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2003.5.16 |
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自己修復型コンピューティングの技術体系…Scientific American誌2003年6月号に「Self-Repairing Computers」と題された論文が掲載された。2002年5月の「Autonomic Computing」に引き続く内容であり、読むのに極めて時間がかかる大部の技術レビューである。筆者は、気鋭のStanford大助教授と、コンピュータ・アーキテクチャー分野で著名な、カ大Berkeley校教授だ。(http://www.sciam.com/article.cfm?chanID=sa006&articleID=000DAA41-3B4E-1EB7-BDC0809EC588EEDF)この論文は、Recovery-Oriented Computing(ROC)プロジェクトの成果をベースにしている。(http://roc.cs.berkeley.edu/roc_overview.html) このプロジェクトはNSFやNASAだけでなく、Allocity、Hewlett Packard、IBM、Microsoft、NEC、Sun Microsystemsから資金支援を受けている。Mills Collegeや日立の研究者もVisitorとしてチームに参加している。コンピュータ業界のリーダーばかりだが、相当先に照準を合わせた研究が中心である。 このようなプロジェクトを眺めていると、具体的な成果はずっと先と考えがちだが、同じような目的の産業技術は、すでに実用化が始まっている。 2002年に、IBMはオートノミック・コンピューティングにむけ動く、と宣言している。自己構成、自己修復、自己最適化、自己防御の4つを、ユーザーに複雑性を感じさせないで実現するというビジョンだ。(http://www-6.ibm.com/jp/e-business/AutonomicComputing/whitepaper_e.pdf) そして、2003年4月には、複雑なIT環境を管理するための"Blueprint"を発表した。ロイヤリティー不要にしてオープン・スタンダードで進めるとのことだ。(http://www-916.ibm.com/press/prnews.nsf/jan/275904BB44C8FBE585256CFE004D5D8C) この動きにより、まずは、多様なサプライヤーの技術を組み合わせる方法が規格化されることになろう。 実際には、ログ/トレース、学習/推論可能な分析、環視エンジン、ワークロード・マネージメントという4つのツールを用いた、システム制御の仕組みを構築することになる。ただでさえ複雑な情報システムの管理を合理化する動きといえる。 IBMは、メインフレーム開発を通してワークロード・マネージメント技術を磨き抜いており、環視エンジン技術もTivoliの技術がある。従って、残りのツールを揃えればすぐにビジネスになる。 様々なシステム・コンポーネントのログ・データを共通フォーマットに変換してデータを利用するようにして、人工知能型の分析プログラムを加えればよいのだ。従って、IBMにとって、オートノミック・コンピューティングの第一歩は、それほど難しくない。 この動きが上手くいけば、情報システム部門の大幅削減が可能になり、実質的なコンピューティングコストは急低下することになる。 と言うと聞こえはよいが、トラブル多発を前にして、対応を余儀なくされた、と言った方が正直だろう。 最近のデータベースサーバやウェブサーバは、データ量が増え続けている上、集中アクセスにも対応する必要があるため、巨大かつ複雑になり過ぎている。ベンダーが出荷時調整を済ませれば、後はOKとはいかなくなったのである。サーバを最適運営するための条件設定は極めて難しくなっており、対応できるエンジニア不足が深刻化しているのだ。 早い話しが、データベース管理業務の効率化が要求されていると言える。ということは、メモリー消費状況を見て、異常発生警報を発する仕組み作りが出発点となろう。 そして、応答が遅すぎるとの診断がでれば、高速化できるように、コンフィギュレーション再設定や、再起動を、自動的に開始する機能が加わる。 要するに、プロセッサ同士が監視し合い、トラブル発見と同時に、代替プロセッサに負荷が移転するような仕組みを作ることになる。 こうした動きは、Recovery-Oriented Computingのような最新技術をとり入れているように見えるが、よく見ると、既存技術を上手く使うだけかもしれない。例えば、エンジニアがコンフィグレーションの設定をする作業の手助けするソフトを自己修復技術と呼べば新しく聞こえるからだ。 しかし、それでも、新しい技術体系が作られているのは間違いない。現実に使われている技術は従来からのものと大きく変わっていないのだが、新しいコンセプトなのだ。 これこそ、21世紀型技術展開といえよう。 これを「宣伝が巧み」と見るのは間違いである。「卓越した構想力」で新技術体系を作りだした、と見るべきなのだ。 日本のエンジニア/研究者に欠けているのが、こうした構想力である。 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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