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2008.2.26
 
 


荏胡麻の話…

宵ごとに 都に出づる 油売り 更けてのみ見る 山崎の月  「71番職人歌合せ」の7番

 荏胡麻(エゴマ)を知ったのは、結婚してからのこと。今まで知らなかった風味の和え物が、家内の実家の食卓に登場したのである。
 ただ、名前はエゴマではなく、ジュウネン。

 聞きなれない名称なので、珍しい食材かと思ったら、極く一般的で、家庭料理にちょくちょくつかうとのこと。東京なら、間違いなく胡麻を使うところだが。
 なにかというと餅を食べる土地柄なので、餅に合うということかも知れないと思ったが、餅には胡麻ダレも使う。エゴマ味が気に入っているとしか思えない。
 食材を見ると、胡麻を大きくした、白っぽい丸粒。これを炒ってから擂りつぶして豆腐と混ぜれば、野菜の白和えになる。ゴマ和えと作り方は大差ない。
 味付け技量の差が出る料理だが、美味しいものである。

 このジュウネンという名称、大陸からの渡来時の名称に由来するらしい。
 韓国の全羅南道ではエゴマを“jin”とか“yin”と呼ぶそうで、ジュウネンは両者を合わせた音に近いからだとか。(1)

 植物そのものは見た目は紫蘇そっくり。葉も使うところも、よく似ているが、シソのような香りはしない。
 一部の地域だけで使われる食材かと思うと、そんなことはなく、かつては全国的に栽培されていたという。
 もっとも、それは古代のこと。なにせ、縄文の時から重視されていた作物なのである。(2)

 と言うのは、エゴマの種は油分が豊富で、菜種油が登場する前は、油といえば、もっぱら荏油だったから。なにせ、山崎には油座があった位だ。(3)

 もっとも、この荏油、消えてしまった訳ではない。最近は健康ブームということで、「シソ油」として登場している。シソの方が通りがよいかららしいが、流石にそれはいかがなものかということらしく、2007年春から、「純えごま油」へと名称変更を始めた会社もあるようだが。(4)

 その一方で、ジュウネンという名称も広まりつつあるとか。
 エゴマを食べると、十年長生きするということらしい。
 どこまで健康に寄与するものかはよく知らないが、この油、結構簡単に火がつくから、注意した方がよいと思う。火事の話ではなく、酸化し易いという意味で。

 --- 参照 ---
(1) 中村重夫: 「エゴマ油の道」 ペリラ研究所 2003年 http://www.egoma-book.com/jyosyou1.html
(2) 日本エゴマの会 エゴマとは!?  http://www.egoma.jp/egoma/index.html
(3) 油祖 離宮八幡宮 http://www.lily.sannet.ne.jp/t-h-nak/
(4) http://www.abura-ya.jp/SHOP/KB_c002.html
(冒頭の歌) http://www.lily.sannet.ne.jp/t-h-nak/bungaku.html
(荏胡麻の写真) (C) カールおじさん 草花写真館 http://kusabanaph.web.fc2.com/


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