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2003.1.19
 
 


HDD技術競争の現実…

 2003年1月、日立がIBMのハードデイスクドライブ(HDD)事業部門買収を完了し、両者を統合した日立グローバルストレージテクノロジーズが動き始めた。(http://www.hgst.com/japanese/news/Maui.html)
 一見、時代の変化を象徴する妥当な動きに見えるが、理解しがたい点もある。

 HDDはコンピュータの基本デバイスであり、もともとIBMが生み出したものである。コンピュータの発展と共に、記憶容量需要は急伸し続け、これに応えるべく、凄まじいスピードでHDDの容量が増大してきた。ほんの少し前のパソコンのHDDはM単位だったが、いまや100Gも驚きではない。文字通り、桁違いの進歩である。
 ところが、顧客側の購入価格圧縮圧力は極めて強く、製品単価の上昇が難しい。その結果、記憶容量当りの単価は急激に下落している。

 この状態では、年率2桁%で記憶密度向上が実現できない企業は没落しかねない。しかも、ユニット当りの記憶容量が増大しても、台数需要増につながらないから、徹底したコスト削減が必要となる。削減を怠り、生産性が向上しなければ、利益がなくなりかねない。
 実際、磁気ヘッドメーカーの収益圧迫が顕著だ。コスト削減のため、使用ヘッド数が減ってきたからだ。1台5個搭載が3個に減るのだから、価格上昇は個数減で相殺される。最先端のハイテクな高性能部品を開発しても、市場は広がるどころか縮小しかねないのが現実だ。
 下手をすると、ハイテク貧乏路線に陥る。

 HDD特許出願動向調査を見れば、技術競争の凄まじさは一目瞭然である。しかし、企業間に格段の技術格差があるとはいいかねる。このような業界で、多数企業が乱立して技術競争を続けるのは経済原則からいって無理がある。(2002年調査 http://www.jpo.go.jp/techno/pdf/hdd.pdf)

 こうした競争環境では、寡占化が進み易い。実際、スリムで強靭なコスト競争力を持つ専業メーカーの方は統合が進んだ。(Seagate/旧Conner、Quantum/Maxtor、Western Digital)こうなると、高コスト体質のIBM、日立、富士通といったコンピュータメーカーの競争力低下は歴然となる。特に、比較的シェアが高かったIBMは競争激化の影響が一番深刻だったと思われる。

 それでも、コンピュータメーカーがHDD事業に固執してきた理由は、ハイエンドのサーバ/ストレージシステム製品事業と関係するからだろう。[コンピュータメーカーでも、HP/コンパック、サン、EMCは、OEMで対応しているが、十分な競争力を発揮している。]
 確かに、足がかりのないソニーや松下も、HDD技術に係わっている。[但し、松下寿は専業メーカー向けの自動生産工場を持つ。]将来の家電製品でHDD技術がキー部品と見ているからだろう。

 この発想は90年代初頭の、キー部品の技術領域をコアとして、部品商売の一方で、技術を使い回し最終製品でも収益をあげる路線である。
 これからも技術進歩は速く、生産量のアップダウンも激しい。そのなかで、垂直統合のシナジーが発揮できるだろうか。しかも、マイナーな地位で競争力向上を目指すのである。


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