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1999.12 |
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イノベーションのマクロ指標…マイケル・ポーター等が中心になってまとめたInnovation Index(Council on Competitiveness、1999年)のレポートを読んだ人は多いが、評価は相当分れる。「米国経済の牽引車であるインターネットやバイオテクノロジー技術の原点は20年前の米国の基礎研究である。米国は過去は圧倒的な力量があったが、イノベーション創出力が次第に弱くなって来た。」という指摘や、「北欧諸国やアジア新興国が急速に力量アップしている。」との指摘は、ある程度は正鵠を射ている、と評判がよい。ところが、日本の競争力の将来予測結果が腑に落ちない、との発言を耳にする。 報告書によれば、1995年のランクは米(145点)スイス(137点)日(119点)の順である。ここまでは、実感とそう離れていない。 予測結果が驚きなのだ。日本が一挙にトップに踊り出る。 1999年は日、スイス、米という順位である。そして、2005年は、日、フィンランド、スイス、デンマーク、スエーデン、米との予測である。統計情報を用いて、そのまま外挿すれば、確かにそのような結果がでてもおかしくはないが、なにか重要な視点が欠落していまいか。 というのは、現場の第一線の研究者達は、日本の迫力は90年代初頭がピークであり、いくら研究開発費用のGDP比率が高くても、能力が世界のトップということはなかろう、と見ているからだ。 一方、不況のせいで研究者の意気が上がらないだけで、日本はイノベーション創出力はトップだ。自信を持って進めばよいと、意気軒昂な発言もある。---どう考えるべきか。 この報告書の問題点は、技術の歴史を70年代、80年代、90年代、そして将来と、連続的に眺めていることである。連続的な変化なら、このレポートの通りになるといえよう。 即ち、従来型の研究開発体制で今後も力が発揮できるなら、日本はトップに踊り出る可能性は確かに高い。即ち、フラット・ディスプレー、デジタルカメラ、DVDプレーヤーといった製品で日本製品が世界を席巻するというシナリオが成り立つからだ。しかし、そのような単品製品が大きな産業を生み出す時代はそろそろ終わると見るべきではないのか。 そうなると、要素技術が強いだけでは、イノベーション創出は難しくなる。 業界の仕組み自体が大きく変化する時代が来ると、狭い領域で技術を磨くタイプの日本企業は競争力を喪失する。すでに、こうした兆候が見られるのが、情報通信分野だ。日本企業は業界全体の変身の仕組みをつくり出すような、包括的な技術パッケージを準備するのが苦手なのだ。 もうひとつは、人的資源の見方だ。このレポートはインターネットの存在を無視している。知恵は集団で生まれると考えるなら、ネットワークによる知識の生産性向上が、これからの研究開発競争の鍵である。日本は、インフラ整備が遅れているだけでなく、ネットワークの重要性認識が薄いため、この分野でも出遅れている。これは、知識で戦う上で、決定的な弱点といえよう。 言うまでもないが、日本以外の国々、特に、北欧やシンガポールを始めとするアジアの国々はインターネットでは日本のはるか先を走っている。 ということは、2005年の予測順位は、フィンランド、スイス、デンマーク、スエーデン、米、日と読み替えるべきではないか。 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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