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2000.11.5
 
 


ロケットのダウンサイジング…

 ロケットは、基本的には大陸間弾道弾技術の流れを組むものだ。従って、ソ連、米、仏だけでなく、英、印、イスラエル、さらには、北朝鮮、ブラジル、伊といった国々までもが人工衛星打ち上げに力を入れている。国威発揚と、軍事圧力が主目的の産業といえる。(日本だけが例外)従って、事業の目標設定は政治的になされ、経済原則は無視される。

 しかし、冷戦終了後は、自立したビジネスとしての側面が重視され始めた。明確な事業目標が必要になってきた。
 今のところ、軍事を除けば、用途は静止衛星打上と宇宙実験室だ。といっても、後者はビジネスというより、国家的威信と科学技術振興目的だ。そうなれば、ロケット産業としては、衛星打上事業に邁進するのが自然といえよう。

 それでは、衛星打上事業の競争力はなにで決まるのだろうか。
 人工衛星の数からいえば、すでに数千個が打ち上げられただろうが、ビジネス用の静止衛星を打ち上げるには2トンレベルの推力が必要だ。そのため、実用に足るロケットは限られる。しかもコスト比で推力が大きいロケットが優位に立つ。そうなると、99年時点ではアリアンが一番競争力がありそうだ。一方、宇宙王国、米国は弱体である。米国のロケットは古く、性能は劣る。政治力で競争するしかあるまい。

 こうなったのは、米国はシャトル活用の発想を優先したためだ。今のように、年間数件しか打上できないとは、予想だにしなかった。実際、シャトル利用を目論んだ新事業が沢山潰れた。シャトルの開発は81年で、老朽化も進んでいる。しかし、次世代システム開発や画期的水素エンジン開発といった大型予算化は困難だろう。
 そうなると、大型推力水素エンジン搭載ロケットを実現した仏・アリアンの優位が続きそうに見える。

 しかし、時代は変わりつつある。衛星そのものがエレクトロニクスの進歩で小型化し始めた。大型推進ロケットより、ブースター無しの安価なロケットや、回収して再利用できるロケットがコスト優位に立つ。現実には、新しい方向の動きはないようだが、流れは変わるかもしれない。そうなったら、大型水素エンジンは宝の持ち腐れになりかねない。


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