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2002.12.4
 
 


触媒技術リーダーの先進性…

 石油化学はコモディティ産業と呼ばれ、原料と資本があれば、どの国でも参入できるイメージが強い。グローバル競争が激化し大胆が業界再編も進んでいるから、合理化だけが課題の産業と誤解しがちだ。
 この産業は、高度な技術を基盤としており、規模の経済と合理化だけで勝負がつく訳ではない。触媒技術の進歩で、原料ソースを変えたり、収率向上、エネルギーコスト削減が実現できるからだ。
 簡単に参入できるのは、技術導入可能だからである。指示通りの生産設備をつくり、マニュアル通りの条件設定で、ほぼ同じ製品ができる。しかし、このような参入は、単なる製造業者である。安価な製造は可能だから、それなりの収益は稼げるが、それ以上ではない。
 逆に、技術力があれば、世界のリーダーとして活躍できる業界でもある。
 当然ながら、原料や政治・社会構造でハンディキャップを抱える日本企業は、技術で戦うべきといえよう。この路線を忠実に実行しているのが三井化学のポリオレフィン事業だ。

 2002年4月、三井化学は触媒科学研究所を設立した。最先端の触媒開発と応用研究だけでなく、次世代技術としても研究を進めるという。(http://www.mitsui-chem.co.jp/techno/lab08.htm)
 2003年には、「第1回触媒科学国際シンポジウム」を開催する。 (http://www.mitsui-chem.co.jp/mics/01.htm)

 同社は、チーグラー触媒技術を導入して以来、ポリオレフィン用金属錯体触媒開発に注力してきた。この分野では、世界に技術導出しており、「日本の化学産業は弱体」と呼ばれるなか、技術のリーダーとして活躍してきた。

 ところが、90年代後半は、新触媒「メタロセン」によるポリエチレン生産が競争の中心に移ってきた。[研究開発活動注力比では、7〜8割が新触媒、残りが従来品改良と思われる。] (http://www.univation.com/pdfs/metallocene.pdf)
 この分野は、もともと、巨大企業のエクソンモービルケミカル、ダウケミカル/UCCが注力してきた分野だ。(http://www.exxonmobilchemical.com/chemical/licensing/exxpol/index.html)
[ポリエチレン製造技術の背景:旧UCCは気相法の開発者、旧エクソンケミカルはUCC法の生産能力向上技術Super Condensed Mode Technologyの開発者]

 三井化学は、ポリエチレン生産規模からいえば、この2社とは比較にならないほど小さい。にもかかわらず、直鎖状ポリエチレン(L-LDPE)生産では、この2社に伍して、高い技術力を持っていることが見えてきた。

 日本市場では業界再編が進んでいるが、市場では、技術リーダーが競争優位を発揮しつつある。[国内メーカー:三井住友ポリオレフィン(住友化学+三井化学)、日本ポリケム(三菱化学+東燃化学)+日本ポリオレフィン(昭和電工+日本石油化学)、東ソー、旭化成工業、出光石油化学、京葉ポリエチレン(丸善ポリマー+チッソ)、日本ユニカー(東燃化学とダウ・ケミカルの出資企業)、宇部興産]
 ・ L-LDPEでは、メタロセン化で、明らかに住友・三井、ダウ/UCC、日本ポリケム、の3グループがリーダー化している。
 ・ V-LDPEでも、住友・三井と日本ポリケムの競争だ。(日本ポリケムはエクソンのメタロセン触媒)
 ・ LDPEやEVA/コポリマーは、L-LDPE化が始まっているから、遠からず競争地図が変わろう。
 ・ HDPEは、価格競争が厳しいため、メタロセンHDPEの高価格品市場開発が急だ。

 ・・・といった動きが市場分析でわかる。しかし、これは、過去の研究開発活動の反映にすぎない。将来の競争力を保証するものではない。

 というのは、1995年に、「ポストメタロセン」均一系錯体触媒の可能性が報告されたからだ。( http://www.chem.unc.edu/people/faculty/brookhartms/msbcv.pdf)
 メタロセン技術競争が熾烈化しているのに、もう次世代が動いているのである。
 三井化学は、早くも2001年に、次世代重合触媒として新規フェノキシイミン触媒を開発した。メタロセンの300倍の活性を持つという。高温環境で高速にリビング重合ができる。これで、巨大分子量のポリエチレンが登場する可能性が高い。ダウと提携先して開発を進めるという。 (http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200104/17/01101_0000.html)

 技術の勝ち組みはさらに先に進む。


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