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2008.1.29
 
 


菠薐草の話…

ほうれん草 洗ふ背中を 見張られる  さいとうけいこ [見張るのは推定7才の雌猫] 

 法蓮草と表記するものと思っていたら、漢字では「菠薐草」だそうである。
 難しい漢字だ。出典の記載無しで、ペルシャ(Persia)の野菜の意味と記載されているが、とくと合点がいかぬ。ペルシアの漢字表記は違うし、音も全く一致していないからだ。昔なら広辞苑を調べるのだろうが、そんな手間をかけないからいい加減なものが多い。
 大昔、ペルシアから中国に入ってきたのは確かである。そして、「波斯菜」と呼ばれた。まさにペルシア菜である。“蔬菜の王”とされたらしい。
 人気が出て、産地も有名になったが、それが西域の菠薐国だったということのようだ。(1)そんなことだろうとは思った。素人でも想像がつく話である。

 「法蓮草」とした理由は何なのか想像するのは難しいが、春の七草の「仏の座」と生える所が競合していて、法蓮がその位置を占めたということかな、という気がする。

 それはともかく、寒い冬には美味しい野菜とされる。どういう訳か、どこにでも書いてある。
 これも大いなる疑問。
 ほうれん草は野菜売り場に一年中並んでいるが、冬食べると、美味しさが増しているというのだろうか。そんなことを本当に感じているのか是非聞きたいものだ。小生の体験では、夏モノの方が美味しい場合が多い。

 “ひと霜降りたころが甘味が出て一番おいしいと言われる”のは在来種路地栽培での話しである。そんな野菜など滅多なことで手に入るものではなかろう。
 まあ、それは農家にとっては致し方なかろう。
 病気発生のリスクが低く、通年栽培可能で、日持ちするものがあるにもかかわらず、収益低下が明らかな在来種を続けるなどできるものではない。
 実態を語って欲しいものである。

 消費者のニーズに合わせれば、柔らかく、癖やえぐみがない灰汁が少ない品種改良が進む。冬のほうれん草の味など、とうに忘れ去られてしまっているということでもある。
 専門家が“本当の味を守り、日本の食分化を忘れて、日本の農業が生き残れるのか”と、つい、言いたくなるのも無理はなかろう。(2)

 とはいえ、最近は「ちぢみ」、「縮緬」、「寒締」といった名称のホウレンソウも定番化しつつある。確かに味が濃く甘みがある。
 もともと、この名称は、ひどい寒さで葉が縮れた状態を指したのだと思うが、最近の呼び名は品種名に近い。
 葉が縦に伸びない品種なのである。お陰で、農地面積を必要とするし、栽培期間も長くなる。しかし、価格がとれるから、争そうように栽培を始めている訳だ。
 それに、べト病にかかりにくいらしいから、農家に人気があるのだろう。
 正直なところ、都会育ちからみると、縮んだ形を見ると、和野菜というより、中国野菜イメージがするのだが。

 --- 参照 ---
(1) “菠菜歴史”中国総合教育網 http://www.f5edu.com/baike/Lemma.asp?LemmaId=248
  “菠菜(植物小品之十二)”中国経済史論檀 http://economy.guoxue.com/article.php/5172
(2) 故相馬暁博士(北海道立中央農業試験場長): 「ホウレンソウ」
  http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/houren.htm
(俳句の出典) さいとうけいこ「猫マニアッ句」 http://maniakku.cocolog-nifty.com/tara/2007/03/post_8f15.html
(ゆずのイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm


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