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2000.5.6
 
 


半導体材料産業における米国企業の挑戦…

 日本企業が、米国企業から市場を奪い取った歴史は、半導体用の材料産業にも当てはまる。日本企業が圧倒的なシェアを誇る分野も多い。「このままいけば、米国の材料メーカーは半導体分野で消滅するのではないか?」という意見が登場した程だ。

 しかし、日本企業の技術は本当に強いのだろうか。
 というのは、材料の基本技術そのもので、米国企業の力量が落ちている証拠がないからだ。にもかかわらず、何故、日本企業は強くなったのか。
 アセンブル商品ではないから、技術の競争で大きく差がつくのは製造プロセス技術か独特の材料提供能力だ。しかし、シリコン単結晶のような分野を除けば、優位な点は見つけ難い。そうなると、小さな差の積み上げか、非技術要因といえそうだ。即ち、以下のどちらかだ。
 ・利益を度外視した安価での販売
  (半導体封止用のノボラック型のエポキシ系樹脂では、赤字事業を強引に進めて寡占化した例が有名)
 ・品質向上と顧客対応の迅速さ
  (日本の大手半導体企業のソース選定理由)
 前者で事業を続けることは困難だから、後者が理由と見てよかろう。

 それでは今後もこの観点で競争力維持は可能だろうか。

 強みが発揮できたのは、優良な顧客が国内に存在したこととはいえまいか。今迄は、国内への技術対応で先を走れたからだ。しかし、90年代後半から、このシナリオは崩れはじめている。米国、欧州、韓国、台湾のいずれにも先端顧客が存在している。これからは、グローバル展開しながら、個別ニーズにも細かな対応をしなければ落ちこぼれかねない。

 米国企業はこういう観点での挑戦を開始している。

 例えば、デュポン。DPI(デュポン・フォトマスク社)はこの分野でのり-ダーとなるべく、新しいコンセプトの事業を進めている。すでに、顧客のオンサイトにデータ・サービスのセンターを設置する仕組みを作り上げた。顧客対応の迅速さなら、明らかに最先頭を走れる。これで勝負がつくなら、競争相手の没落は確実だ。
 しかも、シリコン・ファウンドリーに対してイン・ハウスでデザイン・サービスまで提供できる能力を蓄積している。
  91年には韓国、99年には台湾、さらに上海やシンガポールと、すでに世界の12箇所に拠点がある。AMD、モステック、モトローラとはパートナー関係を結んだ。モトローラ(87年)、パーキン・エルマー(90年)、フィリップス(93年)、ルーセント(95年)、IBM欧州(99年)と、内製向けの製造部門やラボを外部から吸収してきた。
 この規模の優秀な研究者・技術者を揃えた企業に日本企業は対抗できるだろうか。

 もともとデュポンはペリクル(保護用のプラスチック膜)の開発者だった。小さな市場だったが、独占的な地位を占めるから高収ビジネスの筈だ。ところが、日本の化学企業が安価なコピー商品を登場させた。こうした競争を避けるには、フォトマスク製造技術全体をカバーすることで技術のトータルでの革新を図るしかない。すぐに真似ができない、全体のビジネス・コンセプトで勝負する訳だ。フォトマスク作成の総合システムを提供することで、個々の部材開発企業を蹴落とせる体制を着々と整えてきたのである。

 フォトマスク関連材料事業に手を染めている日本企業は数多い。なかには、自社技術力の過信なのか、こうした挑戦を全く気にかけない企業もある。市場全体が急速に伸びているから、好調な事業展開をしているように映るが、実情は衰退の途を歩んでいる可能性も高い。


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