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2009.3.24
 
 


蒲公英の話…


  タンポポの 見かけ以上の 苦さ知り
  八百屋さんでタンポポと言うと、お刺身の飾りモノがでてくる。これが結構いいお値段だったりする。

 タンポポを見かけることが減ったから一抹の寂しさを感じていたが、この植物、蓬同様、生命力が強い植物だという。言われてみれば、確かに、道端にしぶとく生きているのを見かけることがある。余り心配する必要はないのかも。
 ずいぶん昔に、帰化植物の西洋種が全盛と耳にしたことがあるが、普通に見られるのはセイヨウタンポポではなく、アカミタンポポらしい。(1)素人にはどう判別するのかよくわからないが、洋種ということでまとめては不味いのだろうか。

 知らないことは、これに留まらなかった。
 減ってきたとはいえ、どこにでも生える植物だから、野草と思っていたが、間違いだったからだ。江戸時代に流行った園芸品種なのだそうである。(2)それで難しい漢字がずっと使われてきたのかも。
 ともかく驚いた。

 という事は、西洋タンポポとは、文明開化で入った食用種なのかも。
 だが、園芸がなくなったのと同様、食用の方もさっぱりである。フランス料理好きは少なくないが、タンポポ料理は今一歩人気がでないようだ。ジビエと同じか。
 と言っても、タンポポ自体が相当違うから、無理もない。“salade de pissenlit”と言えば、普通は、“blanc”タイプで、白い茎の苦味ある野菜が登場する。わざわざ日陰で育てるのだろうが、そこまでしても食べたい植物ということのようだ。多分、春らしさが嬉しいのだろう。その苦さが肝。
 まあ、日本で言えば、蕗の薹のような感じか。
 英国も、日本同様、滅多にタンポポは食べないようだが、“earthy”感を楽しみたいならお勧めの食材らしい。(3)

 常識的には、タンポポを食べるなら、柔らかい部分を使った温サラダがベストだろう。フレンチ料理の感覚からすれば、胡桃油。なかには、ヘーゼルナッツも素的と考える人もいるようだから、ナッツの香りがさらなる野趣を誘うということかも。(4)
 そんな感覚は日本にもある。もしも、明治の頃に、日陰栽培品を提供していたら、胡桃和えの定番の和食になっていた可能性もあったのでは。まことに残念至極。

 だが、今でも、日陰タンポポは輸入品しかないようで、タンポポを食べたい人は、深緑色の葉をそのまま使い天麩羅にしたり、徹底的に茹でて御浸しで食べるようだ。相当苦い筈。見た目はよいが、葉は強いから、食べにくい料理にしかならないのでは。薬と考えて食す人は美味しいと感じるのかも知れないが、普通の人にはとても無理では。

 そう確信するのは、最近の野菜は、香りが薄くて、癖がないから。ほとんど水気ばかりの野菜を食べて、どこが嬉しいのか、さっぱりわからぬが、これが現代日本人の平均的好みらしい。
 小生は、世界一不味い野菜になりつつあると感じるが、ほとんどの人は逆のことを言う。なかには、海外の野菜はとても食べられたものではないと言い放つ人までいる。

 --- 参照 ---
(1) MASASHI IGARI: 「人里に生えるタンポポの仲間」
  http://www.plantsindex.com/plantsindex/html/group/gp_taraxacum.htm
(2) 中川重年: 「くらしの植物苑だより〔蒲公英〕」 [2000年2月20日]
  http://www.rekihaku.ac.jp/kodomo/5/tayori27.html
(3) Mark Hix: “Dandelion salad with rabbit and black pudding” Independent [14 May 2005]
  http://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/recipes/dandelion-salad-with-rabbit-and-black-pudding-490232.html
(4) Gourmet Magazine Recipe: “Dandelion Salad with Warm Hazelnut Vinaigrette” Television Food Network
  http://www.foodnetwork.com/recipes/cooking-live/dandelion-salad-with-warm-hazelnut-vinaigrette-recipe/index.html
(タンポポの写真) (C) 2000ピクセル以上のフリー写真素材集 http://sozai-free.com/index.html


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