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2003.6.24
 
 


Intelの挑戦…

 2003年6月13日、京都で開催された「2003 Symposia of VLSI Technology and Circuits」で、Intelの研究者が、無線通信の心臓部であるシンセサイザーをCMOSで作ることに成功したと発表した。
(http://www.vlsisymposium.org/circuits/cir_pdf/C11p2.pdf)
 5GHzであるから、802.11a用だが、もちろん2.4GHz802.11b/g用にも使える。これらが、CMOSプロセスで製造できれば、低コストで量産化できる。そして、将来的には、Intelのチップに統合され、無線通信が極く当たり前のものになるという。(http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/20030612tech.htm)

 確かに、無線デバイスのCMOS化の流れは始まっている。Bluetooth用の1チップCMOSは実用化されており、どこまで価格が下げられるかの戦いが進んでいる。もともと、百万個単位での生産可能だからこそ、Bluetoothなら千円のデバイスを作れ、身の回りの機器すべてが無線で繋がるというビジョンが受け入れられた。そして、着実に進展しているのだが、スピードは速いとはいえない。思った以上に難しいのである。

 従って、この先の読みが難しい。Bluetoothのような微弱電波タイプなら、時間があれば間違いなく低コスト化できる。しかし、これより高度なデバイスでは、バリアはかなり高い。5GHzクラスになると、微細化の観点でも限界に近い。

 もともと、無線デバイスは、基本的にはアナログ技術がベースであり、周波数が高いものは、普通はガリウム砒素を使う。しかも、微調整には十分な労力をかける必要がでてくる。基本的に、CMOSのような超大量の量産には向かないデバイスなのである。
 一方、CMOSプロセスで製造されるデバイスはデジタル技術ベースだ。作動電圧も低いから、発振能力向上は難しい。
 極く普通に考えれば、5GHzクラスから上の無線デバイスがすぐにCMOS化できるとは思えないのである。
 Intelはこの常識に挑戦するのだ。

 しかも、プロセッサと統合するという。プロセッサにはクロックが同居するから、周波数ノイズは避けがたい。統合の道は茨だらけといえる。まさに、果敢な取り組みだ。

 このタイプの挑戦は、この技術に可能性がありそうだから試してみる、という類の研究テーマとは違う。理屈からいえば、可能なのだから、実験的なものなら間違いなく良い結果は出せる。しかし、商用化には多大な困難が予想される。当然ながら、膨大な開発費投入が必要になる。と言って、多額の開発費を投入しても、成功は約束されない。製造技術力の自信と、財務的な余裕がなければ、とても挑戦する気になれないテーマといえよう。

 日本企業には、とても、このような挑戦はできない。


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