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2009.6.23 |
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萱草の話…忘れ草 我が紐に付く 香具山の古りにし里を 忘れむがため 大伴旅人(1) それにしても還暦をすぎ、思いを断ち切るべく北九州へ単身赴任とは。 だが、偲ぶ想いは花をつければ、さらに強まる。 年を経るほどに、愛妻を亡くした辛さがつのるのは、致し方あるまい。 カンゾウといえば、甘草と思ってしまうが、「萱草」も同じ読みだった。やはり、名称はワスレグサの方がぴったりくる。もっとも、そんな名前は忘れたという人の方が多いかも。 そんな方は、若くして逝った立原道造の叙情詩「わすれぐさに寄す」(2)で思い出そう。 この植物、湿気を感じる初夏にオレンジ色の小振りな花を咲かせる山百合にすぎない。中国での話からきたらしいが、どうしてそんな花に、憂い思いを断ち切る効果を感じ取ったのだろう。不思議な季節感だと想う。 まあ、現代では、本カンゾウより、そのお仲間の花の方がずっと有名である。そういえば、お気づきかも知れぬが、高原一面に黄色の花を咲かせる日光キスゲ(黄萱)だ。これを、小振りにすると姫カンゾウ。湿原に咲くのが、一重の野カンゾウと、八重の藪カンゾウ。夕方咲くのは夕スゲということのようだ。 もっともこれは素人のざっくりした見方。本気で分類しようと考えると、難しいらしい。(3) とても、食用になるようには思えないが、流石、中国だ。中華料理に登場する「金針菜」とはこの植物の花だそうだ。炒め物に入っていたりするが、結構美味しいものである。百合の花と聞いてはいたが、カンゾウとは思わなかった。 しかし、それ以上に驚いたのは、沖縄ではカンゾウが野菜とされていること。食べるのは花ではなく茎。茹でて酢味噌がけて賞味したりするのだが、価値ある料理らしい。尚、正確には、本カンゾウではなく、冬でも枯れない、常葉(トキワ)カンゾウだとか。(秋に花が咲くので、アキノワスレグサとも。)もっとも、沖縄では、「クワンソウ」と呼ぶから、(4)これがカンゾウとは気づかない人が多いのではないか。 沖縄の伝承では不眠症に効くらしいが、効果のほどはわかっていない。(5) もしかすると、憂いを忘れるとよく眠れるという、遊び心から生まれた話ではないか。それはそれで楽しいではないか。 --- 参照 --- (1) 万葉集3巻334 http://etext.lib.virginia.edu/japanese/manyoshu/Man3Yos.html#334 (2) 立原道造: 「萱草(わすれぐさ)にkoburi 寄す」 [1937年] @日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室 http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/guest/pdf/tachiharamichizo.pdf (3) 「かんぞう/きすげ/わすれぐさ」 跡見群芳譜-花卉譜 http://www2.mmc.atomi.ac.jp/web01/Flower%20Information%20by%20Vps/Flower%20Albumn/ch3-flowers/kisughe.htm (4) 沖縄クワンソウ普及協会(クヮンソウ/アキノワスレグサ) http://kuwansou.ti-da.net/c120582.html (5) 上江洲榮子: 「萱草の効用について」琉球大学教育学部紀要-51 [1997年] http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/123456789/1884/1/Vol51p231.pdf #f8b862 (Hf var. fulvaのイラスト) [Wikipedia] http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Illustration_Hemerocallis_fulva0.jpg 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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