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2000.6.4
 
 


先走るSNP研究…

 ゲノム解明が急速に進む流れに遅れまいと、今迄なかった多額のバイオ技術振興研究開発費が流れ込んでいる。

 日本の研究の焦点はSNP。確かに、ゲノム解析(30億の基礎配列情報の整備)-->遺伝子探索(10万個の機能発揮部分を推定)-->SNP(多様性が生まれる根源の探索)という流れのうち、前半で遅れているから、最終段階に先に力を入れようという考えはわかる。前半で今からキャッチアップしたところで、得られるものは少ないだろうから、合理的な判断に見える。

 しかし、本当にそうなのか?

 前半段階の「遅れ」の原因を考えると、SNPの研究の推進方法によっては、思った程の成果が得られない可能性がある。新たな技術革新を生む技術開発に力をいれるのではなく、開発された手法で役に立ちそうな分野を徹底的に調べるという研究開発につながる危険性があるからだ。
 徹底的に症例を集め、遺伝子の違いを調べるというだけなら、疫学の発想を遺伝子情報応用に持ち込むだけ。本質的には画期的なものではない。日本人独特な部分の情報を知るとか、疾病に係わる部分を知るために、膨大な情報を検討することに意味はあるが、これで技術が急速に進むと確約される訳ではない。

 こうした発言をすると、激しい反撥を呼ぶ。
 「SNPの研究が進むことで疾病の本質がわかる。ここがブレークスルーの端緒だ。どうして一番重要な研究開発活動に水を差すのだ。」と、口角泡をとばす勢いで語る人までいる。

 このような考えが、技術マネジメント力の低下を招いている。SNPの重要性を否定する人はいない。問題は、今ある方法でSNPを徹底的に検討していくのは正しい方向なのか、である。100人で1年かかる仕事が、1人で1日でできるようになる可能性はないのかを問うているのだ。長期計画で多額の金と人を注ぎ込み、先頭を走っていたと思ったら、突然、ほとんどが無駄な労力だったということがあり得るのではないかと危惧しているだけだ。

 ゲノム解析での後進国化の反省が必要だろう。

 もともと、ゲノム・プロジェクトの実質的な出発は90年代初頭。当初から「遅れ」が大きかった訳ではない。95年頃から、突如として、急速に解析が進んだのである。ベンチャーに多額の資金が投下されただけという表面的な見方もあるが、本質は技術の進歩である。しかも、技術で先鞭をつけるだけでも、ビジネスで成功できる仕組みが実現した。情報技術を駆使することで、ベンチャーのCeleraが政治型G5研究より先を走るようになり、加速度的に解明が進んだ。
 この牽引技術のリーダーはコンパックとパーキンエルマーである。前者は、アルファー・プロセッサーで培って来た技術力をベースに、大量データの情報処理技術をこなれたものにした。後者は、もともと半導体製造装置のリーダーだったが、日本企業に攻められ、バイオ分野に大胆な転身を図り、この分野の自動解析装置の第一人者に上り詰めた企業だ。両者の徹底的なサポートがあったから、ここまで解析が進んだ。

 類推すれば、同じ様なことがSNPでも起こりうる。情報技術を活用して、ハイスピード解析を実現することが重要なのだ。単に資源投入増加で、研究開発進捗を早めても、コンピュータの処理能力の向上スピードの方は桁違いに速い。明らかに、この力を利用する方策がポイントだ。現在進められているSNP研究プログラムは、その視点で、最善という保証はない。もし、誤りなら、長期的に誤った戦略をとっていることになる。


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