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2000.7.22
 
 


「BSデジタル体験シアター」…

 2000年7月20日、『インターネット ショー in 秋葉原』と銘打ち、祭日、土曜日、日曜日を含む連続四日間のイベント、AKIBAX2000がオープンした。参加したのは、携帯を中心とする通信キャリア、パソコンと周辺機器メーカー、CPUベンダー(インテルとAMD)と、BSデジタル関連企業、インターネットプロバイダーisao.net、オンライントレード証券5社、等である。
 ゲーマーやハッカー(パソコンオタク)が溢れる秋葉原で、いまさらの感もあるが、会場は人で溢れており電気街の振興策として見れば大成功のようだ。

 このショーで注目されるのは、「BSデジタル体験シアター」展示場(機器メーカー7社の製品展示ブースと、8放送局のTV映像が見られるTVが8台並んでいるだけ)が設営された点である。事実上、一般消費者に対する始めての本格的プロモーションとといってよいだろう。この展示で、各社のお家事情が垣間見られた。

 TV系の展示に必ず登場してきた日立製作所、三菱電機のブースが無い。(日立はイベント自体には参加しているが、他社のようにBSデジタルへの重複展示は避けた。)DVDやAVシアターに注力しているパイオニアの姿も見えない。その一方で、家電品市場でマイナーブランドであるNECがBSデジタル放送受信パソコンを展示した。
 参加者にも微妙な違いがある。東芝、松下電器産業、シャープは、チューナーの高機能性を訴求している。日本ビクターは、チューナーよりはD-VHSビデオにウエイトを置いているし、三洋電機はデジタルホームシアターに熱心だといえる。
 そのなかで、かなり違和感を覚えるのが、ソニーの展示だ。展示品はBSデジタルチューナーではない。TV画面には、BSデジタルとは無関係のプレイステーション2のソフト映像が流されている。BSデジタル放送機器分野では、熾烈な受注競争を行ったことで有名だが、肝心の一般消費者向けの製品は不在である。ソニーは、この分野に注力していないのであろう。

 ハードディスク利用などが登場していないから寂しいが、「家電機器メーカー頑張る」といった印象はある。これと好対照なのが、放送側だ。こちらには、新機軸に賭ける動きは感じられない。秋葉原族に沖縄サミットの映像やDVD並みの映像を見せて、購買意欲が産まれると見ているのであろうか。

 高画質・高品質をウリにしたアナログハイビジョン時代の延長なのである。「スカパー」を超える画期的なサービスが登場するような印象はない。BSデジタル放送の揃い踏みで(NHK、BS日テレ、BS朝日、BS−i、BSジャパン、BSフジ、WOWOW、スター・チャンネル)秋葉原族に訴える絶好の機会だったが、購買意欲喚起効果の程は疑問だ。
 「テレビが変わる。」と主張するが、配布される番組表を見る限り、今までと同じようなTV番組に見える。独自のコンテンツという掛け声は勇ましいが、番組内容は相変わらずドラマ、ドキュメンタリー、ニュースである。
 確かに新しい機能はある。しかし、野球選手のデータを呼び出せるとか、各地の天気予報がわかる程度のサービスと番組ガイドだ。視聴者の琴線に触れるとは、とうてい思えない。
 「暮らしが変わる。」とどうして言えるのか皆目わからない。

 といっても、挑戦を感じさせる放送局もある。こちらには、少なくとも、「暮らしを変える」意気込みはありそうだ。
 もちろん、インターネットとの連動を図る動きを指す。
 パソコンや携帯電話とTV放送が連動することで、始めて魅力的な応用が産まれるという発想なくして、BSデジタルのキーアプリケーションは産まれまい。この分野の技術開発がさっぱり進んでいない。これでは、BSデジタルは宝の持ち腐れではないか。

 (参考) NHKのパンフレットによれば、予定されているデータ放送サービスは、番組ガイド、円株経済情報、福祉サービス、居住地気象予報、いつでもニュース、スポーツ情報、番組みどころ案内、通勤交通情報、おしらせサービス、地震津波情報、番組連動サービスである。


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