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2008.5.27
 
 


Melonの話…


  贅沢が したいと君が 言ったから
    ボーナス入って メロン記念日



← 写真は、万惣の千葉産マスクメロン(\6,300)


 来日するビジネスマンを連れて行く、隠れた東京の名所は、デパ地下だが、その時必ず見せるべき売り場がある。果物売り場だ。
 そこで、メロンの正札を見せるのである。そして、その夜、ディナーでメロンを出すことを忘れずに。
 海外では、メロンと言えば、オレンジ類とたいして変わらぬ値段だし、大きさな西瓜の方が高価というのが、リーズナブルなところだろう。
 よく説明しないと、日本の特殊性だけ感じ入ったりするから、メロンビジネスの一応の知識と、一発冗談を言えるタネを準備しておくことが必要。
 といった観点でご説明しておこう。

 昔、神田駅と秋葉原電気街の中間にある老舗の果物屋で聞いたことがあるが、江戸時代は瓜類は安物で、茄子が高級品だったそうである。
 「瓜」が高級品化できたのは、「メロン」としたからだという。
 と言うのは、英国で温室栽培が始まったEarl's Favourite(アールスメロン)を、英国王室御用達高級品として日本に導入したので、(1)上流階級向け正式ディナーのデザート用とされてしまったからでもある。
 当時でも、日本で温室栽培すれば、高価になるのは当然だ。(摘実し、1株1個栽培に徹し、養分を集中させる。)
 だが、商品にわざわざ蔓をつけさせたりして、商売上手な人が多かった点も見逃すべきではなかろう。
 蔓(鶴)が千年、皮模様の亀が万年といった調子で宣伝したと思われる。ご進物や病気お見舞いに最適という訳だ。この辺りは、果物屋さんのセンスだったと思うが。
 ともかく、わが国の風習を見抜いたやり方である。

 この俗称マスクメロン(musk)の地域ブランドが、クラウンメロンらしい。(2)
 実は、昔から、メロンのブランド競争はあったのである。

 そんななかで、時代を変えたのが、アンデスメロンの登場。マスクメロンの廉価版として、安心デスとのキャッチコピーで売り出された模様。1977年のこと。一世風靡し、今でも続いている一大品種だ。
 図書館リファレンスサービスの専門家でさえ“アンデス地方に由来した名前かと思ったので、思わぬ(調査)結果に驚いた”そうだ。(3)ただ、どういう訳が、由来についての情報が極端に少ない。企業秘密にしておきたい点が多々あるのかも。と言うか、品種改良競争が熾烈な業界というだけかも知れぬが。
 アンデスメロンの対抗商品は縦縞が目立つアムスメロン。これもウエブではいたるところでアムステルダムからの渡来とされているが、どこまで本当かはよくわからない。
 こうなると、クインシーメロンは、クイーンとヘルシーといったところかなどと思ってしまう。まあ、勝手な想像だから、間違っていたらご勘弁のほど。

 種苗企業は大量に使ってもらう事業に力を入れるが、高級品を売りたい生産者は独自品少量栽培がお好み。その典型が夕張メロン。商標登録は1979年とかなり前のこと。(4)
 ただ、これは役所が旗を振っているブランド化とはちょっと違う。イノベーティブと言うか、常識と違う道を邁進したのである。
 それまでは、薄白緑の身で、引き締まった肉を切ると、淡いムスク(麝香)の香りがするものが典型的高級品。
 夕張は逆で、芳香重視。(普通は日持ちしないから、地場出荷品である。)しかも、身は橙色で柔らかい。(橙色系は硬いものが結構多い。橙色系で柔らかいものもあるが、たいていはすぐに熟しすぎになるので嫌われる。)
 一言で言えば、瓜のセンスを完全に消し去ったということ。なかなか踏み切れることではない。炭鉱業斜陽化で、他の地方と同じ土俵でブランド競争をしていたら勝てないと考えたに違いない。

 こうした競争は表皮がネット状のメロンだけではない。表皮がつるつるしている瓜に近い領域でも結構熾烈だ。
 もっとも、こちらには超有名な品種がある。1962年発売(5)のプリンスメロンだ。皇太子ご成婚記念で大ヒットしたとされる。
 そういえば、さらなるヒットを狙ったのか、エリザベスメロンという名称もあり、実に面白い。

■■ 甘味系瓜 ■■
真瓜 マクワウリ
キンショウメロン
哈蜜瓜 ハミウリ
西瓜 スイカ
■■ 野菜系渡来瓜 ■■
胡瓜 キュウリ
南瓜 カボチャ
苦瓜 蔓茘枝
ゴーヤ
zucchini
白瓜 シロウリ
隼人瓜
■■ ニッチ食材化瓜 ■■
冬瓜 トウガン
糸瓜 ヘチマ
ナベラー
烏瓜
夕顔
[干瓢]
瓢箪
 大衆化メロンが次々と登場したと言っても、国内産はまだまだ高価だから、輸入品の挑戦も少なくない。典型が、ハネデューメロン(honey dew)。色が白だから人気が出そうな感じもしたが、そういう訳にはいかなかったようである。日本には、蜂蜜好き人口はそう多くないから、名称が今一歩だったのではあるまいか。
 あるいは、大きすぎ、品質も安定していなかったのかも知れぬ。
 それなら名称でということか、単なる縁起かつぎかはわからないが、この改良品と思われるホームランメロンを時々見かけるようになった。

 これだけ、メロン開発競争が激しいと、昔からの「瓜」はとてもやってはいけない。
 もともとの、マクワウリ(真瓜)は主産地が美濃“真桑”村だったそうだが、今時、そんなものを作っても商売にはなるまい。
 「網干メロン」が真瓜に該当するとの記載を見かけるが、実態は自家消費に近いらしく、(6)市場から消えてしまったと見てようさそうである。

 シロウリにしても、果菜というより、純粋の野菜化一途。しかも、野菜としてもマイナー化は否めない。
 もともと瓜系は、名称から見ても、渡来品だらけ。そして、西洋系全盛という流れがありそうだ。

 --- 参照 ---
(1) 相馬博士の作物百科 メロン http://www.agri.pref.hokkaido.jp/nouseibu/soma/index/meron.htm
(2) クラウンメロンの歩み [静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所]  http://www.crown-melon.co.jp/rekishi.htm
(3) アンデスメロンの名前の由来を知りたい。[山梨県立図書館]  http://www.lib.pref.yamanashi.jp/cgi-bin/refjirei/refs.cgi?c=common&n=39
(4) 夕張市農業協同組合 北海道名産 夕張メロン  http://www.webwork-nws.com/users/yubari/syouhyou.html
(5) サカタのタネ現在までの歩み  http://sakataseed.co.jp/company/history/index.html
(6) 姫路市農政総務課 地場産野菜の紹介 伝統野菜  http://www.city.himeji.lg.jp/s60/2212472/_10075/_10135.html
(Japanese melon intended as a high-priced giftの写真)
  [Wikipedia] Image:03-05-JPN202.jpg http://en.wikipedia.org/wiki/Image:03-05-JPN202.jpg


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