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2009.8.18
 
 


杏の話…


  山道で アンズの匂いに 迷わされ

    万葉の時代、アンズは恋の象徴だったのかも。
    実言葉があるとしたら、スモモの実は「疑い」で、アンズの実は「恥じらい」か。


 アンズといえば、ドライか、ジャムやシロップ漬といった加工品と決まっていたが、稀に生も売っていることがある。当たり外れがあるが、採り立てで熟している実だと、柔らかい酸味がことのほか美味しい。木で熟したものをすぐに食べたら、さぞかし、と思うが、都会では無理な話だ。
 リンゴ栽培に向くような冷涼な気候条件が必要で、日当りがよい場所でないと良いものは育たないそうである。しかも、雨が多いと駄目。今の時代、そんな適地を樹木畑にしておくのも大事だろう。

 ところが、李(スモモ)の類になると、スーパーの棚に山のように並んでいる。皮の色は違うが杏と同類だ。こちらは、日持ちするようだ。
 最近は、“すもも”ではなく、“プルーン”とか、“プラム”という名称がついていることが多くて、素人には、どんな種類かよくわからない。
 と言うか、「梅」を“プラム”と呼ぶから、そこら辺りの関係がどうなっているのか気になると言った方が正直だが。

 日本では梅の実といえば、もっぱら、青酸が含まれる未熟な青梅。これを加工して食べるものという感覚しかない。(ただ、梅ジャムは半熟かも。)
 これに対して、海外のプラムは、完熟品ということかな。と言うことは、日本の梅も完熟すれば、青酸は薄くなるということか。たとえ危険性は低下しても、とてつもなく酸っぱいだろうから、食べる訳にはいかないだろうが。
 さらに、“プルーン”と“プラム”が別物なのかも、よくわからぬ。
 疑問はつきない。

 そこで、チラリと調べて見たら、“定義から云えば、プルーンは乾燥したプラム”なのだとか。(1)そうなると、生で売っている“プルーン”とは何物。

 いい加減な話が多いので、これ以上は調べていないが、海外とは見方が違うということなのか。
 そういえば、アンズは歴史のある作物だそうで、万葉集に登場するという説明がされていたりする。ところが、肝心の歌は書いてない。これもどうなっているのかよくわからん。こまったものだ。
 巻九の“名木河作歌”のことかな。(1689)
   あり衣辺に つきて漕がさね 杏人の 浜を過ぐれば 恋しくありなり(2)

 これは、どう見てもアンズではなく、「杏人」だ。素人解釈だと、状況はこんなところか。・・・
 詠った場所の“ナキ川”は、多分、よく知られる旅の道筋。地名の由来は、“凪”か、“難儀”かはわからないが、この辺りで、風雨にさらされて衣が濡れてしまうと、どういう訳か、歌心が誘われるのだ。(1688,1696)他の句も読むと、なんとなく感覚がわかってくる。
 感傷が生まれる理由は、おそらく、「杏人」の存在。旅人を、“浜”に誘う人がいるのだ。
 家人の顔も浮かぶから、ここで“浜”に立ち寄るかは、思案のしどころ。風雨は、行くなということにも思えたりして。そうなると、早く帰って、雨に濡れたりする、旅の大変さを語りたい気にもなってくる。
 でも、たいていは、せっかくだから、ここで一休み。
 従って、寄らずに通りすぎてしまえば、何たることと悔やむ人も出るだろう。
 そんな様々な気分に陥る不思議な場所。ここで、どうしても一句となるのは自然なこと。
 この句の、「杏人」がアンズと関係すると見るかは、勝手だが。

 ただ、スモモの方は掲載されている。
 白い花を雪にみたてて愛でた、大伴家持の歌だ。(4140)
   吾が園の 李の花か 庭に散る はだれのいまだ 残りたるかも(2)

〜 杏の実のお仲間 〜
大玉

中玉
・桃(peach)
  -白桃
  -黄桃
・油桃[ネクタリン](nectarine[Armenian plum])
小玉 ・梅(Japanese apricot or Chinese plum)
・杏[アンズ](apricot)
・李[スモモ](Japanese/Chinese plum)
     (Prune du Japon)
  -“大石早生”
  -“ソルダム”[黄色]
  -“サンタローザ”[赤色]
小粒 ・桜桃(cherry)
  -“佐藤錦”
  -“ナポレオン”
  -“アメリカンチェリー”
 思うに、歌人の関心はもっぱら花で、実ではない。梅、桜、桃、李は心を動かされる木だったということだろう。しかし、実に関しては、花ほどの感動は覚えなかったのかも知れぬ。
 ウメ、アンズ、スモモの実の区別など、たいして気にしなかった可能性もあるのではないか。

 そう思うのは、桃を食べていると、そんな気にさせられるからだ。
 立派なモモを頂くことがあるが、熟れて食べごろなのに、さっぱり美味しくないものに出くわすことがある。選別した高級品でコレ。当たるも八卦に近い。
 ところが、ジャム用に、小さい上に見栄えが悪い桃を箱で買ったら、それこそ、香り立ち状態で、抜群の美味しさだったことがある。両者の価格差は10倍できかない。これが桃の特徴だと思う。
 “酢”桃も同じようなものである。価格、見栄え、産地、といった情報では美味しさはわからない。とんでもない酸っぱいものに当たったことがあるが、その前日に食べた類似品は、実に甘くて美味しかったのである。
 樹上で熟したものなら、外れることは少ないのだろうが、摘果時期と店頭での熟し方で大きな差がでてしまうということ。アンズはなかでも一番難しい果実だと言えよう。

 --- 参照 ---
(1) 「プルーンとは」カリフォルニアプルーン協会
  http://www.prune.jp/about/about.html
(2) 万葉集巻九-1689 在衣邊著而榜尼杏人濱過者戀布在奈利
  万葉集巻十九-4140 吾園之李花可庭尓落波太礼能未遣在可母
  http://etext.lib.virginia.edu/japanese/manyoshu/AnoMany.html
(分類について参考にしたサイト)
  「すもも属」 跡見群芳譜
  http://www2.mmc.atomi.ac.jp/web01/Flower%20Information%20by%20Vps/Flower%20Albumn/ch1-cherries/lat-Prunus.htm
  “Sorting Prunus names”
  http://www.plantnames.unimelb.edu.au/Sorting/Prunus_Pt3.html
  「あんず豆知識」 あんずの里 ポレポレ
  http://www.valley.ne.jp/%7Ehanasai/anzu/Ziten/Index2.html
(杏の花の写真) (C) 淀屋橋心理療法センター 季節の花 http://flower.yodoyabashift.com/anzu.html


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