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2008.2.5 |
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OKRAの話…夏野菜の代表選手オクラは英語の名前(Okra)。 “御蔵”なら、まあ通りがよいな、ということで、日本読みに変更するとか、別名を考えることをしなかったと睨んでいるのだが。 カリブ辺りではOcheroとか言うそうだが、もしこちらの名称だったら発音しにくいから、別な日本名がついていたろう。 Okraの語源はTwi語(1)のnkrama、あるいはnkrumanとされている。どんな発音かはわからないが、そう聞こえたのだろう。 この言葉は、ガーナ南部(旧英領黄金海岸地域)の人達が使うそうだが、国が制定した公用語は英語。「オクロ」で通るそうだが、コレ、はたして何語なのだろう。 この辺りでは一般的な野菜らしく、大量に刻んでシチューに入れるという。すりつぶしたトマト、玉ねぎ、山羊の肉、と一緒だ。パームオイルと香辛料を使うそうだから、いかにも力強そうな料理だ。(2) 同じアフリカでも、旧仏領コンゴ辺りになると、だいぶ言葉が違ってきて、ngumboとなる。(3)Kiswahili語系と思われるが、仏語Gumboの発祥元だそうな。ここでのオクラ入りスープ料理はMuambaと呼ばれている。(4) 米国南部で有名な、スープ様のGumbo料理と同じようなものだ。(モーリシャス料理でも知られる、アフリカ・仏・印混交のCreole料理ということにになる。) このGumboは、アンゴラのngumboが語源だという。(3)アンゴラは仏領ではなく、ポルトガル領だったのだが。 ちなみに、ポルトガル語ではQuiabo。スペイン語のキューバでは、知る人ぞ知る“Quimbombo”になる。 → [試聴の頁 9曲目] サルサ “Quimbombo” by Arturo Sandoval [2007.3] ブラジルでは、1Kgものオクラを鶏肉と煮込む料理(Frango com quiabo mineiro(5))が美味しいらしく、観光客にも人気があるという。オクラはメジャーな野菜なのだ。 こうした、名称の流れからみると、奴隷貿易を通じて、アフリカ西海岸から南北アメリカに伝わったようだ。それが、日本にも渡来した訳である。 ちなみに、原産地はナイル上流らしい。(6) しかし、OkraとGumboには、音の違いを感じる。両者は別モノだった可能性もあるのではないか。 ところで、中国も同じようなパターンで伝わったのかと思うと、そうではないようだ。ここでは「秋葵(黄蜀葵)」と呼ばれている。 秋を思わすような美しい黄色の花が咲く観賞用植物ということだ。結構古くからある。当然、日本にも、早くから入ってきた筈だが、人気はさっぱり。日本向きに改良する気はなかったのである。 冒頭の俳句の作者氏は、白い花が咲いたのを見ていたく感激されたが、いくら美しくても、“日没を感じてしぼみ、翌日、地に落ち・・・命はかない、一日花”だから、縁起かつぎの日本人に敬遠されたのだと思われる。 歳時記を見ると、「オクラの花」は季語として選ばれてはいないそうで、俳句にならないと嘆いておられる。 ただ、中国の場合、なんとかして食材にしようと努力するから、観賞用に留まることはない。実際、広東料理では「羊角豆(yang jiao dou)(7)」として登場する。名前の感じからすると、一応、形状に応じて命名しただけだろう。食材としては軽視しているのは間違いない。 一方、同じアジアでも、東南アジアからインドにかけては、BhindiとかBendi。南インドはVendakkai。中東等ではBamya/Bamia/Bamiasといった名前。Okra/Gumboとはまた系列が違うようだ。 ここでも、大量に煮込むシチュー料理にするらしい。野菜も料理名も同名にするのが習慣のようだ。そうなるのは、この辺り一帯では極めてポピュラーな料理だからだ。結構早くに、エジプト辺りから伝わってきたのだろう。 しかし、ギリシアでは料理方法が洗練されたようだが、イタリアに入ると、からきし人気がでなかったようだ。摩訶不思議。 オクラは特殊でマイナーな野菜の印象を与えるが、こうして見てみると、アフリカの定番野菜が全世界に広がったことがよくわかる。 ただ、南部以外の米国や、欧州では、今もって人気薄のようだ。おそらく、ニューイングランド辺りではOkra自体が知られていないのではなかろうか。 寒いから栽培に適さないということもあろうが、ネバネバ液や、産毛のような表皮が、生理的に受け入れ難いのだろう。昔は、生で魚やイカを食べると聞くだけで気持ち悪くなった人達だから、オクラにも何らかのタブー感がありそうだ。 逆に、日本では、このネバネバを愉しむ人ばかり。納豆や長芋のネバネバと一緒にすると尚更旨いというのだから、こんなものを食べろと言われたら、ニューイングランド辺りの人達は卒倒するかも知れない。 世界のオクラの食べ方を見ていると、日本人の好みは独特なようである。 と言うか、日本には、余りに沢山の種類があるので、それぞれの野菜の特徴を際立たせて食べる習慣ができたということだろう。 なんとも贅沢な喜びである。 --- 参照 --- (1) Society-TWI-(ASHANTI) http://lucy.ukc.ac.uk/EthnoAtlas/Hmar/Cult%5Fdir/Culture.7880 (2) 西尾治美: 「JICA国際協力推進員からあなたに。(第3回)」AIAメルマガ第23号[2006.1.26] http://www2.aia.pref.aichi.jp/k/mm/magb23-5.html (3) http://www.congocookbook.com/chicken_recipes/muamba_de_galinha.html (4) http://www.congocookbook.com/vegetable_and_side_dish_recipes/okra_and_greens.html (5) 観光案内レシピ http://www.es.gov.br/site/turismo/Frango%20com%20quiabo.aspx レストランの料理例 http://www.divinagula.com.br/site/frangocomquiabo.html (6) http://darwin.nmsu.edu/~molbio/plant/okra.html (7) http://woman.zaobao.com/pages3/recipe131204.html (Okura一般) 出典は記載されていないが詳しい. http://www.innvista.com/health/foods/vegetables/okras.htm (俳句の出典) NPO愛知ネット 愛知県青年の家 「歳時記」 2007年7月31日 http://aichi-yh.jp/html/modules/wordpress2/index.php?p=137 (オクラのイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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