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2008.1.22
 
 


豌豆の話…

「食べなはるか」 言われてきぬさや 両の手に
  今摘みし 莢豌豆の みずみずし  祝恵子 [水煙同人] 

 エンドウは「豌豆」と書く。安土・桃山時代に統一表記になったそうである。(1)
 通常よくエンドウ“マメ”と言ってしまうが、豆なのだから、そんな必要はないようだ。

 青豆は鶯餡、赤豆は蜜豆用の茹で豆でお馴染みだが、豆が成長する前に鞘を野菜として食べることが多い。言うまでもないが、サヤエンドウである。
 しかし、鞘の筋を取り除くのが面倒ということで、もっぱら、緑の彩りを狙った飾り用に少量使う食材になりつつあるようだ。
 サヤエンドウは未熟だが、そのまま育て完熟寸前で鞘から実を取り出せばグリーンピースになる。ただ、絹鞘とは違う品種(2)が主流だ。
 豆ご飯やチキンライスの人気が落ちているせいか、こちらの需要も今一歩といった状態。

 その代わり、サヤエンドウ+グリーンピースの、スナップエンドウ(3)が流行っている。茹でるだけで食べられて便利だし、マヨネーズ好きが多いから、当然の流れかも知れない。

 そして、鞘や豆だけではなく、蔓も食べようということで、エンドウのもやし、豆苗も定番化しつつある。

 そういえば、エンドウはMendelの実験に使われたことで有名。何故、エンドウだったかといえば、花の構造が自家受粉しかできない形状になっているのだ。つまり、昆虫による交雑の可能性皆無ということ。(4)

 ふ〜む。

 この植物、並はずれた戦略をとっていると言わざるを得まい。普通は、交雑が発生し易い仕掛けがあるのに、全く逆を行く。
 つまり、人間に交雑してもらうことを前提としている植物ということ。人の歴史と並行して行き続けてきたのである。
 そんな親近感から、「ジャックと豆の木」のような民話が生まれたような気がする。
 話の内容は不条理そのもの。
 「ただぼんやり、ふしぎだなあとおもってながめたなり、すぎてしまえば、・・・、あなたたちは、あいかわらず貧乏でくらさなければならない。だから、豆の木のはしごをのぼったのが、とりもなおさず、幸運のはしごをのぼったわけなのだよ。」というのがご教訓なのだろうか。
 ジャックの冒険心をかったということだが、エンドウも、ヒトに将来全てを賭けたのだから、勇気ある植物と言えそうだ。

 --- 参照 ---
(1) 故相馬暁博士(北海道立中央農業試験場長): 「エンドウ」 http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/endou.htm
  「サヤエンドウ」 http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/sayaen.htm
(2) http://www.sakataseed.co.jp/product/vegitable/data/popdata.html?it_id=00927275
(3) 農水省制定名(「スナック」はサカタのタネの名称) http://www.sakataseed.co.jp/product/vegitable/data/popdata.html?it_id=00927170
(4) Gregor Mendel: “Experiments in Plant Hybridization” 1865 http://www.mendelweb.org/Mendel.plain.html#s2
(5) 楠山正雄: 「ジャックと豆の木」 [青空文庫] http://www.aozora.gr.jp/cards/000329/files/43124_21541.html
(俳句の出典) 祝恵子の俳句ブログ http://blog.goo.ne.jp/suien10/e/49e6e492e991427482c9341c0b0e53a6
(サヤエンドウ/グリーンピースのイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm


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