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2003.4.30
 
 


無線ネットワーク分野の難しさ…

 2003年2月に開催された「Intel Developer Forum Spring 2003」で「Mesh Network」が発表された。
 Intelが無線LANキャンペーンに熱心であり、「無線LANが“バケツリレー”でつながっていく」とニュースで紹介されたため、この技術に注目しているエンジニアが多いようだ。(http://www.zdnet.co.jp/news/0302/20/nj00_meshnet.html)
 無線LANが急速に普及する雰囲気が高まっているため、これが将来像ではないかと考える人もいるようだ。

 「Mesh Network」は、無線端末が近隣にある無線端末に直接送信できる仕組みである。数多くの端末を次々と渡り歩くパケット通信で、目的の相手に接続することになる。最適な通信経路は機器側が自動的に選択するので、利用者の面倒な設定は不要だという。(http://www.intel.com/labs/features/cn02032.htm)
 アクセスポイントに対して直接送信する仕組みでは、遠く離れても通信できるためには高出力無線デバイスが必要となる。一方、近隣の無線端末に通信できれば繋がるなら、微弱な出力でよい。この点だけでも、極めて便利である。一端ネットワークができれば、様々な利用法が考えられる。
 魅力的なコンセプトといえよう。

 しかし、無線ネットワーク分野の新技術普及は、有線技術とは違い、簡単にはいかない。いくら支持が集まっても、コスト、品質、セキュリティのバリアに遭遇して解決できなければ、頓挫を余儀なくされる。困難度が高い分野なのである。
 といっても、無線ネットワークがユビキタス時代では重要なのは明らかだから、研究開発は盛んである。
 この状態で、Intelが無線に注力したので注目を浴びたのである。成熟したパソコンに、通信(無線ネットワーク)技術を取り込み、技術の若返りを図っているから特に目立つが、Intelがこの分野の先発企業である訳ではない。

 無線ネットワーク分野での先進企業は、明らかにRadiant Networksである。
 2003年3月のニュースリリースによれば、米国Salemで25Mbpsのネットワークを構築したという。(http://www.radiantnetworks.com/press/News_17032003.htm)
 ファイバーで構築すれば、ネットワークの完成に9ヶ月を要する所、メッシュ型無線ネットワークにしたため、僅か7日で完成できた、と誇っている。工事費用の観点で見れば、低コストになる、との主張である。
 これを読むと、市場がすぐに開けるようなイメージを持ってしまうが、市がスポンサーのプロジェクトのようだから、広く一般に適用できる例ではなさそうだ。

 英国内でも試行が行われた。通信サービスでは圧倒的なシエアのBTが、2002年に、Radiant Networksの「MESHWORKS」サービスをSouth Walesで試みたのである。(http://www.btplc.com/Mediacentre/Archivenewsreleases/2002/nr0230.htm)
 世界初の試みということで、無線の将来に関心を持つエンジニアの注目を浴びたプロジェクトである。ところが、上手く行かなかったようだ。2003年に入り、この試験サービスは年末を持って終了、とのニュースが流れたのである。(http://www.vnunet.com/News/1137946)
 BTによれば、ブロードバンドのニーズに合わなかったという。再開の予定も無いとのことだ。

 英国の例を見てもわかるように、コンテンツが揃っていないのだから、一般消費者が無線ブロードバンドのビデオ放送に飛びつく可能性は低い。
 しかし、企業は、無線で広域をカバーする仕組みには関心が高い。条件さえ合えば一気に浸透してもおかしくない。潜在ニーズはある筈だ。問題は、ネットワーク構築コストだろう。
 無線アクセスポイントでブロードバンド化した方が安価なら、高額なネットワークに移行することは無いと思われる。コストのバリアは極めて高いと考えざるを得まい。

 しかし、このことは、デバイスを大量生産し、コスト大幅削減でができれば、事態が一変する可能性があるとも言える。もちろん、極めてハイリスクな挑戦だ。

 この状況だと、日本企業は極めて不利である。
 ハイリスクな挑戦は、現状の体力では無理である。
 といって、革新技術で小規模適用から入ろうと考えても、国内には、パートナーがいない。通信サービス側は、第3世代ケータイへの注力で、無線ネットワークどころではない。企業ユーザーは新技術の率先利用には躊躇している。

 日本企業は、この分野の研究開発を諦めざるを得ない状況に追い込まれ始めている。


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