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2000.3.5
 
 


半導体下請工場の強さ…

 半導体の下請け生産というと、資金を調達し、日本のメーカーから最先端の製造機器を購入し、安価な労賃で製造と思う人がいる。
 アセンブル型機器に見られる「高度電子部品を調達し、安価な労働力で日本に追いつく」図を、プロセス型産業に当てはめるのは危険だ。そのような見方をすると、半導体産業における大きな技術潮流を見失いかねない。

 下請けといえば、技術はすべて後追いというのが、今までの通り相場だ。その限りでは、技術格差はあるから、的確に先を走れば優位は保証される。ところが半導体の場合は、そうはならない可能性がある。というのは、「コンピューテーショナル・プロトタイピング」の動きが加速されているからだ。
 要するに、半導体製造がプログラミングされる動きである。
 この動きは、製造から始まった訳ではなく、設計のCAD化が牽引している動きである。半導体設計のCAD化は古く、どの企業でも極く当たり前のものだ。しかし、その対象は主に回路設計である。これが、デバイス設計にまで拡張されているが、今や、その一歩先の動きが着々と進んでいる。プロセス設計までCAD化されて来た。マスクを何種類、どの順番で使うべきかという、製造プロセスもプログラミング可能になっている訳である。

 システムLSI化がこの動きに拍車をかけている。マスクの数や利用回数をコントロールすることで、製造プロセスの簡略化が可能になるからだ。コストや品質に大きく影響するから、職人芸からコンピュータ設計への動きは確実に進む。言いかえれば、設計業務はほとんどバーチャル化できる段階に来たということだ。

 半導体メーカーとしては、いかに速くバーチャル化できるか、競っているのが現状といえよう。

 さて、こうなると、製造はどうなるか。かつての、見方からいえば、仕様に合わせ、品質管理の完璧化を図るのが工場の使命となる。
 ところが、情報通信技術が発達してきたので、設計部門は図面渡しで終了とはならない。
 すでに、実用化されているのが、工場における生産状況データをリアルタイムで設計部門に報告する仕組みだ。設計とは、製品開発部門であるから製造状況を点検するのは当然のことだ。「下請け企業」は、こうした情報を、インターネットを通じて画面上で提供できる体制を敷いている。逆に、半導体設計部門を持つメーカーの方が、このシステムでは遅れている企業もある。

 しかし、この程度の問題なら大した問題はなかろうと考えると致命傷を負いかねない。重要なことは、設計と製造の間で情報が結合できる環境が整備された点である。

 半導体工場はもともと極めて高度な機器の集合体からなる。従って、製造プロセスのコンピュータ・コントロールを、どの企業も当然のこととして進めている。このノウハウを誇る企業さえある。しかし、製造だけの独立した動きで、高品質を実現するという方策では限界がある。収率も高く、検品し易く、不良対策が楽な、作り易いプロセス設計になっているかが重要だからだ。従って、設計と製造が肩を組むことが重要だと誰もが思う。だからこそ、「下請け」では力を発揮できないと考えがちだ。
 しかし、本当だろうか。現在、「下請け」企業は、製造プロセス管理上、どのようなパラメータを重視すべきかを徹底的に調べている。間違えていけないのは、この動きを、製造単独の品質向上対策と見てしまうことだ。様々なパラメータ・データは、設計へと送られる。このフィードバックで設計業務が高度化できる。コンピュータ上の製造シュミレーションが現実的なものになるからだ。製造プログラミングと設計情報の連結が可能になると、「下請け」型の方が先を走る可能性がでてきたといえよう。

 半導体の設計から製造まで、一環したデジタル・データの流れが確立され、リアルタイムでコントロールできる時代が見えてきた。この流れに乗ろうと挑戦している「下請け」の技術力は無視できない。


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