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2000.5.13
 
 


ビデオ機器市場における日本企業の危機(続き2)…

 ハードディスクビデオデッキはAV家電製品だが、パソコンとほとんどかわらない。2000年春の普及型パソコンでは、ハードディスク容量は8ギガだ。これが夏までに10ギガから20ギガに増える。TVチューナーがつけばハードディスクビデオデッキそのものだ。しかも、グラフィック処理のスピードがあがるから、画像データの編集作業も簡単になる。

 もっとも、パソコンでの画像編集は見かけほどは「簡単」ではない。ビデオ編集には、もともと、とてつもない時間と労力を要するからで、ソフトや機械の性能の問題ではない。このように面倒なものは、家電には向かないと言われ続けて来た。パソコンのような汎用型コンセプトも家庭には向かないと見なされてきた。実際、テレビチューナー付きパソコンは古くからあったが、主流にはならなかった。
 だからといって、今後もこのまま推移すると見てよいのだろうか?

 パソコンで注目すべきは「映画の作成」訴求である。今までのビデオから一歩進んだ創造の喜びが提案されている。かつてのホームビデオ編集とは次元が異なる。このような流れがこれからのAVの愉しみ方だとしたら、対応できなければ、没落せざるを得まい。

 ハードディスクビデオ機器への対応を見る限り、AV家電技術者には、このような発想は無い。「今までのビデオテープ資産があるから、ビデオデッキは残る。代替品も商品ラインに加えておく必要がある。」という姿勢に映る。バイオやマッキントッシュの動きを「パソコンでTVも見れる方式の高度化したもの」と見なす態度だ。パソコン産業がAV家電を飲み込もうとしているのにもかかわらず、極めて鈍感といえよう。

 こうした態度が、世界に冠たる技術がありながら、成長が止まった理由ではないだろうか。90年代に入ってから、技術によって、新しい文化を生もうという気概が感じられない。AV産業とは、新しい文化を切り開くものだ。ところが、今や、美しいデザインで高品質な機器を設計することが研究開発となりつつある。からおけレーザーディスクやウオークマン以後はさっぱり新文化の提案が無い。
 歴史の教訓からいえば、こうした産業は衰退する。

 すでに、ゲーム事業との係わり方でその兆候が現れている。
 AV家電産業は、ゲーム産業からの呼びかけに応えて、共同発展シナリオをとることもできた。しかし、興味がなかったのである。そして、大市場を逃がした。
 今度はパソコン側の動きを無視するようだ。
 パソコンやゲーム産業の姿勢は、AV家電とは全く違う。先端ニーズに率先して応えようと貪欲に動く。先端ユーザはこちらに移りつつある。そうなると、ハードディスク録画を活用した新しい楽しみ方が次々と登場することになろう。
 今までなら、ハードディスクビデオデッキをすぐに購入する筈の、AV家電の先端顧客は、いつまでも健在とは限らない。


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