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2008.8.5
 
 


タラノメの話…



 の芽の ほぐるる山の 静かな   村上鬼城

 タラノキは日当たりのよい山裾に結構生えているようだ。
 “タロウノキ、タロノキ、タロウウド、タロノイゲと人名の太郎を達想させる”(1)呼び方がされているそうだ。漢字表記は、木ヘンに怱という見たことのない文字だ。しかし、よく考えれば、これは嫡出の長男を跡継ぎとする「惣」と同じ意味であろう。「太郎の木」なのである。
 考えてみれば当然かも。もともと枝を出そうとしない木であり、突端の芽が一番立派なのだ。しかも、この太郎芽を採り、その下の次男芽、三男芽までとってしまうと、幹に派生した横芽がでることもあるが、枯れたりしかねないそうだ。まさに家系問題を想起させる木である。
 もっとも英語では、“devil's walking stick”と、とんでもない名前がついている。(2)

 「タラの芽」とはこの木の春の若芽である。よく天麩羅に登場してくるが、結構なお値段だったりすることもある。しかし、軽く上手に揚げたものはそれだけの価値はある。ただ、好きなのは大人だけという気はする。

 木の芽だから、簡単に取れるといっても、鋭い棘があるので注意が必要である。
 もっとも、棒の先に剪定鋏がついており、紐で切る道具がある。これを使えば、4〜5m上でも、どうということはないのだが。
 こんなことを語れるのは、一度、収穫のお手伝いをしたことがあるから。と言っても農家での話ではない。農作業の素人たる、年金自営農が日々丹精を込めて作っている山の畑でのこと。山といっても、周辺に人家がある丘のようなものだが。

 もちろん、本格的に、山奥で採取する人もいる。ただ熊君と出会ったりしかねない状況らしいから、(3)かなりの冒険かも知れぬが。
  → [YouTubeVideo 3分21秒] 希林館自然クラブ製作: “山菜「タラノメ」”
      ・・・岩手に自生する天然の タラノメの発生と採取風景です


 ただ、山奥以外は、乱獲が進んでいると聞く。
 当たり前だが、芽を全部とってしまえば枯れるが、そんなことはおかまいなしの人も多いというのだ。
 お陰で、山奥以外に天然モノなどないという見方も少なくない。

 そうなると、スーパーで並んでいる商品は、山麓で木を育てているのかと思ってしまうが、そんなことは相当前から行われていないそうだ。
 日当たりのよい畑で大量の挿し木で栽培するやり方。様々な品種が用意されており、棘無しもある。
 そして、一年もたてば、芽を出せる力がでてくる。そこで、芽がでそうな部分を切ってハウスで水耕栽培するのが農業の実態らしい。冬に仕事ができるから人気ビジネスだとか。
 道理で、高価なタラの芽がスーパーに並ぶ訳だ。もっとも、最近は競争が激化してきたのか、安価なものが出回り始めたが。
たらのめ[若芽]
茹でたもの100g
含有成分量(4)
水分 90.8g
蛋白質  4.0g
脂質  0.2g
炭水化物  4.1g

 ともあれ、売れ行きは好調のようだ。その理由は、山菜だというのに、炭水化物と同じ位蛋白質が含まれているせいかも知れない。

 --- 参照 ---
(1) 「タラノキ」 渡島支庁-渡島東部森づくりセンター
   http://www.oshima.pref.hokkaido.lg.jp/ds/tmc/kakari/ki/taranoki.htm
(2) DAVID GILLESPIE[日本在住]: “Devil's walking stick keeps prickly company” JapanTimes Weekly [2003.4.12]
   http://www.japantimes.co.jp/weekly/feature/fl20030412dg.htm
(3) 「クマの出没に注意ください!」 一関市役所本庁からのお知らせ
   http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/7,9172,91,6,html
(4) http://fooddb.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06158_5
(俳句の孫引き先) 岩手県森林公園 -県民の森だより [2008.4.5] 紙上ギャラリー http://kenminnomori.com/20dayori-4.pdf
(タラの芽[食べ頃]の写真) [Wikipedia] by あおもりくま[青森県車力村] http://ja.wikipedia.org/wiki/
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