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2002.12.5
 
 


大型カラーフィルタ業界寡占化の流れ…

 大型液晶ディスプレイ用カラーフィルタ業界の寡占化がますますはっきりした。
 2002年10月、大日本印刷が業界3位のアドバンスト・カラーテック(三菱化学と旭硝子のJV)の株式の80%を取得すると発表した。(http://www.agc.co.jp/corporate/news/2002/1031.html)

 記事によれば、この動きで大日本印刷のシェアは31.9%になり、トップの凸版印刷の45.6%と合わせると、2社合計で8割近くになるとのことだ。(2002年8月1日 日本経済新聞)
 このシェア数字は、対象市場の定義がはっきりしないが、大型カラーフィルタ外販市場では2強体制が確立したことは間違いないと思われる。[そもそも、カウント単位が不明瞭の上、小型のみを生産する企業、台湾企業分、内製の扱い方等でシェアの数字は変わる。]

 アドバンスト・カラーテックは、2001年に、産業活力再生特別措置法を活用して、カラーフィルタの大型化に動いた。新たな技術で、大幅なコストダウンを狙い、かつ大型化に向けた設備投資を図るというものである。しかし、その程度では、この業界で生き抜くのが難しいのだ。(http://www.meti.go.jp/policy/business_infra/downloadfiles/5621.pdf)

 アドバンスト・カラーテックと同様にマイナーシェアの企業がもう1社ある。東レである。  同社は2002年に、単独事業部門化を行った。状況からみて、採算状況が厳しくなったための対応と思われる。 (http://www.toray.co.jp/release/news/liquidcrystal/nr020131.html)

 マイナープレーヤーが苦しくなるのは、実は、大きさが3.5世代に達した時点で予想されていた。
 ひとつは、大型化に伴い、次々世代用の設備投資額は200億円規模になり、リスクが高くなる点だ。撤退も選択肢に入ってくると予想されていた。
 もうひとつは、画面の大型化に伴なう全体の技術構造変化である。個別要素技術の競争だけでは勝てなくなる。

 特に重要なのが、後者である。2つの視点から、技術戦略を抜本的に組みかえる必要がでてくる。

 1点目は、技術間の干渉解決方法である。
 大型化すれば、顔料・レジスト・露光の3条件の設定調整はますます厳しくなる。従って、フィルタメーカーにとって、顔料メーカー、レジストメーカーとのより強い絆が不可欠となる。当然、3者全員がトップになれるようチームワークの絆は強まる。強力な材料供給メーカーが、マイナーなメーカーとの開発に注力する可能性は薄い。マイナーメーカーはマイナーメーカーだけの開発チームになりかねない。従って、マイナー企業は、例えば、リーダーメーカーの戦略に従いながら、高収益を上げるための技術開発に注力するように変身する必要がある。

 2点目は、大型化による液晶パネル製造のコスト構造が変わる可能性である。
 遠隔地の工場で製造された大型フィルタを、液晶パネル工場に納品する仕組みを機能させるためには、相当のコストと運搬技術が必要となる。そうなると、インライン型の新製造システムの登場がありえる。パネル工場とフィルタ工場を結合し、フィルタ装着装置を開発すれば、大幅なコスト削減と品質向上が図れる可能性がある。このような取り組みは、パネルメーカーのリーダーとフィルタメーカーのリーダーの組み合わせでしかありえまい。従って、インライン化が始まると、マイナーメーカーは急速に力を失う。マイナーメーカーが、これを避けるには、優れたインライン化技術を先行開発するしかない。

 要するに、液晶パネルメーカーのフィルタ内製、フィルタメーカーのパネル工場でのインライン生産、フィルタメーカーの従来通りの生産、という3つの道に分かれることを意味する。
 韓国パネルメーカーのように、果敢な設備投資を行う企業は、内製化は捨てないだろう。
 台湾のフィルタメーカーは、もともとが台湾内垂直統合路線にのっとた動きをするから、ライセンス下でインラインに走る可能性もある。
 一方、現在トップシェアのフィルタメーカーは、インライン化では大型工場での規模の経済性が発揮できなくなるから、従来型に固執するに違いない。

 大型化の競争とは、インライン対従来型の戦いの開始であり、個別要素技術ではない。


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