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2008.7.1 |
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胡桃の話…胡桃割る 胡桃の中に 使はぬ部屋 鷹羽狩行 1972年の作 胡桃といえば、胡桃味噌。 小生がそう思うようになったのは、実は、そう昔のことではない。 胡桃味噌を知らなかった訳ではない。学生の頃は、よく信州に遊びにいったから、食べたことはある。しかし、感激するほどのものには出会わなかったのだ。 それに、「胡」という文字のイメージからか、本場は海外と考えていたせいもある。ケーキのオーナメントや、様々なフィリングを代表的な利用方法と見なしていたのである。それに、胡桃の蜂蜜漬けの国産品を見たことがなかったせいもある。 ところが、たまたま、“くるみ餅”を食べる機会があり、それこそ目から鱗だったのである。 もちろん、お土産品でよく見かける、砕いたクルミの実入り“ゆべし”(求肥)ではない。取ってきたばかりのクルミの殻を壊して実を取り出し、軽く炒ってから、すり鉢で擦り、味噌・砂糖で味付けし、搗き立てのお餅別にかぶせたもの。 これが驚くほど香ばしく美味しかったのである。よく考えれば、油分が多い木の実だから、当たり前かも知れぬが。ともあれ、取立てを使ってすりおろしたばかりのものは味が違う感じがした。 それに、考え違いをしていた。 胡桃林があると考えていたのだが、家の周囲や土手に三々五々と植えてあるという。つまり、珍しい木ではないらしい。・・・都会育ちは余りに無知であった。 昔は、子供が拾ってきて食べるようなものでもあったという。今や、そんなものを食べるのはえらく贅沢になっているのだろうが。 尚、日本に自生するクルミは鬼胡桃と姫胡桃だそうで、核がえらく硬いという。(1) 拙宅にも、ひょんなことから購入してしまった鬼胡桃割りがある。頑丈一徹の、味のある手作り道具。実は、使ったことは一度もないのだが、胡桃割りの大変さ加減がよくわかる。 こんな硬いものを、鉄製道具がなかった縄文時代はどうやって割ったのだろうか。殻を腐らせたのかも。 こんな面倒な木の実ではとても商売にならないだろうから、滅多なことではお店に並ばないと思われる。 しかし、今でも、木を植える人がいると聞いたので、種苗通販カタログを見てみたら、ペルシア胡桃と手打胡桃を交雑させた“菓子”胡桃が販売されていた。(2) この辺りが国産のメイン品種なのであろうか。 このうちペルシア胡桃は西洋胡桃と呼ばれているから、明治か大正期に入ってきた品種と思われる。 一方、手打胡桃はペルシア胡桃の変種とされており、もっぱら中国で栽培されているそうだ。日本に在来種があるのだから、中国にもあった筈だが、それも殻が硬かったので、ペルシア胡桃に席巻されたということか。 それにしても、「手打」という名称が面白いではないか。二個ぶつけて出る音をさしているのだろうが、勝手に盗ればお手打ちになってもおかしくないゾ、という意味もかけていそうだ。なかなか洒脱。江戸時代に渡来したのは間違いなかろう。 と言うことは、藩政を支えるべき頑張った可能性もあり、その栽培伝統を守っている地域もあるに違いない。 しかし、スーパーに並ぶのは、大振りの殻の輸入品ばかり。もちろん、米国カリフォルニア産。 これは実に簡単に割れるのだ。袋に、殻を割る金属板が入っており、この板を殻の割れ目に差し込んでこじ開ければよいだけ。 考えてみれば、殻に隙間があるということは、雨でも降れば、水が染み込む。自然環境のなかで、自力で生きていく力がないことを意味する。完璧な栽培用品種だ。 鬼胡桃の徹底防御姿勢とは正反対である。 様々な品種の断面を観察すると、「殻は柔らかく−食べられる部分は多く−という方向に進んでいる」となるが、それは、「動物散布の方向に進化している」だけではなく、「人に全面依存するように進化させられた」せいもありそうだ。 → 「2006/11/17 クルミの実 」 (ちょっとデジカメ 四季の植物さんぽ [公園の雑学植物図鑑]) --- 参照 --- (1) 跡見群芳譜 樹木譜 鬼胡桃 http://www2.mmc.atomi.ac.jp/web01/Flower%20Information%20by%20Vps/Flower%20Albumn/ch2-trees/onigurumi.htm (2) タキイネット通販 https://www0.takii.co.jp/CGI/netshop/catalog/products/item/NKZ343 (現代俳句の出展) 国際俳句交流協会 http://www.haiku-hia.com/rireki_takaha_jp.html (胡桃の写真) [Wikipedia] by Horst Frank W Nuss Gr 99.jpg http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:W_Nuss_Gr_99.jpg 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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