても、地中海辺りから入って来ると、途端に「千金菜」(3)となる。おそらく、お金に糸目をつけず争って入手しようとした野菜だったのである。 と言っても、日本人の感覚では、チャーハンに入る野菜だったり、蒸し物の敷き野菜のイメージだから、“King of Vegetables”といった風情はとても感じられ無い。 しかし、媚薬として伝わったなら、話は別。 そんなことを考えると、西洋でレタスが好まれるのも、エジプト神話の世界の影響ではないかと思ったりする。 この手の効果があるという噂でもでれば、怪しい話と思っても、どうしても手が出てしまうのがヒトの性分だからだ。 日本では、清浄野菜で新鮮そうだからレタス大好きという人が多いが、そんな感覚は日本ならではかも知れない。 --- 参照 --- (1) 故相馬暁博士(北海道立中央農業試験場長): 「レタス」 http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/retasu.htm (2) Jane M. H. Bigelow: “Ancient Egyptian Gardens” J. Egyptian Study Soc. 2(1) 7-11 2000年 引用文献--Lise Manniche: “An Ancient Egyptian Herbal” Univ. of Texas Press 1989 [邦訳] 「ファラオの秘薬―古代エジプト植物誌」 八坂書房 1994年[品切] (3) 千金菜−萵苣 King of Vegetables: Lettuce http://scholar.ilib.cn/Abstract.aspx?A=zgswyyy200306018 (俳句の出典) http://www.ese.yamanashi.ac.jp/~itoyo/basho/haikusyu/nasubi.htm (レタスのイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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